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不動産業界は電子契約できる?できない?結局どっち?

こんにちは、坂野です。
大学で経済学部に進む際、数学使うけど大丈夫?と心配されるほど文系でしたが、気づいたら不動産テックのエンジニアをやっています。
今はまさに流行りのど真ん中、電子契約サービスを開発中です

ところで不動産業界は、契約の対象が高額かつ重要なため、一部で電子契約が禁止されているという、当事者にとってはややこしい業界です。結局、不動産会社は電子契約が使えるのか、使えないのか。今日はそれをまとめます。

2021年3月1日時点の結論としては、電子契約は「ほぼ可能」です。

定期借家契約は電子契約できない

不動産業界で唯一電子契約できないのが、定期借地契約定期借家契約です。借地借家法22条、38条1項で明確に定められています。

参照:借地借家法 | e-Gov法令検索

賃貸業界:賃貸借契約は要注意

建物・土地の賃貸借契約は注意が必要です。
契約自体は電子化が認められていますが、一部書類は、宅建士の記名・押印と、書面での交付を行わなければいけません
対象となる書類は、重要事項説明書(宅建業法35条)と、37条書面(宅建業法37条)です。37条書面は賃貸借契約書で代替している会社が多いと思います。
そのため、まず重説は重要事項説明書を印刷し、宅建士の記名・押印後に行うことになります。そして契約については、電子契約で可能ですが、電子署名された賃貸借契約書は印刷して、宅建士が記名・押印し、契約者にお渡しする必要がある、という認識で問題ありません。

ただし、上記の内容はあくまで宅建業法で定められたものです。そのため、宅建業法の範囲外の賃貸借契約では、気にする必要がありません
サブリース物件の賃貸借契約や、駐車場の賃貸借契約など、貸主・借主間の直接契約や、宅建業法の範囲外の物件の契約は、完全に電子化が可能です。

参照:宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索

売買業界:媒介契約と売買契約は要注意

賃貸と同様、重要事項説明書売買契約書は、宅建士の記名・押印と、書面での交付が必要です。契約の流れについても賃貸借契約と同じです。

売買についてはもうひとつ、売買の媒介契約も、書面での交付が必要(宅建業法34条)なので、注意が必要です。

そのほか留意した方がいい契約

そのほか業態によっては、下記の契約は制限がかかるので留意が必要です。
・マンション管理委託契約(電子交付には相手方の承諾が必要。マンション管理適正化法73条)
・建設請負契約(電子交付には相手方の承諾が必要。建設業法19条3項、施行規則13条の4)
・下請会社に対する受発注書面(電子交付には相手方の承諾が必要。下請法3条2項)
・不動産特定共同事業契約(電子交付には相手方の承諾が必要。不動産特定共同事業法24条3項、25条3項)

特にマンション管理委託契約については、2020年6月に公布された改正法で、承諾さえあれば電子交付可能、になったばかりなので注意です。施行される2022年までは、書面交付が必要となります。

参照:マンションの管理の適正化の推進に関する法律 | e-Gov法令検索
参照:建設業法 | e-Gov法令検索
参照:建設業法施行規則 | e-Gov法令検索
参照:下請法 | e-Gov法令検索
参照:不動産特定共同事業法 | e-Gov法令検索

それ以外の契約は電子契約可能

ここまで制限がかかる契約について紹介してきましたが、逆にここに挙げていない契約は、電子契約が可能ということになります。更新契約や、清掃など関連業者との契約、雇用契約などは、電子契約が可能です。


以上、不動産業界における電子契約の可否を明確にしました。案外電子化できる範囲も広いのではないでしょうか。できる範囲から電子化を初めて、電子契約解禁に備えるのもよいかと思います。


2021/7/25追記
本業エンジニアなのですが、下記の電子契約サービスをテストリリースしました。ご参考にしていただけたら幸いです。


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