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第4話 英語会話の灯台下暗し

セクション1 英語で会話できますか?

英語が喋べれたらいいなというイメージをします。そんな漠然とした憧れを誰もが持っているんじゃないでしょうか。

ところで皆さんはこんな小ばなしを聞いたことがありませんか?旅行中の外国人に道を聞かれます。日本人が手を横に振りながら返えす言葉は

”No No! I cant’ speak English!”

日本人が英語に対して抱く「喋れない意識」はすごいですね。それが見方を変えると、喋れるひとへの羨望の眼差しに変わるのでしょう。ふと英語力と会話コミュニケーションの関係を考えてみました。日本人を3つのタイプに分けたら面白そうだなと。

ですがまず、<セクション2>から実体験の話をしてみたいと思います。

セクション2 バイト先での外国人客

僕は英語が喋れますし、周りからは喋れるひと認定を受けます。以前にアルバイト店員をしていた時の経験の話をします。

梅田にあるドラッグストアで接客とレジ業務が主でした。梅田とはいわゆるキタエリアで大都会「大阪駅」があるところですね。外国人も来店する場所だったので商品説明をするだけでなく道案内も欠かせません。ホスピタリティの精神です。

#004-01 ドラッグストア前の外人

薬について相談したそうな外国人が来ます。そんな時は白衣組の店員と外国人客の間に入って通訳をします。今度は店先で地図を持った外国人がいます。話かけられた同僚が困っているので、代わって気さくに道のりを説明します。その度に「さすがだね」と頼ってもらえていました。

やがて自分も白衣組として直接お客さんと薬の相談に対応していましたが…。英語ペラペラに見えていた僕の英語をテープに録音していたら、皆びっくりしていた筈です。

<セクション3>ではそんなやり取りのコツを解禁します。誰でもできますよ。

セクション3 英語でクスリ接客

来店されたお客さんが、どうも風邪っぽいと相談されるケースで説明しますね。だいたい聞くことは決まっていて身体の上の方から、頭痛、鼻水、咳、喉の痛み、それと熱の有無です。順番にheadache; runny nose; cough; sore throat; feverですが単語を知らなくても大丈夫です!頭を抱えてうつむき顔を歪める。鼻を触りながらすする。口をおさえて小さく咳の音を立てる。喉を触りながら辛そうな表情をする。ジェスチャーを使ったり、Yes?/ No? と質問口調でしゃくります。その都度お客さんの反応で確認しあったらお互いに通じてます。でも僕の場合は頭を抱えながら”Headache?”って聞いていました。1単語でも知っているとダメ押しでもう完璧です。

#004-02 主訴ジェスチャー

※関係者に誤解なきように念押しします。診断行為は業務として許されていません。OTC薬の箱に表示がある効果効能に則して、商品選択を手助けするのが白衣組の仕事になります。パブロンの箱の裏側とかを見て下さい。

<セクション4>では道案内をします。

セクション4 英語で道案内

Go straight, You see escalator. Go up, and it’s Osaka station! (↗↘↗↘)

イントネーション含めこれで完璧です

簡単すぎると反論必至でしょう。では次はこんな道のりはどうですか。

Go straight. You see 7eleven. Turn left. Go straight. You see second light. Turn right, and cross the street. Go straight again, and it’s on your right. Very easy!

思い返してください。普段も日本人相手にはこんな程度の日本語じゃないですか。外国人に対しては抑揚のテンションと身振り手振りを1.5培にしましょう。手をくねくねさせているとハイになれます。

#004-03 セブイレ地図

<セクション5>で英語会話のことをまじめに考えましょう。

(おまけ。)
Go straight and you’ll see a 7eleven on your left. Keep going on and you’ll reach a corner in about 50 meters. Turn at the corner left and go straight again until you’re at the second traffic light. Turn right and cross the street and keep going up a little. It will be on your right. You can’t miss it!

決め顔のあなたの前にいる外国人の表情をよくよく見てみましょう。半ば過ぎから目が宙を泳いでいませんでしたか?

セクション5 コミュニケーションの組成

なぜこんなに簡単なのか。適当を言って騙すなと不満が噴出しそうですが

対面コミュニケーションは言語と非言語が3対7の割合らしいです。非言語のほうが情報量として多いです。例えば完璧なコミュニケーションが100点だとしましょう。英語力と言葉に乗らない力の配点が30点と70点になります。それでは能面でAIのように喋るひとのコミュ力は30点が上限です。一方で声色・抑揚・表情・手振りで70点までもぎ取れるポテンシャルがあります。

#004-04 コミュ配点

<セクション1>では日本人を3つのタイプに分けたいと言いました。実際に<セクション6>で見てみましょう。

セクション6 英語レベル3分類①

(タイプ1)
英語が全くできない/話せなくて当然と思っている日本人です。周りにできそうな日本人を見つけて丸投げします。それでも誰もいないと確認したら英語以外で何とか対応します。だから70点満点の勝負です

