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y_words
2022年1月2日 08:53
ある週、トランペット吹きが姿を現さなかった。 それは定例会が開催されてきた期間の中では初めての出来事だったので、黒田氏と堺氏は動揺を隠せなかった。とはいえ、今まで2名がトランペット吹きと言葉を交わした事は無く、彼の様子を確かめる術が無かった。 「静かですね。」 黒田氏との会話が途切れ、しばらく沈黙が流れたところでようやく堺氏が音楽の不在に触れた。定例会はいつもの音の聞こえないままなんと
2021年12月31日 04:28
「ああ、堺氏、ご無沙汰です。」 「ああ黒田氏!いやはや、ご無沙汰です、ご無沙汰です。少しコレについて家内と揉めましてね、最近外出を控えていたんですよ。」 「はっはっは、心配されておられるんですね。ご家族もお元気そうで何よりです。」 黒田氏はいつも通り全身黒色の装いで、堺氏は冬らしい白色の毛皮に埋もれていた。どちらも定例会の常連である。というより、最初の数回以降はほとんどこの2名のみが出席