解体中の一軒家
目の付く場所に赤い蓋の大きな瓶
よく見ればそれは梅干しの瓶
大量に漬けられた年代物の瓶
オレンジ色の液体のなかに漬かったそれにだけ
大量の梅干しが入っている
忘れられたのか
家主の家族の忘れ形見なのか
誰かだけではない人生まで漬かっているような瓶は
廃棄物扱いになるんだろう
大工さんが持って帰るわけがないし
骨組みだけの一軒家の玄関だったであろう場所に
ひと瓶だけ大量の梅干しが入っていて
その他はからっぽの瓶群が並んでいる
誰の口にも入らない梅干しのしょっぱさが
擬似的に口の中に広がってゆく
#自由詩 #詩 #うめぼし