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みんなにめちゃくちゃ幸せになってほしいフェミニズム

フェミニズムに言及するの、怖すぎる。
私はずっとそう思って、フェミニズムという言葉を中心に荒れるツイッターのTLを見て見ぬふりしてきた。
そんな私がフェミニズムを冠した記事を書こうと思ったのは、私自身がフェミニズムを誤解しているとわかったからだ。
誤解しているというより、最初から理解していなかった。
なんとなく雰囲気でこういうものだろうと思っていた。
「フェミニズムとは何か」という問いに答えられもしないくせに、勝手なイメージに怯えていたのだ。「人間は知らないものを怖がる」というけれど、本当にそうだと思う。

この記事では、ある本をきっかけに、私のフェミニズムに対するイメージがどんなふうに変わったのかを、自分の体験とともに書き連ねたい。

私にとっての“なんとなくのフェミニズム”

今まで学問としてのフェミニズムには触れてこなかったけれど、男女平等を求める意識は強かったほうだと思う。(ちなみに私は生物学上も性自認も女)
幼いころから結婚願望は皆無で、異性からアプローチされても、そういうことにはまったく興味がなかった。
とはいえ周りの女子が求めるものに興味関心はあったので、デートしたりお付き合い的なことをしてみたりもした。
結果、やはり愛や恋に身をささげることはできそうになかったので、一人で生きていけるようにしなければという意識だけは、しっかり醸成されていった。
そんな私は今、女性とお付き合いをしている。
細かいことは割愛するが、そんな自分の状況も相まって、受験や就職や昇進で男性が優遇されるのは本当に困る。なぜなら家族が女性二人だから。
そういうわけで、私にとっては男女平等が当たり前の社会であることは、生きる上で超超超重要事項だ。

幸い私は、結果を出せば男女関係なく認めてもらえる環境で今まで仕事をしてきたと思う。
とはいえ、結果を出すまでのプロセスではどうかというと、女であるということが足を引っ張っているような、逆に女であることを自ら利用してしまうような場面に、少なからず傷ついてもいた。

仕事をしていて、「女性だから」「女性なのに」という枕詞を使われるたび、あるいはそういう言葉は使われなくても、この領域は男性のものなのであなたは部外者ですよというメッセージを受け取るたび、表向きは何食わぬ顔をして、帰宅してから大いに荒れた。「どうしてあのときあの人はああいう言い方をしたのか」に始まり、「どうすれば理解してもらえるのか」、「理解してもらえないとしたら何が障壁になっているのか」、「障壁を取り除くために私のできることは何か」などなど…。

付き合わされるパートナーはたまったもんじゃないと思うが、私にとっては、ある程度解決の道筋を見つけなければ、思考を切り替えることが難しかった。自分が丸ごと否定されたような気がするし、この先頑張れば頑張るほど、こういう壁にぶつかるのか…と暗澹たる気持ちになった。どうしようもないモヤモヤのせいで、何を考えてもすべてがネガティブなほうに引っ張られてしまうような感覚だった。そういうことを言う人だって、悪気があって言っているわけではない。でも、たぶんそのせいで、とても損している気がする。会社も、そういう発言をする人も、当然、言われている私やそのほかの女性たちも。

そういう経験を繰り返して、なんとなく自分はフェミニストなのかな?フェミニズムって、女性はもちろん、女性が生きやすくなれば男性だって生きやすくなる考え方なのでは?という気持ちを持ち始めた頃、TwitterでKuToo運動が盛んになった。SNSを通して女性同士が連携して声をあげられるのはいいことだな~と他人事のように思っていたが、いつの間にかミソジニー(女性蔑視)男性vsツイフェミ(ツイッターでフェミニズム発言をする女性を揶揄する表現)という構図で炎上するツイートをよく見かけるようになった。
「フェミニズムに言及するの、怖すぎる。」これが、そのとき私がフェミニズムに感じた印象だった。

モヤモヤし続けるくらいなら、いっそぶつかってしまえ

そんなわけで、しばらくフェミニズムとは距離を置き、自らの心の平穏を優先していた私だったが、表現の自由とフェミニズムに関わる案件や、平行線をたどる議論を見るにつけ、どうしても気にせずにはいられなくなった。
どうしてこんなにモヤモヤするんだろう?
それは、議論がうまくかみ合っていないように見えるからでは?
言葉の定義や前提条件を確認せずに何かを議論することなんて、そもそもできっこないのでは?
と、ツイッターでの言葉の応酬を見ていていつも感じていた。
じゃあ、永遠に平行線で、モヤモヤし続けるのか?私が職場で感じていたように?
…いや、そうじゃないだろう。私自身も、フェミニズムが何なのかもわからないままモヤモヤしてるの、おかしくない?
相手は変えられなくても、自分のものの見方を変えることはできるはず…そうであってくれ…

