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2022年上半期の新譜10選


6月に梅雨明け→酷暑という強烈なフィナーレを迎えた2022年上半期。

様々な出来事が起こったこの半年によく聴いた新譜10枚を紹介します(リリース順)。



・Manuel Linhares「Suspenso」

ポルトガルのSSW、Manuel Linharesの音楽に出逢えたのは上半期の音楽関連で自分としては最大のトピックスかもしれません。

最初ミナスの音楽かと思ってしまいましたが、それもそのはずプロデューサーはAntonio Loureiro。ポルトガルのラージアンサンブルCoreto Porta Jazzを迎え、大自然を想起させるMPB的なスケール感やアルゼンチンのフォルクローレ的な純朴さ、そこに洗練されたジャズのハイファイ感が絶妙に融合されたエモxエモxエモなサウンドが展開されています。

Manuel Linhares自身はポルトガルで活動するジャズ出身のSSWですが、ポルトガル語で歌う彼の声はどこかミルトン・ナシメントを彷彿させる侘び寂びの効いたミナス声(造語)です。そもそもブラジル音楽はポルトガル語ですからね。相性は良いのでしょう。

Antonio Loureiroの要素を強く感じさせる音楽ではありますが、本作品の収録曲のクレジットを確認したらほぼManuel Linharesの自作曲のようです。素晴らしい作品を生み出すアーティストの音楽に今年も出逢うことができてうれしいです。



・MONDO GROSSO「BIG WORLD」

以前の作品で共演歴のある満島ひかり、齋藤飛鳥、中島美嘉、RHYMEに加えてermhoi、どんぐりず、CHAI、suis、中納良恵、田島貴男、PORINといった現行の日本のポピュラー音楽をリードするヴォーカリストを招いてそれぞれの魅力を存分に引き出した楽曲が勢揃い。

素晴らしいアルバムをまたしてもMONDO GROSSOが届けてくれました。


過去記事で感想を書いています。



・Moonchild「Starfruit」

R&Bの濃厚な要素を極限まで濾し取った、透け感溢れるドリーミーなネオソウルに更に磨きをかけたMoonchildの最新作。

今回は多数のゲストミュージシャンが参加していますが、彼らの持ち味は薄まるどころか更に彼ららしさを高め、とにかく心地良さ抜群のアルバムです。



・笹久保伸「Venus Penguin」

サブスク無いのでジャケ写のみ載せます

フランス出身の個性派ジャズギタリストNoël Akchoté、お馴染みAntonio Loureiro、ミナス出身の活躍著しいベーシストFrederico Heliodoro、Sam GendelのバンドIngaのギタリストAdam Ratnerという4名の凄腕アーティスト各々とのデュオ曲とソロ1曲の計5曲から構成される本作品。

郷愁の念を誘いつつ何処か神秘的でもあり。とにかくひたすらに美しいのです。

この究極にアコースティックな音楽が、遠く離れた海外アーティストとリモートのやり取りで対面することなく録音されたというギャップがまた凄いですね。



・Brad Mehldau「Jacob’s Ladder」

叙情的なピアノが魅力のジャズピアニストBrad Mehldauによる、RushやGentle Giant、Peripheryなどプログレッシブロックバンドの名曲をモチーフにした新たな試みがこちらの作品です。

プログレッシブ・ロックの有する構成力とクラシカルな旋律はゴシック調の格調高い音楽を演出し、そこにジャズのリハーモナイズを融合させて何とも神々しい天空の音楽が成立しました。


こちらも過去記事で感想を書いてます。



・Whatever The Weather「Whatever The Weather」

ビートメイカーLoraine Jamesが別名義でリリースした本作品の各曲のタイトルは全て温度です。「25℃」「0℃」「17℃」…という無機質な数字からは寒暖のみならず、風、光、湿度、その他五感が味わうありとあらゆる感覚が想起され、それらを音で表現するという興味深い試みが見事に具現化されています。

多くはビートレスで、感覚的な揺らぎをそのまま緩やかな音調の変化としたような、身体に溶け込むサウンドです。その日の気温に近い曲を流したくなりますね。



・Tomberlin「I don’t know who needs to hear this…」

広い空間でただ一人静かに佇む己の心の奥底で響いているような錯覚に陥る、どこまでも静寂で清廉な音楽。

孤独感に耐えられないとか、何かに絶望したとか、或いはただただ疲労困憊したとか、そんな時に隣に居てくれる音楽のような気がします。



・High John, Sandro Sáez「Piano is Here」

ドイツのビートメイカーHigh JohnとピアニストSandro Sáezによる本作はLo-fi Hip Hop的なピアノジャズ。
弾きすぎず、凝りすぎず、緩すぎず、色々と絶妙で結構リピしてます。



・Wonk「artless」

自然体でオーガニックな、休日の朝がよく似合うWonkの新作。
本当に素敵な作品です。大好き。



・Angelique Kidjo & Ibrahim Maalouf「Queen Of Sheba」

世界に名の通ったキャリアと実力を有するベナン出身のヴォーカリスト、アンジェリーク・キジョーと、微分音の旋律を自在に奏でるトランペット奏者、イブラヒム・マーロフがタッグを組むという驚きの組み合わせ。

そのアルバムはシバの女王の伝説をテーマにしたというこれまた壮大なテーマで、オリエントの調べとパワフルなヴォーカル、そして大地の律動がとんでもない躍動感を生んでいます。

いやはや凄い音楽が誕生してしまいました。


振り返るとリピしていた曲はリラックスできる落ち着いた曲が多かったような気がします。

豊作と言われる2022年音楽シーン。下半期も楽しみですね。

ではまた。




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