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BREWBOOKSの文芸棚(国内)を考える会 2020.3.12_レポート

BREWBOOKS(@_brewbooks)さんでの「BREWBOOKSの文芸棚(国内)を考える会」に参加させていただいた。

実際の動きとして、2月から動き出しているストーリーの続きを記録する。

引き続き、国内文芸棚のラインナップについて検討している。大きなテーマとしては、本と本との関連性、ストーリー性の重視。しかし、そのストーリーを描くための材料がまだ足りてないように思えた。そこで今回はイベントを設定し、様々な視点より意見をいただきながら共に考えていきたい、という目的で場を設けた。

当日を振り返ると、その場で出た著者名や著作はもちろんのこと、テーマや今後の課題に成り得る会話が端々に上がっていた。断片的ではあるが、重要な箇所を取り出し下記に記載した。
現在、BREWBOOKSでどんなことが起こっているかをお伝えしたい。

※下記に記載する著者は全て敬称略とさせていただきます。

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【冊数(想定)】

・日本文学:200
・日本文化:50
・暮らし:50
・俳句・詩歌:100
・海外文学(アメリカ、ラテンアメリカ、韓国、その他):400
見た目の印象としては海外文学が多め、しかしジャンルの区別なく自然なグラデーションを目的とする。

【目標】

棚に文脈を設けたい。店側が説明するのではなく、読者に読み取ってもらえるような文脈が良い。
・お客さんが棚を見た時に、流れていくように見ることができる棚にしたい。さらに読書のきっかけとなったり、読書の幅が広がることを期待する。
BREWBOOKSらしさは出したいが、主観を強くするのではなく中立な棚にしたい。

【議論】

・主観に頼りすぎない選定が必要ではないか?
 そもそも主観と中立を両立させるのは難しいのではないか。
 BREWBOOKSほどの規模であると、主観と中立を両立させるのは難しい。
 ただの本屋の縮小版になりかねない。
 では、主観に頼りすぎない選び方をするのはどうか。
 良いと思った本も、そうでない本も入れる。
 このような本がいい!と主観を強く打ち出すのではなく、この規模の
 小ささでの中立を目指す。
・ジャンルを絞って選書するのか、入れたい本を上げてから選書するのか?
 非常に難しいが切り口としては下記がある。
 1.文学賞を獲った作品をきっかけとする。芥川賞が合うのではないか。
  候補作も入れると裾野が広がる。文芸誌も活用する。
 2.誰もが知っている作家をきっかけとする。
  夏目漱石、太宰治、谷崎潤一郎など
  BREWBOOKSにあまり合わず、棚として面白くないのではないか。
 どちらかというと、1の選び方をしたい。
・テーマを大きく括っているが、細分化した方が良いのではないか?
 例えば、「暮らし」でもいい暮らしとそうでない暮らしなど

どのような切り口で選書したら良いかが議論となった。
主観で選書しBREWBOOKSらしさを出すことと、より中立な立場、つまりどのジャンルもまんべんなく置いてあり、お客さんに色付けを委ねる本屋としての姿勢の両方が存在しているように思えた。
今後は本屋としての姿勢の明瞭化が鍵となってくると思う。

【比較的すぐに取り掛かることができそうなアイデア】

・BREWBOOKS文学賞を創設する。
 文芸誌を読み合って、票が集まった作品を賞とする。単行本や文庫文を
 仕入れて全面的に押し出す。

【断片的なアイデア】

・2010年代の比較的新しい作家、作品を入れたい。
・実際の作家の交友関係が棚に表れていても面白い。
 例:大前粟生と藤野可織など
・日記作品を推していきたい。
 例:
 やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)/滝口悠生
 公園へ行かないか? 火曜日に/柴崎友香
 富士日記/武田百合子
 読書の日記/阿久津隆
 狂人日記/色川武大 など

【話題に上がった本】

ここでは当日、話題に上がった本を羅列してみる。著者名の後ろの括弧はキーワード、あるいは関連性を表している。文脈に乗せることやジャンルの垣根を超えること。実際の選書の際に意識したい指針となる。

