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事業継承できるかな ~初案件!その5(サイトT編)~

◼️今までのあらすじ◼️

 ・ネットの事業継承サイト Tで、ニッチな分野に特化したソフトの販売事業が売却案件に入っていたので、コンタクトして初回面談をした

 ・初回面談の結果、製品自体にいくつか課題がある。こちらの予想買収価格に課題解消コストを踏まえると、仮に販売しても回収が難しいと感じた。

 ・売り手の樋口社長より「他の買い手候補のインフラ商店と組んでビジネスしたらどうか」と提案され、セオリーと真逆の内容で面食らう

 ・インフラ商店にコンタクトを取ると、先方から多大な期待をしているメールを頂き、不安マックスで面談することとなった

■いざ、インフラ商店さんへ

インフラ商店さん訪問の当日。夕闇せまるころ、会社の定時ベルが鳴ります。

いそいそと荷物をまとめて、上司や同僚に捕まらないよう、シレッと会社を出ます。しょせんは就業中の身なので、上司に「塚田君、この書類の内容、ちょっと説明してくれよ」と捕まってしまえば、対応しないといけません。

・・・でもね。

今の会社も確かに大事だけど、こっちの案件はそれ以上に大事なのです。

当たり前だけど、会社は僕の人生を保証してくれません。自分の人生や時間は自分で守らないと・・・。「会社組織の一員である自分の代わり」はいくらでもいるけど、自分自身や自分の大切な家族に代わりはいないのです。また、時間は戻らないし、チャンスは(基本的に)二度とめぐってきません。これは社会人10年と少し経ったときに体調を崩したあと、考え方のベースとなっている思いです。難しい判断に迫られた時、いつもこの考え方に立ち返ることにしています。

・・・お話しが横道に逸れてしまいました。

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さて、電車を乗り継いで、インフラ商店のxx事務所へ。

にぎやかな駅前を抜けて、ビジネスマンションの通りをウロウロ。数分歩いてたどり着いたのは、少し経年劣化が進んだ「ザ・事務所」といった趣きの雑居ビル。覗いてみると、ビル入り口には確かに「インフラ商店」とテナント一覧に名前がありました。ホームページで見ているけど、実際に事務所が確認できるとホッとします。

近所の焼き鳥屋さんから、おいしそうな匂いがします。

大きく息を吐きながら、ビルを見上げる私。営業時代、初回訪問で先方の事務所探すことがよくあったっけ。何回も相手の入っているビルの前を通り過ぎて、相手が心配して迎えに来てくれたこともあったなあ・・・。

「さて、どんな人が出てくるのやら・・・」

途中で買ったペットボトルのコーヒーを一口。どんなに訪問経験があっても、やはり初訪問はドキドキします。しかも相手の事務所ですし。

頃合いを見計らってビルに入って事務所のドアチャイムを鳴らします。

ピーンポーン・・・ガチャリ。

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出てきたのは中肉中背の男性。山田さんのようです。少し切れ上がった目が「切れ者」といった印象を醸し出します。

一瞬「ダレダ!?」という表情でドアを開け、私を確認すると、ホッとした様子で、ニコリとして一礼。思わずペコリとおじぎを返す私。

「塚田さんですね。お待ちしていました。片付いていない事務所ですが、どうぞ、こちらへ」

■さて、何を話そう???

インフラ商店さんの事務所に通されて、フロアの隅にある接客スペースでお話しを聞くことになりました。いただいた名刺によると、山田さんは「経営戦略室」の室長さんで、社長さん直下でM&Aの計画・立案などをされているのだそうです。一通りの会社説明を受けてみるとデザイン事務所だけでなく、建築関係に強い会社さんのようです。

「さて、塚田さん。あのソフト、売れますか?」
「うーん、正直、そのままは難しいと思いますよ」

樋口社長とお話したことをなぞりながら、感じたこと、私の見立てをお伝えしました。

腕組みする山田さん。お互い押し黙ってしまいました。

続く


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