そう思って、最初に手に取ったのがこの2冊だった。
(たしか、たまたま田嶋陽子さんのインタビュー記事を読んだことがきっかけになった)

田嶋陽子さんといえば、「ビートたけしのTVタックル」に出ていた強そうな女性というイメージを持つ人が多いかもしれない。最近も『そこまで言って委員会NP』等に出演されている現役バリバリのフェミニストだ。
(恥ずかしながら、田嶋さんがフェミニストであることを、私はこの本を読んで初めて知った)

正直、初めて読んだフェミニズム関連の本が、田嶋さんの本で本当によかったと思う。なぜなら、フェミニズムは女性だけでなく、誰もが搾取されることなく、平等に生きられる社会を実現しようという考え方なのだということがわかったからだ。

ツイッターで叩かれるフェミニズムといえば、「とにかく女性側の権利を拡大させようとしていて、男性が権利を奪われる」という文脈で、まるでこの世は男女のゼロサムゲームのように語られる。
けれど、田嶋さんの主張するフェミニズムとは、女性も男性と同等に

・自立できること
・チャンスがあること
・選択できること
・自由を謳歌できること

なのだ。そこに女性だけが得をするという発想も、男性嫌悪の思想もない。
ただただ、一人の人間の生きざまそのものなのだ。
実際に田嶋さんも「私のための、私が生きるためのフェミニズムであって、フェミニズムが先ではない」とおっしゃっている。
私は、心底ほっとした。同時に、私がぼんやりと抱いていた、「みんなが生きやすくなる」という考えは間違っていなかったと思った。

みんなフェミニストになあれ!

日本の経済が好調だった時代なら、男は企業戦士になって会社を成長させる歯車になり、女は専業主婦になって子どもを生み育て夫の世話をすることが、最も効率の良い社会だったのかもしれない。というより、田嶋さんに言わせれば、そういう社会構造を維持するために、女性がドレイにされてきたのだという。悲しい。社会構造そのものが差別的だから、その中にいる人たちは、差別していることにも、差別されていることにも気付きにくいという、これまた悲しい現実…。
でも、今は、少なくとも目指される経済活動のあり方は違う。日本の経済は停滞し、会社員の給与は頭打ち。男性一人で家族を養っていくのはそもそも難しい。女性を家庭に縛り付けても、共倒れになるのがオチだ。企業も労働者不足なので、寿退社してもらうことを前提に女性を採用するなんて到底無理になった。結婚しても、出産しても、会社に戻ってきてほしい。そういう状況になって初めて、女性にも男性と同じように働いてもらおうという動きになった。
正直、「遅ッ!!!!!!」という感想しかないが、ようやく変化してよかったなと思う。本当、遅いと思うけど…。

女性の社会進出、という点では少しずつ変化していると思うものの、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といったジェンダー観やそこから生じる女性の差別的待遇については、まだまだ強固だよなぁというのが私の率直な感想だ。
そしてそれが、フェミニズムはみんなが生きやすくなる考え方かもしれないと思う大きなポイントでもある。

女性に対し、「女性なんだから」と女性らしさを押し付けることは、反対に「男性は男性らしくあらねばならない」という考え方の押し付けにもなる。それってつまり、自分はこういう状態が自然で自分らしくいられるな、と思っていても、「男」とか「女」の型に無理やり合わせなければいけないということである。男女ともに。
残念なのは、型にはめられているのに、それがすっかり内面化されて「自分の男らしさ(女らしさ)は生得的なものだ」と思い込んでいる人が本当に多いということ。それを指摘すると、もはやアイデンティティの一部になっているので、自分が否定されたように感じてめちゃくちゃ傷ついちゃうんだろうな…。
私の周りでも、男なんだからしっかりしろと上司からゴリゴリの指導を受けた部下が適応障害になった、みたいな事例があって、一人の人間(会社からすると貴重な労働力)よりも、男らしさが大切なの?クッソくだらねーーーーー!と思ったものだ。
もう令和なんだから、しっかりしてほしい。本当に。
もしも魔法が使えたら、その上司をフェミニストにする魔法をかけてあげるのに。(魔法が使えないので、しかるべき措置をとりました)


そんなわけで、私はフェミニズムを誤解していたけれど、ちゃんと向き合ってみたら、全然怖くなかったよ、むしろみんながお互いを尊重し合って自分らしく幸せになろうぜという思想だったよ、という話でした。
田嶋さんの、自分らしく生きるために必要だからフェミニズムを使うスタイル、私も真似したい。


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紹介した本については、とてもざっくりとした解釈で説明しています。ご了承ください。
本を読めば、この記事であまり触れていない「差別の社会構造」って、こういうことか!と一瞬で合点がいくし、田嶋さんカッコエェ…!となること請け合いなので、気になった方はぜひお手に取ってみてください!私はめちゃくちゃ救われたし、元気をもらいました。

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