コトリ会議で茶話会

(実際はお茶お菓子等は出してません)

 金沢市民芸術村の劇評講座で出会った友人たちと、お芝居の感想を話し合いました。劇評は書けなくてもおしゃべりはできる。今回は試しに録音して文字に起こしてみました。劇評を書くより時間がかかったので第2回はあるかどうか分かりません。

(2020年8月22日13時~15時、金沢市民芸術村会議室1にて。当日は3名が集まりました)


コトリ会議『晴れがわ』あらすじ
地球から結婚式を行うために月にやってきた雨子とアキラ。結婚式の前日に雨子とアキラは死ぬための予行練習をしていた。本当に死ぬのは明日だ。だが、空気を供給するホースが戻らなくなり、膜がはがれて雨子は死んでしまう。生まれ変わって二人の羊人間になった雨子は、結婚式の参列のため月に来ていた兄弟や友人の前に現れる。

N:ざっくり感想を言いましょうか。
N:先に見た友人たちがモヤモヤしたと感想を言っていたので構えていたんだけど、私は結構好きな世界でした。ちょっとSFっぽいのが割と好きで、答えがどこにあるのか明確ではないものも好きです。これってどういうこと?って思った瞬間は何箇所かあったけど、もともとが突拍子もないところから始まっていたので、まあそういうことなんだろうとすんなり受け入れることができて、特に違和感もなく見てしまいました。ラストはセリフにつられて上からぶら下がっている地球を見上げて、その向こうに見える星空を眺めていたらいつの間にか終わっていた感じでした。これが見終わった直後に感じた感想です。
その後は徳永京子さん(演劇ジャーナリスト)のアフタートークを聞き、別の人からもとてもいい感想を聞いてしまったので、そっちに引きずられた印象が今残っている状態です。
H:コロナウイルス感染防止の自粛中に目にした演劇人の発言についていろいろ思うところがあって。見ていて非常に疲れるんですよ。でも今回のコトリ会議の劇はそれを緩和するような感じがしました。純粋さを感じられたんですよ。評価とか関係なく好きでやっている感じがして、激しい主張もなさそうな気がして、すごくいい劇団だなぁと思いました。受付で検温をしていた男の人(O:制作の人かな?)もいい感じで、コロナ感染にたいする対策など全体的に素直な感じで好感の持てる劇団だなと思いました。
O:私は、芝居の雰囲気は結構好きです。雰囲気は好きだけど特に強い主張もあるわけじゃないからつかみどころがないというか、淡々と見て淡々と終わって。たぶん劇団側としては淡々とした中に何かをそれぞれに感じて欲しいんだろうけど、私は淡々のまま終わった感じがしました。でもだから劇評を書くために無理にこれはこういうことを表現していますよと言うのは違う気がしています。テーマ性みたいのがないわけじゃないけど、強い主張をしなくてなんとなく漂わせているだけだから、これはこういうものですよという決め付けができない。言語表現し難いから劇評を書くのは難しい。そういうのをやってるっていうのはすごいなと思ってみてました。
N:だから私もこの感じ好きだなぁという感じでぽわーって見ちゃったのかな。
O:そうそう。あの静かな感じを持続しているのはすごいと思う。
N:70分は短かったね。もうちょっとあっても良かったかなという心地よさがあった。

O:もうちょっと長くしようと思えばできたと思うんですよ。でもあそこで終わったのがよかった。
H:アフタートークは21世紀美術館の島館長でした。島館長が「晴れがわ」というタイトルの思いを聞いていました。コトリ会議の「コトリ」はマグカップを置く音らしいです。例えば恋人をなくした人に言葉を掛けたいけど掛けられないなという時に、マグカップを用意してこれから話そうかという感じでその人の前に「コトリ」と置く気遣いの音。
N:Hさん自身の感想はどうですか?
H:私はドラマで坂元裕二脚本とか結構好きで。結構ハードな内容で、独特のしゃべり方をするのが特徴なんです。コトリ会議にも同じしゃべり方を感じて同じようにあこがれてるのかなと思った。『それでも、生きてゆく』とかそういう雰囲気を感じました。傷つきやすい若者とか。各役者も好きな役者の影響を受けてるのかな。夢雨子は満島ひかりとか松たか子の影響を受けてると思いました。
N:私今回すべてを何の疑問も持たずに受け入れてしまって、雨子が二人になったところとかぜんぜん不思議に思わなかった。実は夢雨子と土雨子の区別がついてない。見ているときは話の流れで分かったけど。
O:私も。目が悪いので薄暗くて良く見えなかったのもあるけど。
H:徳永さんの話はどうでしたか?
N:徳永さんはコトリ会議の作品を何本も見てるのでいきなり答えを言われた感じがしました。山本さんは「生と死の境」を意識して書くことが多いらしい。雨子はこの人から見た雨子と別の人から見た雨子は違うから二人に分かれたと。「がわ」とか「膜」と言うのは彼岸と此岸(しがん)、生死の境界線をあらわしているという話をしていました。
徳永さんの話は繊細であればあるほど言葉を重ねるのでメモ仕切れませんでした。
家に帰ってチラシを眺めながら山本さんにとっての「晴れがわ」ってどっちだろと改めて思ったんだけど、なんとなく「彼岸」側が晴れって気がしない?
H:月に結婚式をしにきて家族も来てるのに、結婚して死ぬってどういうことだろう。


O:「死ぬ」というのは二人だけの話で、家族的には結婚式をお祝いしに来ていたのではないかなと思った。死ぬって言うのはこの世界で良しとされているのかどうか分からないけど、その二人にとっては良いことだったと思う。
N:そういう習慣がある世界だと思ってた。
H:結婚したら死ぬのが美徳みたいな世界?
O:かもしれない。
H:Mさん(この日は都合により欠席)はどんな感想だったのかな。
O:Mさんはもやもやしてて、でも羊だから羊水かなといってた。
H:アフタートークで、劇団もそこまで考えてなかったとかそういうこと言ったりするじゃないですか。
O:Mさんも、見ているほうは疑問に思っても劇団はそこまで重要じゃないことがあるんじゃないかって言ってた。
以前みた作品も生と死を描いていて、テーマというほど掲げていないけど根底に流れるものとしてあるんだなと思った。でも「生きるぞ」とか「死んじゃダメだ」とか絶対言わなくて、そういった暑苦しくなさが特徴なんだろう。


※録音は当日集まってから提案したもので、参加者は発信する準備をしていませんでした。出席できなかった友人たちには好評で、SNSにしては長めの感想を投稿してくれて、グループラインはコトリ会議で盛り上がりました。ただ「芝居を見た人には面白いかも」という指摘もされました。内輪で受けてもそうじゃない方々には伝わらない文章になっていることは承知しております。今後の反省点です。

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金沢市21世紀美術館 アンド21(芸術交流共催事業)
コトリ会議2020年ツアー公演『晴れがわ』金沢公演

トークセッションゲスト
8月14日(金) 19:30 黒澤伸(金沢市民芸術村 総合ディレクター)
8月15日(土) 15:00 井口時次郎(LLP技屋・劇団ドリームチョップ・アンド21選考委員)

19:00 島敦彦(金沢21世紀美術館 館長・アンド21選考委員)
8月16日(日) 11:00 金沢21世紀美術館のスタッフ
15:00 徳永京子(演劇ジャーナリスト・アンド21選考委員)

https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=146&d=67


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