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お姉ちゃんは魔法が使える


「お姉ちゃんは魔法使いだったけど、二人で暮らすようになってから人間に引きずり下ろして、仲良くなったね」と妹が言っていました。



 世の中の上の子のみんな〜〜〜〜〜!!!
 ちょっと自己肯定感高い高いしよっか!
 ほ〜ら自尊心高い高い!キャッキャッ!見て!捨てプライドがこちらを見ているよ!!

 アナと雪の女王が流行った頃、何らかの(覚えてません、ごめんなさい)SNSでちょこっと見かけた話。あるいは「タコピーの原罪」の東くんのお兄ちゃんの文脈だったでしょうか。

「下の子はお姉ちゃんのことを、何だか魔法が使えると漠然と思っている」

 それを見かけた妹が「あぁ〜」と納得していたので、私は昔魔法使いでした。

 少し先に生まれただけでした。
 両親からの期待を一心に背負い、お小遣いとか漫画を読む事とかゲームの所持とか携帯電話が欲しいとか、そういった主張を繰り返して大人相手に道を切り拓く姿は魔法使いに見えたようです。
 確かにそれらはそれ相応に大変だったし、私が切り拓いた道を下の兄弟がたったか走って行ったうえに、案外彼らは私たち上の子より早く携帯電話を買い与えられたりとかしていましたね。
 過去のことは過去のこと、と切り分けるのが主義なので(特に悪いことは)一旦魔法使いのお姉ちゃんの思い出話を聞いてデヘヘと思った訳です。
 何せお姉ちゃんは魔法が使えるのですから。

 そう、君のお姉ちゃんは魔法が使えたんだよ。
 精神をやらかす以前の私は、確かに魔法が使えた。
 キレる親から君たちを庇って怪我したり。
 親が用意できなかったご飯もお姉ちゃんが台所でちちんぷいぷいと何かしたら、食卓にいつの間にか出現した物です。
 君のお姉ちゃんは傷ついた姿を君たちに見せる事なくアブラカタブラと煙のように消えて、閉鎖病棟で天井を見つめたりして元気になって、いつの間にやら笑顔で家に戻って来ていましたね。
 お姉ちゃんが魔法の靴の踵を叩けば、お姉ちゃんのアルバイト代で君たちに焼肉食べ放題が舞い込んできた。
 おうちに嵐が吹き荒れていた時は手を取ってくるりと時空を飛び越えて上野の国立科学博物館でシロナガスクジラをみましたね。
 お姉ちゃんが魔法の杖(診断書といいます)で叩いたらあんなに恐ろしかったおうちの大人もずいぶん穏やかになりました。余談ですが自立支援医療を使うと魔法のように医療費も一割になりますね。

 それら全てが魔法だと言うこと、それはわたしたちにとって祝福以外の何と呼ぶのでしょう!

 だってアルバイト先でよくわからんクレーマーに頭を下げる私も、学校の授業でパソコンの課題を早く終わらせてクックパッドを見ていたことも、ひとつもバレなかったのです。

 マジックは種明かしされないまま永遠に魔法になって、あの頃の私は魔法が使えたのでした。

 だから君たちは私に気を遣わないでいてくれますね。
 君たちは私に負い目を感じず、健康に毎日暮らしてくれていますね。
 それが私のよすがになっていることを知らないでいてくれていますね。

 努力って……小っ恥ずかしいじゃないですか。
 くちゃくちゃで努力しましたみたいな空気出したくないし君らの為にお姉ちゃんが犠牲になりましたムーブしたくない過ぎる。

 そこで魔法ですよ、前述の魔法!
 お姉ちゃんだから魔法が使えてたんですね〜〜!

 魔法使いは不死身なので、お姉ちゃんはまだ生きています。いや〜ぶっちゃけ死ぬかと思ってたけど意外とお姉ちゃんもうアラサーよ。魔女よ魔女。

 だからかつて魔法が使えたお姉ちゃんのみんなたち、どうか不死身のままでいましょうね。
 わたしより。

 







現在、仕事を在宅ベースに移行中でものすごく貧困なので、いいなって思ったら何か頂けるととっても嬉しいです。

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豊かに暮らすことを試みます