笑う門には本当に福が来るのか

笑う門には本当に福が来るのだろうか。たとえば、幸せなふりをして無理やり笑い、楽しそうに踊ったとする。これで実際に幸せを感じるなんてことがあるのだろうか。

それがわかるある面白い実験がある。私たちの心がどのくらい体の動きに作用されるか調べた実験だ。被験者たちは頷きながら(同意する行為)、あるいは首をふりながら(否定する行為)、ある問題について「説得力のあるメッセージ」「説得力のないメッセージ」を聴かされる。もちろん、被験者は説得力のあるメッセージに説得される。そして、頷きながら聴くと、首を振りながら聴く場合と比べてより強く説得された。頷くという同意する行為が、説得をより強いものにしたのだ。

一方、説得力がないメッセージを聴いた場合だ。説得力がないメッセージの場合も同じように、頷き組の方が首振り組より強く説得されたのだろうか。

結果は違った。説得力がないメッセージを聴いた場合、頷き組は首振り組とくらべ、むしろ説得されなかった。

なぜ結果は逆になったのか。

たとえば、明らかに説得力がない主張を聴きながら盛んに頷いている人を見たとしよう。その人が何を考えているか、あなたはどう解釈する?その人が同意しているとは思えないはずだ。むしろ、小ばかにしているとさえ解釈するかもしれない。そう、その人がどんな感情を抱いているかを解釈するのだ。これは自分にも当てはまる。説得力のないメッセージを聴いている時に頷いていると、わたしはこのメッセージを「実に説得力のないメッセージだ」と小ばかにしていると解釈するのだ。

脳は体からのシグナルを解釈する。無理やりに笑ったとしよう。なるほど、脳は笑顔を幸せと解釈し、少し幸せになるかもしれない。だが大事なことは、やり過ぎると逆効果になるかもしれない、ということだ。無理やり笑って幸せを演じている自分に気づくと、幸せではないから無理やり笑っていると気づいてしまうと、不幸せがより一層強調されてしまうのだ。

参考図書
【心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学
 ニック・チェイター(著),高橋達二(著, 翻訳),長谷川珈(著, 翻訳)】

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