見出し画像

月列車

広がっていく心の穴が痛いから
寒いところへ行こうと思った

どうせ行くのなら遠くがいいと
ネットで予約して月列車の切符を買った

出発の前から駅弁屋さんで迷いに迷って
ヤケ食いのために2つ買うことを決めたけど

発射ベルの音に驚いて同じものを買ってしまった

発射ベルのロスタイム
駆け上がって飛び乗ったら
注意アナウンスが流れてきて思わず赤面をした

仕方ないじゃない 心の中で叫んで
表情を隠して指定席に向かう

正面に座っていた人は
とても不機嫌そうに私を見ていて
目があった瞬間に目を逸らした

「どうぞ」
「どうも」

差し出したお弁当を受け取った彼に
私は恥ずかしさを隠すために八つ当たりした

マシンガンのように話を投げかけ
いさめる声を浴び続けた

沈黙が怖かったし
何となく嫌われたくなかった

旅は道ずれって言うし別に良いよねって
困った顔をした彼の顔を見つめながら
そっと呟いたら聞き返されたけど
なんでもないですって満面の笑みを浮かべた

もしよろしければサポートをお願いいたします