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電子契約に関わる法律まとめ(不動産業界)

こんにちは、坂野です。
経済学部でしたが、法学も受講しておいて本当によかったと最近感じています。

というのも、電子契約、やたら法律の話題が出てくるんです。(当たり前ですが)
今回は不動産業界の電子契約に関わる法律を一挙にまとめます。それぞれに注目した記事はたくさんあるのですが、まとまったものって意外とないんですよね。
「この契約は電子化できるの?」
「信頼できる電子契約サービスって?」
こういった疑問に対して、気にするべき法律は以下の通りです。

「民法」の大原則:契約方式の自由

そもそも電子契約は正当な契約なのか。これは、完全に正当です。
現行の民法では、契約の締結の仕方は、原則自由とされています。(民法522条2項)
すなわち口頭であっても、eメールであっても契約は成立します。当然、電子契約でも問題ありません。
ただしこの原則に対する例外として、
①書面化が必須と定められているもの
②書面の電子化に相手方の承諾が必要なもの
がある、ということなのです。

参照:民法 | e-Gov法令検索

「宅建業法」:例外の代表格

そしてその例外の代表格が、ご存知、宅建業法です。
・34条:売買の媒介契約に関して、書面交付を求めています。
・35条:いわゆる重要事項説明書に関して、宅建士の記名・押印と、書面交付を求めています。
・37条:賃貸借契約・売買契約の内容を記した書類に関して、宅建士の記名・押印と、書面交付を求めています。この書類を37条書面と呼びますが、往々にして契約書そのもので代替されます。

注意点として、いずれも書面での交付が定められているだけなので、契約自体は電子契約で問題ありません。(契約後に印刷して、契約者にお渡しすればいい)
また、適用範囲は宅建業法のカバー範囲に限られているので、そもそも宅建業法の範囲外である、駐車場やサブリース物件の賃貸借契約などは、電子契約で何の問題もありません

参照:宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索

※そのほか契約方式に制限を加える法律(不動産業界)

そのほか業態によっては影響を受ける法律があります。
・マンション管理適正化法
・建設業法
・下請法
・不動産特定共同事業法
それぞれ、一部の契約では、契約書面の電子交付に相手方の承諾が必要とされています。

なお、マンション管理適正化法については2020年6月に公布された改正法で、要件が緩和されたばかりなので注意が必要です。施行される2022年までは、書面交付を定めています。

「電子署名法」:証拠として使える電子契約を定義

電子署名法は、「法的効力のある電子契約はどんなものなのか」を定めた法律です。
つまり、これを満たしていない電子契約は、裁判になっても契約として認められないということです。

ざっくりまとめてしまうと、
・第2条:本人が押したことと、改変されていないことがわかるものであれば「電子署名」と認められます。
・第3条:電子契約は、本人しかできない電子署名がされてれば有効とされます。

なお、第3条の「本人しかできない」の基準はケースバイケースで、個々の裁判で争われるものです。少し電子契約を調べたことのある方は、「身元確認」や「認証局による認証」などが必要だという話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは必要要件ではないと、2020年11月に総務省・法務省・経済産業省が回答しています。

参照:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索
参照:「電子署名法第3条Q&A」の読み方とポイント—固有性要件と身元確認・2要素認証の要否 - サインのリ・デザイン

「電子帳簿保存法」:紙書類を保存せずに税務対応するための法律

電子帳簿保存法は、「帳票を電子データで保管する際に守らなければいけないこと」を定めた法律です。
対象は、国税関係(所得税、法人税など)の帳簿・書類で、要するに決算書や契約書の類です。これらの書類は、法律で7年間の保存が義務付けられていますが、電子帳簿保存法に従う限り、保存は電子ファイルでも構わないということになります。

逆に言うと、契約書などを電子ファイルだけで保管しようとする場合にのみ気にするべき法律で、契約を電子契約で行っても、契約後にそれを印刷して保管する場合は、気にしなくていい法律です
現実問題として、特に一部電子契約が不可能な不動産業界では、契約書をすべて電子ファイルで保管するのは難しいと思うので、保管自体はこれまで通り紙で行って頂くのがいいかと思います。

参照:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 | e-Gov法令検索
参照:e-文書法及び電子帳簿保存法 要件改正への対応 | 生産性向上Lab

「e-文書法」:電子帳簿保存法の少し広いバージョン

e-文書法は、電子帳簿保存法の範囲が、株主総会議事録や取締役会議事録まで拡張された法律です。これらの書類を電子ファイルだけで保管する場合には、守るべき法律ですが、やはり電子帳簿保存法と同様、紙保管と電子ファイル保管が混ざるのは管理しづらいと思うので、あまり気にする必要はないと思われます

参照:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 | e-Gov法令検索
参照:e-文書法とは?電子帳簿保存法との違い、対象文書、要件、メリットを解説 - 起業ログ


以上、各法律についてざっくりとまとめました。電子契約の導入を検討される際は、まずこれらの法律の存在を知って、詳しい内容は個別に確認を行って頂けますと幸いです。


2021/7/25追記
本業エンジニアなのですが、下記の電子契約サービスをテストリリースしました。ご参考にしていただけたら幸いです。


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