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『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜』感想(ネタバレあり) など

世田谷パブリックシアターにて、ノゾエ征爾氏の代表作『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜』を観てきました。


世田パブのポスターの前で

この演目の作品には、僕はすごく思い入れがあって、なんと、11年前の2012年の2月3月にノゾエ征爾氏を広島のアステールプラザが招聘し、【広島版】として上演されました。僕が齢35の時でしょうか。
その頃は演劇活動は休止していたのですが(だいたい僕は休止の期間ばかりが長い)ちょっとオーディションを受けてみようと思い立ったのですね。これは反射的というか、その前に僕は東京で鴻上尚史さんのWSにちょうど参加していて、WS後の打ち上げの席で鴻上さんが「君が広島で役者をやるのはいいと思う!」と背中を押してくださったのもあって、そのオーディションの紙を偶然にというか見つけて応募してみようと思ったわけです。そして何故だか「ノゾエ征爾」という人物にも少しばかり記憶があって、僕は22の時にも一度上京していましてENBUゼミという演劇の学校に通っていました。そしてノゾエ征爾氏もそのENBUゼミの卒業生だと、いうことをうる覚えでありますが、ニアミスで?会ったことはないのですが、演劇界でENBUゼミ出身でもう若くして活躍している人物がいるという話は噂で?聞いたことがあったので、それがノゾエ氏だったのだと記憶しています。(なんとも長い前置きになっているのだ…)それでオーディションを受けたのです。
ちなみに昨今、岸田戯曲賞を受賞した福名理穂さんもここで演出部に初めて入っていてのちにENBUゼミに入るので縁というのは不思議なものです。

この話は長くなるのでこの辺で。
『ガラパコスパコス』の劇評を書こうと思っていたのだった……。

とにかく奇抜な演出である。
その一つは小道具を一切使わずに、舞台一面が黒板になっていて、役者はそこで、小道具やモノやあるいは感情のようなものをチョークで描いて表現します。文字や絵を描くことで、それが本物に見えてくるので不思議なものだ。そして、15人くらいキャストがいるのですが、そのほとんどの俳優が、すべて出ずっぱりであって、出番がないときは黒板のほう、舞台に背を向けて立っている、あるいは座っているという状態が約2時間にもわたって続く奇妙な群像劇なのです。
その演出はこの度も変わることなく上演されていました。
ストーリーを語ると、まず主人公のピエロの格好をした売れない大道芸人?の青年(太郎)が特養にいるおばあちゃんを偶然に?家に連れて帰ってしまうことから物語が始まります。そこから起こる、なんだかんだの群像劇が始まるのですが、テーマは「老い」と「進化」ですね。老いた先に果たして進化はあるのか、はたまた、我々は進化しているのかといった壮大なテーマを突きつけてきます。

ノゾエ氏が続けている高齢者施設での演劇の巡回公演の末に生まれた作品とのことで、なかなかにシリアスで考えさせられるシーンがたくさんあります。
とにかく、役者が達者でした。はえぎわ版、広島版をも凌駕するほどの役者の演技力に魅了されました。(もちろん、はえぎわ版、広島版と魅了される役者ばかりなのですが。厚かましいでしょうが僕を含めて笑)
太郎演じる、竜星涼氏とお婆ちゃん役の高橋惠子氏の演技は特にこの度のバージョンではスゴい存在感を発揮していて戦慄が走りました。藤井隆氏は抜群の安定感。と役者の上手いところを書いていけばキリがないのですが、僕がやっていたちょっとヤバイ感じの青年、「耕介」の役をノゾエさん自身が演じておられて、これにはおったまげました。果たして、僕のやった役をどんな役者がこの度演じるのかをちょっとばかり楽しみにしていたので、裏切られたというか、まぁ安定しておりました笑。最後のボレロを踊りながらリズムをつけて歩きながら、進化について考えさせられるシーンも見事に振り付けられていて、その演出にも圧倒されました。壁が倒れてバスになるシーンもそのままやってしまうのかという驚きもありました。がラストシーンは感動的で少し涙ぐんでしまいました。
とまぁ、ネタバレも含めた、ノゾエ征爾氏の代表作をこの時期に観れるとは思いませんでした。とても楽しい時間でした。
まだやっているので、ぜひ、気になった方は劇場に足を運んでみてください。


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