・地球にちりばめられて/多和田葉子(移民文学)
・本物の読書家/乗代雄介(昔の作品の引用、書き写し、アメリカ文学)
・回転草/大前粟生(マジックリアリズム)
・私と鰐と妹の部屋/大前粟生
・ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい/大前粟生
・グローバライズ: GLOBARISE/木下古栗(大前粟生)
・知的生き方教室/中原昌也(ビート、バロウズ、ブコウスキー、中島らも)
・未明の闘争/保坂和志(複数冊OK)
・いつか王子駅で/堀江敏幸(複数冊OK)
・問いのない答え/長嶋有(言葉遊び、俳句・短歌関連も)
・ねたあとに/長嶋有
・ビニール傘/岸政彦(庶民の生活、小説と暮らしの間)
・双子は驢馬に跨がって/金子薫(架空の物語、野間文芸新人賞)
・あひる/今村夏子(文庫本)
・むらさきのスカートの女/今村夏子
・夏物語/川上未映子(本屋大賞ノミネート)
・ウィステリアと三人の女たち /川上未映子
・あとは切手を、一枚貼るだけ/小川洋子,堀江敏幸(書簡、日記)
・やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)/滝口悠生
・公園へ行かないか? 火曜日に/柴崎友香(滝口悠生と同じIWP)
・富士日記/武田百合子(食)
・読書の日記/阿久津隆(著者が武田百合子を読んでいる)
・狂人日記/色川武大(吉行淳之介との交友関係、エッセイは暮らしに関連)
・穴/小山田浩子(暮らし、暮らしに変な要素が入り込む、藤野可織に近い、マジックリアリズム)
・しんせかい/山下澄人(私小説、暮らし、本谷有希子関連、演劇、演劇はアメリカ文学との関連)
・わたしたちに許された特別な時間の終わり/岡田利規(劇、大江健三郎賞)
・夕子ちゃんの近道/長嶋有(大江健三郎賞、西荻窪の西友)
・愛が嫌い/町屋良平(暮らし、団地の生活、棚のラインナップが決まってから入れても良い作家)
・青が破れる/町屋良平(一箇所ではなく散らして置きたい)
・1R1分34秒/町屋良平
・コンビニ人間/村田沙耶香(暮らし)
・消滅世界/村田沙耶香
・ひとさらい/笹井宏之
・てんとろり/笹井宏之
・光と私語/𠮷田恭大(いぬのせなか座)
・母の愛、僕のラブ/柴田葵
・Confusion/加藤治郎
・やがて秋茄子へと到る/堂園昌彦(コアな層には刺さる、装丁がBREWBOOKSの雰囲気に合っている)
・風にあたる/山階基(判型が変わっていると手に取りたくなる)
・水界園丁/生駒大祐(判型が変わっていると手に取りたくなる、大きいが大きさと内容の重厚さが合っている)
・花は泡、そこにいたって会いたいよ/初谷むい(現代的な言葉遣い)
・日本の中で楽しく暮らす/永井祐
・日の移ろい/島尾敏雄(日記、古本で入手可?)
・さようなら、ギャングたち/高橋源一郎(言葉、多和田葉子と同一のカテゴリ、Bunkamuraドゥマゴ文学賞を中原昌也にあげている)
・神様の住所/九螺ささら(Bunkamuraドゥマゴ文学賞、短歌と散文)
・野蛮なアリスさん/ファン・ジョンウン(韓国の貧困層を描く)
・こびとが打ち上げた小さなボール/チョ・セヒ(韓国の貧困層を描く)
・すべての、白いものたちの/ハン・ガン(装丁、本文の白)
・て、わたし 7号(フラニー・チョイ、移民文学、アメリカと韓国の関連)
・五つ数えれば三日月が/李琴峰(芥川賞候補作、移民文学)
・ポラリスが降り注ぐ夜/李琴峰(移民文学、アイデンティティ)

【喫緊の課題】

・リストの精査
 今回の企画を受けて、どの本を置くか、現在の棚や在庫の関連性や具体的な売上を鑑み精査する必要がある。
・具体的に文芸棚のどの部分を動かしたいか、どの本を残すのか。
 今後は実際の棚とのイメージをすり合わせながら検討する。

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以上のように、当日は数多くの著作を上げながら進めた。
記録なので堅苦しいように写るが、そんなことはまったくなく、みながみなBREWBOOKSに合う本、置いたらいい本を楽しみながら紹介し合った。
それぞれの“本愛”に溢れた企画であった。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

今回の企画を実施し見えた課題があるので、次月以降も継続します。
その都度皆さんからのご意見をお聞きして、アイデアとして構想を練っていきたいと考えています。
次回の予定はBREWBOOKSのHPのイベントページにて、決まり次第お知らせします。よろしくお願いします。

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