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着物のこと

着物を着せる仕事を初めて23年になる。

いつの間にか、そんな年月が経った。私は当初から自分が着ることをしようと思っていた。着てみないとわからないこともある。

お茶や踊りの先生方がきれいに着こなしているのは、やはり着ているからだし、着て動くことが念頭にあるので着崩れがどのように起こるかもよくわかっている。実は着物は仕草が肝だと知った。

ありがたいことに私の周りにはお客様の中に和事に長けた方がたくさんいらして、可愛がっていただいたおかげで、あっという間の23年を貴重なお話を聞かせていただいた。

小唄のお師匠様をしていた方(故人)も、その一人だ。

昭和3年生まれの彼女は、戦前戦後の着物文化について教えてくださった。当然ながら、知らないことがたくさんあった。単衣の素合わせという着方を教わったのも彼女だ。娘時代はそうやって浴衣の代わりに単を着たものよ、と。

着物を着るにあたってのメンテナンス担当のお客様も、素敵な方だ。今年で88歳になる。まだ針を持っていらっしゃっるがすっかり背中が丸くなった。20年という歳月を感じてしまう。着物はこんなに自由だと教えてくださった。

着物は子供の頃からほんのりと憧れていたが、こんなふうに関わって仕事にするとは思わなかった。私の着付けはどうやらショーとかには向かないらしいが、結婚式に列席した方から、「隣の人はご飯、食べられなかったけど、私はたくさん食べてきたわ」と。それだけで嬉しくなるのである。

これからも多分この仕事はやめない。コロナが収まって、人が集まれるようになっったら、成人式も結婚式も、七五三も、またやれたらいいなあ。

なんて思っているのだ。

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