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第5回ニシオギ俳句部 2020.3.21_レポート

BREWBOOKS(@_brewbooks)さんでのイベント、第5回ニシオギ俳句部2020.03.21に参加した。

今回は、暖かくなって来た!冬ももう終わりだ!春到来だ!ということで、吟行をすることに。

ちなみに吟行とは…
①詩歌を吟じながら歩くこと。
②和歌・俳句などを作るために、景色のよい所や名所・旧跡に出かけて行くこと。(大辞林 第三版より)

本日は②。
一度、BREWBOOKSに集合後、西荻窪周辺をウロウロ。
ウロウロしながら俳句の題材を見つけ、BREWBOOKSに戻って俳句を詠もう!というワクワクする企画だ。

当日14時。7名がBREWBOOKSに集合した。
西荻窪は快晴。歩くと汗ばむほどの気候だ。これは吟行日和!
さてさて、快晴の西荻窪にてどんな題材を見つけることができるのか?とても楽しみ。早速、出発!

最初に皆が足を止めたのはお店の隣の西荻南児童公園
もう桜が綺麗に咲いていて、老若男女ともに賑わう昼下がり。

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青空に桜のピンク色が映える。皆見上げて見惚れる。

そして、周りの草木を見ながら、これはカエデ?などの会話が。

吟行は普段の散歩とは違い、目に映るものをよりじっと見たくなる。
普段は目に入らないような花や草木、ポスターや標識、さらには光の反射に至るまでのあらゆるものを意識してしまう。
この観察がなかなか面白く、吟行の醍醐味のひとつと言えるだろう。

一行は公園を後にし、さらに住宅地を南へ進む。

住宅地の中も注意深く観察してみるとおもしろい風景がたくさんある。

例えば、アパートの目隠し用に設置されたアクリル板に反射する光。

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まるで背骨のように路上に写っていた。

両端に立てばテレパシーを送り合うこともできる。

重なった影の彩りが美しい。

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理髪店の2階ではためくタオル。

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規則的に並べられた色とりどりのタオルがはためいている様に思わずシャッターを切ってしまった。

さらに進み、突然現れた山蔦医院の看板。

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正方形に収まるように整えられたフォント、修正されたであろう跡が見える電話番号。こんな「3」はなかなか見たことがない。

電飾で華やかに彩られた乾燥機のあるコインランドリー。
足を止めてなぜ電飾されているのかを考えてみたり。

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やたら派手だ...目的は分からず。ちなみにすべての洗濯機、乾燥機に電飾がついていた。

アパートの壁のツタ。
ツタの葉の部分だろうか。その部分だけが壁にくっついたままだ。

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ふと上を見上げれば、窓に透けるトルソーを発見。
何を目的として入手したのだろうか。そして、何故窓辺に無造作に置かれているのか...。物語が始まりそうな予感がする。

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このご時世、マスクも干して使うだろうな…。

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そして印象的だった夏蜜柑の木。緑とオレンジ色のコントラストが眩しい。

軒先に堂々と一本のみが植えられていて、その存在感に圧倒された。皆も立ち止まって写真を撮っていた。

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それぞれが面白いと思う風景を写真に撮りながら、浮かんだ言葉をメモに書き留めながら、吟行を楽しむ。

帰路、一直線に伸びる坂でも俳句の題材になってしまう可能性を感じる。

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吟行に出ると、ふと自分の言葉の領域にはなかった風景に出会う。
そしてこの風景を俳句ではどう表現しようか、今見ているものをどのような単語を当てはめるかを非常に迷うのだ。しかし、その迷いすら楽しい!これが吟行の醍醐味か…!

でもひとつ悔しいことがある。植物の名前に無知な自分と出会ってしまった。せっかく印象的な草木に出会ったが、俳句に詠み込めないもどかしさ。次の春までには植物に詳しくなりたい。要勉強だ。

そのようなことを思いつつ吟行を楽しんだあとは、BREWBOOKSに戻る。

まずは、吟行で乾いた喉をビールやソフトドリンクで潤す。
その後は、携帯に打ったメモや撮った写真を見返しながら、30分じっくりかけて俳句を詠む。
窓も開け放して気持ちが良い空気が流れる2階で、メモや写真を見返してみるとすぐに吟行の情景が思い出される。

