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キリスト教の修道院で造られたビール「シメイ(Chimay)」を飲んでみた

先日、こんなウェブ記事を見つけました。

1位のビールは「僧侶が造った」とは思えない! カルディで見つけた「プチ贅沢な海外ビール」飲み比べhttps://getnavi.jp/cuisine/504180/

僧侶って、お坊さんのことだよなぁ。お坊さんが作ったビールって何だ!?と思いながら記事を読んでみますと……
「シメイ トラピスト(ブルー) 330ml 510円(税込) 修道院の僧侶が、昔ながらの伝統を忠実に守りなが醸造しているベルギービール」
なるほど〜。仏教のお坊さんのことではなく、カトリックの修道院の修道者のことだったんですね。キリスト教関係者はあまり修道者のことを「僧侶」とは呼ばないものですから分かりませんでした(一般的にもそうじゃないかなぁ?)。

カトリック教会には様々な修道会が存在します。修道会というのは、共同生活を送る信者たちの共同体のことです。「イエズス会」や「フランシスコ会」などが有名ですね。ちなみに、僕が住んでる名古屋市には「南山学園(なんざんがくえん)」というカトリック系の学校がありますが、学校法人 南山学園は「神言修道会(しんげんしゅうどうかい)」を母体としています。

それにしても、「修道会」というと、世俗から離れて欲望を捨て規則正しい生活を送っているというイメージがありますが、そんな「修道会」でまさかビールを造っているなんて、想像がつきません。というわけで、先述のウェブ記事で紹介されていたビールについて調べる前に、まず、キリスト教とビールの関係について調べてみました。詳細は下記リンク参照。

No.17 修道院とビールの以外な関係https://www.kirin.co.jp/entertainment/daigaku/HST/hst/no17/

安全な飲み水を確保することは、大昔から人類にとって大きな課題の一つでした。聖書にも描かれていますが、特に乾燥地帯に住む人々は、井戸を掘って、その傍に自分たちの拠点を設けたのです。しかし、それだけでは生きていくための十分な水を確保できないこともあります。そこで人々は、大麦から「ビール」を、ぶどうから「ワイン」を製造し、貴重な水の代わりに飲んだのです。

聖書にはこんな言葉も書かれています。
「これからは水ばかり飲まないで、胃のために、また、度々起こる痛みのために、少量のぶどう酒を用いなさい。」(新約聖書 テモテへの手紙一 5章23節)
僕らの価値観とは真逆ですね。ぶどう酒(ワイン)ばかり飲まないで水も飲みなさい、って今なら言われそうですよね。

ヨーロッパ各地でキリスト教が発展してきた時代においても、安全性の面で、生水ではなくワインやビールを飲むことが推奨されていました。そのような事情のもと、今回ご紹介する「シメイ(Chimay)」というビールが誕生します。詳細は下記リンク参照。

厳律シトー修道会(通称:トラピスト)とはhttp://www.nastra.or.jp/trappists.html
トラピストビールのご紹介http://www.dolphins.co.jp/trappist/

カトリック最古の修道会である「ベネディクト会」を母体として、11世紀のフランスで「シトー修道院」という組織が結成されました。その後、17世紀後半に起こった修道会内での改革により、より厳格な規律に従うグループ「厳律シトー修道会」(通称:トラピスト)が生まれました。トラピストの中には、労働自活の一環として食品類を生産する修道院も出てきました。

1850年、トラピストの一団が、ベルギーのシメイ近郊にあるスクールモンという地に修道院を設立します。修道院が建てられた場所には良質な水が湧き出ていたため、彼らはその水を使ってビールの醸造を開始しました。このビールの醸造は、一説によると、その地域の失業者たちの雇用対策でもあったそうです。キリスト教の教会・修道院が、俗世から離れるのではなく、社会の中にあって人々の役に立っていたことが分かるエピソードですね。

これが、いわゆる「トラピスト・ビール」の起源となるのですが、1948年、クリスマスビール(冬季限定で製造されるビールのこと)として、寒さを凌ぐためのアルコール度数の高いビールが造られました。現在、「シメイ・ブルー」と呼ばれている、今回皆さんにご紹介したいビールです。

……というわけで!長々とキリスト教とビール、そしてシメイビールの歴史について書いてきましたが、いよいよ本題です。

キリスト教の修道院で造られたビール「シメイ(Chimay)」を飲んでみました!

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ビールの話をしているにも関わらず、実はぼくはメッチャお酒弱くて、すぐにフラフラになっちゃうんですが、やっぱり最初は定番でしょ!と思いまして、一番アルコール度数の高い「シメイ・ブルー」を買ってきました。シメイビールの最高峰と言われている一品です。

オレンジピールが使われているので、柑橘系のさわやかな香りがします。後味もスッキリ。飲み心地は、日本でよく飲まれているビールと違い、ずっしりとした印象。ゆっくりと味わいながら飲むのがおすすめです。

ビールの「賞味期限」は、一般的に「醸造後9ヶ月」が目安とされているそうですが、シメイビールは数年にわたって熟成保存でき、今回購入したものは「2020年製造」で、賞味期限が「2025年1月」と書かれていました。4年以上も保存できるんですね!インテリアとしてお家に飾っておいても良いかもしれません。まぁ僕はそんなことせずすぐ飲んじゃいますけどね。

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ラベルの下部分に六角形のロゴマークがプリントされているのが分かりますか?「AUTHENTIC TRAPPIST PRODUCT」と書かれているのですが、これは、「国際トラピスト会修道士協会(ITA)」によって定められた基準が満たされている商品にのみ使用が認められているロゴマークであり、「トラピスト会修道院の修道士が自ら醸造するか、修道士の監督の元で醸造されたものであり」、「修道院の敷地内の醸造所で醸造されており」、「販売は営利目的で行ってはならず、収益は修道院のメンテナンスや運営費用に充て、残額は慈善団体に寄付する」ことが条件とされています(Wikipedia「トラピストビール」より)。2019年1月の時点で、トラピストビールが製造されているのは世界にわずか14箇所とのことです(ベルギー6箇所、オランダ2箇所、オーストラリア、イタリア、イギリス、フランス、スペイン、アメリカ)。

キリスト教といえば「ワイン」というイメージがあります。何と言っても、イエス・キリストが「最後の晩餐」の際、ワイン(ぶどう酒)を「わたしの血」と言って、弟子たちに分けられましたからね。でも、その時にイエスは、ワインと一緒に、パンを「わたしの体」と言って、弟子たちに食べさせました。パンは、麦からできています。ビールも麦から造られます。それゆえ、ビールは「液体のパン」とも言われています。断食の期間を過ごす修道者たちは、固形物を食べない代わりにビールを飲み、健康に生きる上で必要な栄養を摂取していたそうです。これを「ズルい」と捉えるか、「賢い」と捉えるかは、皆さん次第でしょうね。

梅雨が明け、8月に入って非常に暑い日々が続いており、ビールが美味しい!と感じる季節になってきました(人によりますけどね 笑)。でも、新型コロナウイルス感染症のせいで、外にお出かけしてお酒を飲む、というのはやはり難しい状況ですよね。そんな中で、少しでも「おうち時間&家飲み」を楽しくするために、ちょっと変わったお酒を飲んでみるのも良いかもしれませんよ。キリスト教の修道院で造られた「トラピスト・ビール」、おすすめです。

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