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暗闇で光る愛と希望の一枚「Trust Me, Trust You.」

アルバムではなくシングルで「この収録曲でよかった」と思うことがあるのか。ありました。9月7日リリースのSexy Zone 22thシングル「Trust Me, Trust You.」の話です。

一番収録曲数の多い通常盤では、合計4曲を楽しめます。アルバムについては元々メッセージ性の強い1枚を作ってくるグループという印象がありましたが、シングルに対して「この収録曲たちでよかった」と思うのは初めてです。

もちろん「全曲好きだな」「バラエティ豊かな収録曲でいいな」は過去にもありますが、メッセージの統一感という意味ではピカイチだと感じます。今回2曲はドラマタイアップ、1曲はみんなのうた起用で、特にドラマタイアップのほうはドラマに合わせることが条件になってくるはず。にもかかわらず4曲を通して聞いたときに統一感があるのは偶然なのか、はたまた意図的なのか。偶然なんだとしたらすごいぜSexy Zone。

じゃあその統一感のあるメッセージとは何か。個人的には「暗闇の中でも一筋の光、愛や希望を信じていよう」だと感じます。4曲のどの辺りからそう感じたのか、順番に綴ります。

■Trust Me, Trust You.

シンガーソングライターの平井大さんが書き下ろしたR&Bの表題曲。メンバーの菊池風磨さん出演のドラマ『トモダチゲームR4』の主題歌でもあります。

歌詞に注目すると「手のひらの未来予想図 こぼれ落ちていったあの夜」という歌い出しの暗さよ。しかしそれでも未来を信じるのがこの曲です。

暗闇の向こう側に I see the 未来
最後にはきっとそこに美しき世界が僕らを待ってる
だからその日まで

この歌詞の舞台は決して光り輝く場所ではなさそうです。未来予想図が手からこぼれ落ち、踠いて嘆いて何も出来ず自分を責めた夜が沢山あり、暗闇や悲しみがある。それでも信じることをやめないところにこの曲の強さがあります。

単にAだというよりも「Aを阻む状況があるけれどAだ」というほうが言葉は強くなります。分かりやすい例が佐藤勝利さんのソロ曲「Hachidori」です。「ハミングバードみたいに僕はね そんなには飛べそうにないみたいだね でも誓う……」と、簡単に誓えない状況の中で誓うことによってその誓いの強さを際立たせています。

「Trust Me, Trust You.」も同じです。簡単に信じられない状況の中で信じるからこそとても力強く見えます。

いちファンのイメージとして、Sexy Zoneは暗さの中にある光を歌うのが上手いと思っています。信じる力の強い光のアイドルだから曲が暗くても暗くなりすぎない。ちゃんと希望の歌になります。今どんな暗闇の中にいてもすべてをハッピーエンドにしてくれそうだと感じられるんです。

2020年のアルバム曲「HIKARI」の歌詞にこうあります。

何度も僕らは光り輝く その度 夜は教えてくれる
「暗闇こそ自分のこと見つけやすいんだよ」と。

これを思うと、Sexy Zoneはネガティブな意味ではなく暗闇や夜が似合うグループです。彼らの持つ光の強さをより感じられるからこそ、夜の中にいる姿に惹かれるんだと思います。

もう一つファン目線でいうと、デビュー曲で「どうすれば夢は叶うのかな? 信じて明日へ歩き出す」と歌ったSexy Zoneが「Trust」をカギとする曲を歌っているのも嬉しいです。メンバーと同世代の身としては、無邪気に未来を信じられる日々は終わったかもしれないけれどいろいろあっても未来を信じる大人でありたいなあと思います。表題曲であるこの歌には、このシングルから個人的に感じたメッセージ「暗闇の中でも一筋の光、愛や希望を信じていよう」が詰まっています。

それにしてもこの歌詞をSexy Zoneに書く作詞家さんも、それを引き寄せる(あるいは企画する)Sexy Zoneチームもすごいな。「この歌詞を歌うこのメンバー最高か……」となるのはグループを問わないオタクあるあるなんでしょうけれど、だとしてもSexy Zoneの曲の「この人の歌う! ここ!!」感はすごいです。

■Sleepless

「握りしめたこの手から 零れるSmile & Hope」と、これまた手からものがこぼれ落ちるところから始まります。今回物落ちすぎじゃない?

舞台はこちらも夜。「見上げたMidnight 蒼く滲むMoonlight」ですので。さらにいうとこれもデビュー曲と重なる歌です。「正解なんてどこにもないだろう」「歩き続ける自分らしい明日へ」ですので。

もう一つ重ねるとしたら「RUN」や「NOT FOUND」を重ねてしまいます。「太陽はきっと きっと この闇を照らすはずさ」と歌った前者も彼は誰時に言及した後者も、夜明けを信じる歌です。今回の「Sleepless」も新しい朝に向かっているという点でSexy Zoneの夜明け待ちソングシリーズに入れられます。(今勝手にシリーズにしました、すみません)

