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【エッセイ】もう月が綺麗ですよ

 1月の月は「地球から最も遠い月」と言われていますが、
 それに向かって「綺麗だね」と言えば、私の思いは最大限届かずに済むのでしょうか。


 満月の夜は月を眺めているのですが、今夜はどんよりと、しかしほんのり明るい雲が空を覆っているため、それを見ることはできません。雪が降る前の空気は肌を刺すようで、長く居れば温まった体も芯から冷えてしまいます。じわじわと温もりを奪われる感覚は、ただ単に寒さで凍えているよりも、心地よいと感じてしまいます。


 冬の夜空は高いことを記憶しています。
 ぐっと冷えた空気は、空をぐんと押し上げます。空に手を伸ばしたくなるのは、手を伸ばしてもけして、けして届くことないと分かっているからでしょうか。

 だからきっと、今夜の月も遠いのでしょう。
 冷たい空気が月を押し上げてしまう。冬はただでさえ人肌が恋しいというのに、どうして月まで遠のいてしまうのでしょうか。


 一体いつから私が月に惹かれ出したのか、今ではもうきっかけも思い出せません。いつの間にか月を見つめ、空を見上げていました。誰かが月を好きだと言ったから、そんな理由であれば幾分か素敵だったでしょう。


 今夜は、温かくして眠ろうと思います。
 ところで、朝に見える白い月も好きです。かの曲の歌詞にあるような。

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