手洗い

喜劇王の悲劇が遠くなっていくほど
また笑えるようになったけど
緩んでいるものもある
外した布マスクをすぐに洗っていたのに
翌日になったりする
そんなぼくが
何かを守り大切にせよと叫ぶ資格があるだろうか
掛け替えのない命と
掛け替えのない血と汗によって稼がれた金の使い道を
比較するまでもなくだめだと
引き合いに出すことに何か意味は生まれるだろうか

名声の有無に関わらず
命はひとつで1円足りないだけで救われない
財布の50円玉を数えて
半額の弁当を焼き肉から野菜炒め弁当にする
サボりがちになった布マスクをすぐに洗う習慣を
再び取り戻さなくてはと思う
きっと
あの喜劇王を好きじゃなかった人もいるだろうけど
大好きではないまでも
好きだったから
あんな悲しい思いをしないためにも
させないためにも
なるだけ小さな努力をまた「ちゃんと」したいと思う

ケーブルテレビに流れる
屈託のない笑顔が眩しくて滲んでいく
もう新しい笑い声をきくことはできないんだなぁと
帰ってすぐに布マスクを洗いながら考える


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