夜という暗闇の中でも一筋の光を信じて歩き続ける。そんな静かな意思を感じる1曲です。

■惑星

前2曲は夜という暗闇を舞台にしていましたが、「惑星」の舞台となる暗闇は宇宙です。見下ろせば青い地球(ホウセキ)があり、星屑の海があり、寝そべりおしゃべりできる三日月があり、夢の先まで連れていってくれる箒星があり。ゆえにこの曲から想起される暗闇はあんまり暗くないです。物理的には暗いけど。

精神的な暗さがないからこそ「AできないけどA」のヒリヒリした力強さはありませんが、代わりに優しくて大きな愛があります。広い宇宙の中で逸れないように手を取って、朝も夜も寝顔さえも守るんだと。それが無条件LOVE/無重力LOVEなんだと。「無重力LOVE??」と思ったのは否定しませんが、今のところ重たいものやしがらみ(=重力)にとらわれない愛だと解釈しています。

この歌から受け取ったメッセージを言葉にするなら「広い宇宙の中でも愛を信じて君を守ろう」……なんて感じでしょうか。そう思うとやっぱりこのシングルの一曲にぴったりだと感じます。

■See you again

ラジオで初聞きしたときの感想は「佐藤勝利くんが好きそう!!」。曲調の話です。

リスニング力がないのでラジオではサビの「through the darkness」「see you again」くらいしか聞き取れませんでしたが、歌詞カードを見ると該当箇所はとても素敵。

Shine bright even through the darkness
I will see you again

(歌詞カードより日本語訳)
どんな暗闇も光となって
僕らはまた出会うだろう

またもや暗闇と光のSexy Zoneですね。

英語ネイティブは再び会う確率が低くても、というかむしろそういうときにSee you againを使うと聞いて「切ない歌なのでは……」と思っていました。日本語訳の「涙の後は笑顔で始まる物語」「どこへ行こうと何をしようと幸運を祈っている」あたりに心がザワザワしないといえば嘘になります。

でも「僕らはまた出会うだろう」「いずれこの道の先の先で互いに鉢合うだろう」なのです。ここで5周年の歌「STAGE」の「いつかまた出逢うなら僕らが描く"頂上"で」を思い出します。

この曲のYou and meに何を重ねるかは人それぞれでしょうけれど、何を重ねても切なくて悲しい歌ではないはず……と思います。以前「Trust Me, Trust You.」の感想で「Sexy Zoneが自信持って選んだことなら大丈夫と信じたい」と書いたんですが、なんだかそれを思い出しました。

どんな道を歩んでいてもお互いの幸せを願い、道の先で出会えることを信じる。そんな歌に聞こえます。きっと行きつく先はハッピーエンド。

■おわりに

収録曲の情報が出たとき、もう少しポップな曲が入っててもいいのかなあとも正直思いました。でもいざ通して聞くと、この4曲でよかったなとしみじみします。あ、もちろんキラキラポップスを歌うSexy Zoneも好き。ONIGAWARA提供曲を歌うSexy Zoneを待ってるよ。でもこんな風に夜や暗闇が似合うSexy Zoneも大好きなので今回はもう大満足です。

「暗闇の中でも一筋の光、愛や希望を信じていよう」と思わせてくれるその光の強さを見るたびに、Sexy Zoneはアイドルだなあと感じます。ご自身でも歌うアーティストの方からの曲提供だと「ご本人が歌うほうがいいのでは!?」なんて笑い話がメンバーからも出ますが、Sexy Zoneが歌うからこそ響くメッセージもあると思うんです。

とはいえ私がSexy Zoneに対してそう思うのはきっと彼らのファンだから。ほかのアイドル、あるいはほかの人に言われるほうが響くという人もいて当たり前です。

好きな作家の朝井リョウさんは小説『スター』の中で、世界はどんどん細分化されて誰もが知るスターはいなくなっていくのだと書いていました。別の空間の価値観を否定しても意味がなくて、自分の空間の中で循環して生き延びていくしかないのだと。Sexy Zoneに限らず好きなものを応援しているときによくこの本のことを思い出します。

今回のシングルについて綴る中でも思い出しました。自分がファンだからいいシングルって思うのかなあ、なんて。まあ応援したいものを応援しているだけなので自分が好きだと感じられればそれで十分なんですが、細分化されて小さくなった世界を飛び出すSexy Zoneも見たいなあと思っちゃうのです。それが彼らの望む「売れている」ということならばなおさら。

ちょっぴりウジウジする私に希望をくれるのもまた小説『スター』なのですから憎いものです。この本がもう一つ書いているのは「素晴らしいものは、自然と越境していく」ということ。自分はジャニーズに詳しくなかったにもかかわらず友人の勧めで昔のライブ映像を見てSexy Zoneを好きになったので、まさに越境の先にいたタイプ。その体験があるからこそとても大事にしているフレーズです。

過去のものを見て時間差で好きになる人間もいるのですから、過去の頑張りも今の頑張りも、全てが未来のファンがSexy Zoneに出会うきっかけになると思っています。それはたとえるなら惑星の反射した光が時間をかけて地球に届くようなものです。

何年か前の彼らの姿が私に届いたように、Sexy Zoneの光がゆっくりとでも越境していきますように。今回のシングルがその光の一つになりますように。

そう願って筆を置きます。