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【エッセイ】彼が私を呼んでいるのかしら

自分が死んでしまう夢を何度か見たことがあります。

けれど、いつも死ぬ直前で目を覚ましてしまうものだから、
本当に死んでしまったことはありません。



そんな夢を見た後の胸の高鳴りは特別で、
恋をした時とも、驚いた時とも、怖かった時とも、
どんな時とも似ても似つかないものに支配されました。


大きく鼓動すればいいのに、
痛みを伴えばいいのに、
そうすれば感じたそれを何かに例えることができたのに。

私は、感じたものを誰かに伝えることができず、
ずっと、そうずっと。
違和感のようなものを抱え続けていました。


夢を見ずとも私を支配する胸が何を思っているのか。
問いかけても返してくれないのが自分の心というものでした。

静かに、私に何かを伝えようとする胸は、
大きなものを抱えているようでした。

それは大きいだけで、重くはなく、
空気のように軽いもの。

それが大きく膨らむものだから、
胸を圧迫し、私に届く位置に達してしまったのでしょう。

本当は伝えるべきものではなかったのかもしれません。


死する夢を見た時だけに感じる琴線に、
現実に触れられるものがあるのでしょうか。


きっと、死する夢と同等のものでなければ、いけませんね。
だから私は。




命を落とす直前に覚めた夢。
そんな時に感じる胸の高鳴りに、死期を感じています。


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