-大阪のおばちゃんのイメージです。はいごめんなさい。

(タイプ2)
英語が多少できる日本人です。英会話学校の成果を少しでも発揮したいので言葉に詰まって淀みながら、英語で説明を試みます。英語の配点30点はそれほど高得点できずに、非言語の70点は疎かになりがちです。力の配分の要領がいまいちだと思います。

-頭の中で英語の文をコネコネしながら、目の前の外国人が薄っすら見えています。かなり難しいマルチタスクですよ、これ。

#004-05 タイプ1と2の得点

<セクション7>では引き続きタイプ3の日本人です。

セクション7 英語レベル3分類②

(タイプ3)
英語ができると言い切れる日本人です。ここが意外に思うひとが多いと思います。英語に長けているので、もちろん英語配点から満点に近い得点ができる力があります。確かにその気になれば出来るけどもしない。というのも、30点満点ぎりぎりを取ろうとすると残りの70点で失点が目立つことを意識/無意識的に知っているからです。英語に明るいが故に鳥瞰して高得点できます。

-言語が障壁にならず気持ちの余裕があります。目の前の外国人が1番クリアに見えていて、そもそも『外国』人という意識がありません。同じ空間で気持ちを交換するし同じ空気を吸っている。本当は言語が介在する必要性なんてなかった。コミュニケーションはやっぱり生き生きとしたライブ感ですね。

#004-06 タイプ3つの得点

タイプ2のひとが中間層なのにもかかわらず、一番損をしてしまっています。英語に対する真面目さと憧れがあるから意識を高く持っています。ただ「英語ができるとコミュニケーションが不自由なくできるようになる」というのは神話なので冷静になればいいのにと思いました。

ところで身も蓋もないことを言います。<セクション4>で道案内のような話をしましたが、僕だったら凄く近い場所でもない限り地図アプリを使います。スマホを持っていない外国人はほぼいないです。アプリに入力する住所を教えてあげれば口での説明よりも確実に到着地まで案内してくれます。更にそもそも論になりますが日本にいる外国人は英米人だけではないので、何でもかんでも英語で喋ればいいわけではありません。

<セクション8>では、対面コミュニケーション以外の英語全般に触れます。

セクション8 英語自体ができるということ

ここまでの話だと僕が「英語なんてできなくていい」と言っていると勘違いされそうです。例えば巷では、英語が喋れるようになりたければとにかく留学しろとか、海外生活が長いと勝手に英語が身につくとかが、まことしやかに言われています。たしかに英語が身に付きやすいという面があるのは完全には否定しません。しかし僕は穿った見方をしています。

もし「海外に行ってしまえば英語が身につく」の類の話が事実なら、おそらくそれは言葉が通じないひっ迫感のなかで、なりふり構っていられないからだと思います。当然の成り行きとして、度胸が身に付きコミュニケーションが取れることでしょう。

そうは言っても、留学などは度胸だけで何とかなる滞在期間ではありません。徐々にコミュニケーションの幅が広がっていき、英語も覚えていきます。そうして身につく英語は確かにあります。しかしその正体は本当に必要なフレーズだけが身に付いたものです。つまり会得したのは、ふるいにかけた最後に残ったわずかな英語であり、英語の幅広い総合力が身に付くはずはありません。


要するに「英語力」と「コミュニケーション力」を区別しましょう!ということです。

純粋に英語力を伸ばしたいなら僕は断然、座学派です。国内外を問わず、努力なしに身に付きません。英語はできればできるほどいいし絶対に役に立ちます。

英語でリーディング、ライティング、リスニング、アーギュメントするような場面がやって来ます。そして残念ながら、これらには非言語コミュニケーションが無力です。それは実際の会話に1番近そうなZoomでも同じことで、ジェスチャーとか場の空気感が制限されるのはキツイですよ。

ついつい語り口が熱くなってしまいましたが、クールダウンして<セクション9>で会話コミュニケーションの話に戻ります。

セクション9 英会話と何だったのか

あらためてフラットに問いかけます。

あなたは英会話という言葉からなにが連想されますか。街なかで外国人と談笑してる姿に憧れているのなら、それは少しの英語力と度胸と、何よりも空気を楽しむことだと思います。

#004-07 街なかで談笑


実はここまでの文章で「英会話」という単語は3回しか使っていません。議論するのにどうしても代替できない場合だけです。気になっていた人もいたかもしれないですね。今のいままで「会話」という単語と明確に区別してきました。個人的には「英会話」という言葉はどうかと思います。変な幻想をいだかせる恐れがあります。

「英語」でする「会話」なので、「英語会話」です。

第4話 英語会話の灯台下暗し

おわり//

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