見出し画像

一発書きチャレンジ_9 「難しく考えなくたって、どっこい世界はまわる。」

幼い頃、世界の全てが疑問だった。

「なんで?どうして?」と問い続けながら、大人の真面目な答えも、いい加減な答えも、まるっと鵜呑みにしながら成長したと思う。

物心ついてしばらく経って、「鵜呑み」にしすぎていた事にようやく気づく。知らなかった事が、人より多い事を知り、そんな己を少し恥じて、そこから本を読むようになった。

「人の知らない事を知っている」事が、自分の価値をつくると思っていたし、知識で武装することで何とかアイデンティティを保っていた時期が長かったように思う。

そこにやがて、カウンター性という軸が加わる。

つまり、「多くの人が知らない」分野は、メインストリームよりもカウンター側にあると感づいてから、ずっとマイノリティであることにこだわって、今に至る。

人間用の豚足320円と、ペット用の牛肉200円

モンゴルの遊牧民にとって、星空は神様の「のぞき窓」だった。

かつて友人がモンゴル遊牧民と半年過ごし、そこで聞いた神話の話が忘れられない。

昔、モンゴルに暮らす遊牧民のところへ、しばらく通っていたことがあります。遊牧の手伝いをする以外、何もすることがない毎日。夜、寝る前に用を足しにゲル(遊牧民の家)の外に出て空を眺めていました。モンゴルでは地平線から湧き上がるように星々が昇ってくるのにとても驚いたことを今でもよく覚えています。ふと、思い立ってお世話になっていた遊牧民の友人に星について尋ねたことがあり、そのときに教えてもらった星のお話です。

神さまがこの世界を作った時、世の中は光に満ちていたそうです。でも、生きものは休む必要があったので、神さまは1日の半分に天幕をかけることにしました。すると、困ったことに天幕で隠されて地上の様子がよく分かりません。そこで、神さまは天幕に針で穴を開けて下の世界を見ることにしました。それが星となって見えている、、、つまり、星は「神さまののぞき穴」なのだそうです。そして、神さまがもっとよく見たい時には、天幕をナイフでサッと切ることもあるそうで、それが流れ星だと教えてもらいました。そう言われてみれば、流れ星に三回唱えることができたらその願いが叶う、という言い伝えもなんとなく信憑性(?)を帯びてきます。また、北極星はアルタンガザス(黄金色の場所)と呼ばれ、命の源だとも教えてもらいました。
星の向こうに神さまの世界があって、命のより来る場所がある。自分たちの命が星と共にあるという感覚は、満天の星空の下で生きる人たちにとっては当たり前のことなのかもしれませんね。

赤阪友昭

この話を初めて聞いた時、明らかに私にとっての世界の見え方は大きく変わった。

科学的な正しさとか、常識とか、固定概念とか、そいういうものの見方が一気に溶解して、確かに解き放たれたのだ。

「宇宙観」は、一つじゃなくてもいい。

ひとつの「正しさ」を求めて、知識を集め、差分を無くしていく事よりも、もっと多様に包摂していく方が、よほど知的で豊かだと気づいた。

ペット用の牛肉も、ヒト用の豚足も、ただそこにあるというだけで、色んなドラマが立ち上がってくるから面白い。

いちいち難しく考えなくたって、どっこい世界は回り続けるのだ。


※「一発書きチャレンジ」は、
私個人の文章を書くリハビリで、何の準備も、構想も、下書きも無く
文字通り「一発書き」で書きなぐったテキストです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?