そのような情景をどう伝えようか、どのような言葉で切り取ったら良いだろうかと、歳時記をめくりながら考えていると、あっという間に30分が経過してしまった。

ちなみに今回は吟行で見つけた風景だけではなく、「桜」の文字を入れた句を必ずひとつ作るお題が出される。まずい…桜は最初の公園でしか眺めていないぞ…。

句を完成させたら、出来上がった句を清記し参加者全員で回していく。
良いと感じた句には印をつけていく。

今回の吟行の面白さは、皆が同じ風景を見ているようでも、感じ方はまったく異なること。俳句に詠まれた風景から、この題材はこの風景から切り取ったなと想像ができても、作者がどう感じたかというニュアンスの違いが大きい。もちろん、風景を端的に切り取っているだけのように見える句もあるが、その切り取り方も千差万別。作者がどのような思いで詠んだかを想像することがとても楽しい。

清記した紙が回り切ったら披講。
印がついた句を作者が読み上げて感想を聞く。
上がった感想も、「情景が伝わってくる」や、中には「この言葉を言いたいがために作った!」という大胆な句も笑。

ちなみに私が作り、印を付けていただいた句がこちら。

青空につつじがひとつあるばかり

青空とつつじの赤色の対比が良いという感想もあれば、文語調にすればもう少しリズム感が良くなるのではという意見も。ふむふむ。

ランドリー色とりどりで待つ春雷

電飾で華やかに彩られた乾燥機を詠んでみた。

春昼の窓にトルソー透けている

すんなり入ってきて良いという感想をいただいた。

凧あげる軒で寄り添うマスクかな

マスクを擬人化する発想がなかったので面白いという感想を。
このマスクに老夫婦感があったという感想もあった。確かに老夫婦が軒先で日向ぼっこをしているイメージがあったので、しっくりくる感想だった。

桜東風アパートの窓の猫に落つ

お題の「桜」を入れた句。私は桜の花びらが猫に落ちている情景を詠みたかったが、「桜東風」に花びらが落ちる要素が含まれていないことに途中で気付く笑。やってしまった。
一方で、桜の雰囲気をまとった風が猫に吹いているという感想をいただき、その風景描写をいただくことに笑。

上記のように様々な感想をいただいた。
私が思い浮かべた情景と同じ情景でも、やはり捉え方の違いが句の詠みぶりに如実に表れていると感じた。それぞれの個性がストレートに表現されることが俳句の醍醐味であると思った。

また、他の方が作った句を読んでいると、私の句が説明的であることが見えてきた。

「春昼の窓にトルソー透けている」のように、情景をそのまま表現できれば素直な句になる。素直な句になれば、より様々な解釈が生まれ、読者それぞれの物語がその句に投影できると感じた。

様々な感想をいただくと勉強になる。もっと精進せねばと思いつつ終了。

最後に時間に余裕があったので、ワークショップを少し。
今回は「病」が詠まれている、あるいは解釈によっては詠まれていると言える句を選定したレジュメが配られた。

死近しとげらげら梅に笑いけり / 永田耕衣

この句は一読し、非常に恐ろしいと震え上がるほど。
死が近づいても「げらげらと」笑える精神。常軌を逸した狂気をはらんでいると感じとても印象的だった。

大雷雨鬱王と会うあさの夢 / 赤尾兜子

自分の鬱を「鬱王」と名付けること。そのくらい作者自身にとって、鬱は大きく強い存在であることが伝わってきたので選定した。

「大雷雨 鬱王(おおらいう うつおう)」という姓名ではという意見も。
確かに雰囲気あるなぁ笑。

中にはこのような句も。

シーツみたいな海だな鳥たちは死んでしまった / 四ッ谷龍

定型を外れた句ではあるが、詩的な格好良さがあるという意見があった。
「鳥たちは死んでしまった」なんて詩でしか言えないようなことを、俳句としていることに驚き。

感想を口々に発表しながら談笑しているところで17時。時間ぴったり。
今回もゆるく解散となったニシオギ句会であった。

【感想】
吟行はとても面白い!
実際に目で見たものを俳句として詠むことは、自分として初めての経験だったが、この風景をこう表現しよう、この風景をこの切り口とは異なった角度から詠んでみようと試行錯誤しながら考えることは、自分の語彙と歳時記を駆使して頭をフル回転させること。とても新鮮で楽しかった。

また、参加した方が同じ風景を見てどう感じているのか、どう言い表すのかが、まったく予想もつかずワクワクした。これは吟行ならではの経験だ。
何よりも良い天気のもとで、ワイワイお喋りしながら吟行したことが楽しかった。西荻窪周辺だけではなく、もっと違う土地(山、海、川...笑)でも吟行できれば、また違った楽しさを感じることができるだろう。

今回も新たに1名の方にご参加いただいた。ありがとうございます!
4月も計画中。美味しいビールを飲みながらゆるく俳句を作りましょう〜。

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素晴らしい天気だった。吟行兼お花見といったところか。

最新情報はこちらへ。
BREWBOOKS イベントページ

ニシオギ俳句部のTwitterもあります。

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