Sexy Zone「Trust Me, Trust You.」の構造が面白い話と余談の解釈

Sexy Zoneの新曲「Trust Me, Trust You.」のMVが公開されました。

モチーフになっている「最後の晩餐」や日光東照宮の三猿と絡めた有識者の考察をほーほーと眺めています。私自身は解釈がまだ甘いもので「そもそも裏切りって何に対する裏切りなんだっけ?」「犯人と言うけれど何の罪を犯したんだ??」と混乱してもいるのですが。

そんな中、個人的に面白いなと思ったMVの構造です。

■MV中の監視の構造

ミュージックビデオは、この楽曲が主題歌となっているドラマ『トモダチゲームR4』で展開される“友情”と”裏切り”が交差していくストーリーとリンクするように<2面性>をテーマに制作された。

「見ざる聞かざる言わざる」のような特徴的なダンスシーンの他、「最後の晩餐」をモチーフにした空間セットなども収められ、誰かに監視されながら歌う疑心暗鬼、且つミステリアスな世界観がアートに表現されている。

誰が敵で誰が味方か?また、「鏡の実像と虚像」「表と裏」などあらゆる意図が演出され、異なるアングルの構成で映像が仕上がっており、考察しながら細かいシーンも楽しんでほしい。
動画概要欄( https://www.youtube.com/watch?v=gJ86l4Zw21Y  )

この「誰かに監視されながら」というところ。この4人は誰かに監視されている設定なんですね。監視されているという設定はドラマ「トモダチゲームR4」に重なります。

ドラマ「バベル九朔」の主題歌である「NOT FOUND」のMVもドラマの世界観に通じる部分がありました。その話は以前書いたので割愛しますが、ドラマを見る意味も増すのでこういうMVの作りは好きです。面白い。

■MV中に留まらない監視の構造

MV公開後、コメント欄やハッシュタグの考察をぼんやり眺めながら、この監視の構造はMV中に留まらないと感じました。

MVの中の4人は考察のために一挙手一投足を見られています。そのため、視聴者がせっせとMVを考察することで「監視される4人」という構造がMV内だけでなく現実にも広がっていくのです。

ドラマ「トモダチゲームR4」でも、トモダチゲーム運営だけでなくゲームの配信を見ている人も彼らを監視しています。トモダチゲームの参加者と運営と配信視聴者。MV中のメンバーと監視者とMV視聴者。この似たような関係に気がつくとゾワッとします。現実世界の力も使ってドラマと重ねてきたってこと~!?

トモダチゲームR4との関連でいうと食事シーンも似て見えます。ドラマの食事シーンは「『人の不幸を見ながら自分たちの欲を満たす』ことの象徴」なんだそうです。

友一らがゲームに挑む姿をモニタールームで鑑賞している運営メンバーだが、毎回豪華な食事をむさぼり食うシーンもお約束。命がけの裏切りバトルを繰り広げる壮絶な場面と、優雅なモニタールームの対比がより一層不気味さをあおっており、SNSでも「食事シーンが印象的」「人間の欲望を表現しているのだろうか」などの意見が飛び交う。

そして、まさにそんな考察の読みどおり、このシーンは「人の不幸を見ながら自分たちの欲を満たす」ことの象徴として描いているそう。誰もが少なからず秘めている、人間の醜い深層心理を、壮大な音楽と豪華な料理に食らいつくさまで表現している、とても重要なシーンといえるだろう。
https://www.tvlife.jp/drama/492419

一方MVの彼らは人の不幸を見ながら~なんてことではないので、ドラマの食事シーンとMVの食事シーンは重なるようで重なりません。

しかしふと、逆に重なっているのかもしれないと思いました。なぜならMV中の彼らは食事ができていないから。お皿に取り分けられた果物は真空パックの中に入っていて手を付けることができません。これはドラマの食事シーンと真逆の状態です。ドラマをふまえることで、食欲という欲を制限された状態とも解釈できます。つまり監視の中で欲を制限される姿が描かれるアイドルのMV……? そう思うとゾワッとしますね。

これはもう解釈に解釈を重ねた域の感想ですが、MV中のストーリーに留まらず、現実世界を生きるアイドルの描写という意図があったとしたら怖すぎます。「『鏡の実像と虚像』『表と裏』」という概要欄の言葉が全然違う意味に見えてきてしまう。美しき虚像として表の姿を見せてくれてありがとうと言うべきか。オタクの業について考えちゃいます。

■カメラの破壊は何を意味するのか

閑話休題。監視の構造の話に戻ります。

この監視の構造をふまえて最後のカメラの破壊について考えると、あれは監視を打ち破るということなのかもしれません。あそこまで派手にガッシャンと破壊されると「多分この破壊者は悪い奴だ!」と思ってしまいますが、彼らがなぜあそこにいるのか、なぜカメラで監視されているのか、彼ら自身はどういう関係なのか分からないと善悪の判断はできませんもんね。

相手や自分自身を信じ続けた先に「美しき世界」はあるのか。彼らは「約束の場所」へたどり着けるのか。CD特典でMVの全貌を見れば何か分かるのでしょうか。

■余談:歌詞のSexy Zoneみについて

解釈に解釈を重ねた話をしてもいいですか?(勝手にしなさい)

これが現実世界を生きるアイドルであるSexy Zoneと重ねたMVなんだとしたら……という話です。

そもそも歌詞にSexy Zoneを感じるのでつい重ねてしまうというのはあります。まだライブの字幕でしか正式なものは見られていない&その記憶もうっすらなので空耳アワーの可能性大ですが。

特に感じるのはラップ詞です。「風をきって物語の先へ」はまんま「風をきって」。「もがいて 嘆いて」は「NOT FOUND」を思わせるし「何もできず自分責めた夜もたくさんあったね」は「STAGE」を思い出す。無限連想ゲームなのは否定しません。

ケンティーが「思いは魔法のように動き出すから」と歌うのも、風磨くんが「笑って話せる Someday together」と歌うのも、勝利くんが「一人じゃ来ない明日があるんだ」と歌うのも、聡ちゃんが「敵味方も見方で変わるさ」と歌うのも、個人的には納得感のある歌詞割りです。ドラマにもせくし~にもあわせた歌詞を書いてくださる平井大さんすごい。

デビュー曲で「どうすれば夢は叶うのかな? 信じて明日へ歩き出す」と歌ったSexy Zoneが「Trust」をカギとする曲を歌っているのもよい。信じる力が強いの、光のアイドルで好き。すべてをハッピーエンドにしてくれそう。

ハワ~~明日を信じるSexy Zone~~~~と思ったうえで「美しき世界」や「約束の場所」について考えるといろいろ浮かんでしまいます。そしてMVを見ながら解釈をに詰めすぎた結果、「Baby trust me, like I trust you.」のフレーズが「僕らがみんなを信じるように、僕らを信じて」に聞こえるようになりました。Meは単数じゃんというのは気にしない。

彼らが「美しき世界」や「約束の場所」に辿り着けるよう、自分も5人を信じ続けたいものです。「Sexy Zoneがこうであったらいいな」というよりも「Sexy Zoneが自信持って選んだことなら大丈夫」と信じたい。

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9月8日追記:リリースおめでとうございます! 個人的にはとても好きな1枚です。