「デジタルまちづくり」のススメ
結論
前回の記事では、「まちづくり」の目的が「安全保障」と「地域の価値創造」であると述べました。今回は、デジタル化が「まちづくり」に与える意味について考えました。
個人情報を守りつつ、多くの地域住民が参加することで「安全保障」の機能を強化できると考えます。ただしデジタル技術の導入は慎重に進める必要があります。
本文
前回のまとめ
前回は「まちづくり」について話しました。簡単にまとめると、1)ご近所同士が仲良くなり、問題を共有し対処することで「安全保障」を目指すこと、2)共同で地域をよくし、「地域の価値創造」を目指すことです。
なぜ「デジタル」?
今回は「まちづくり」の目的ではなく、「まちづくり」を実践していくためのツールとしてのデジタル、とりわけスマートフォンと言った現代人の必需品としてのデジタル技術の役割について考えてみます。
なぜデジタルに注目するのか?第一の答えは、自分がそれを仕事にしているという個人的な理由からです。仕事ですので生活の糧を稼ぐことが目的ではありますが、それが「まちづくり」を通じて社会を少しでも良くするのであれば個人的満足が得られると思っています。話はずれますが、自分がどういったものを作るべきかを明確にするために、この文章を書いています。
第二の答えですが、実際にデジタルが社会を良くする可能性があると言われ、そうした期待が社会的に高まっているという理由からです。具体的に言うと、「スマートシティ/スーパーシティ構想」や「デジタル田園都市構想」というキーワードで現在政府が熱心に取り組んでいます。
「デジタル」で変わること
多くの人が期待するように、デジタルには大きな可能性があります。例えばデジタル化に関する行政のペーパーを見ると、特に「省力化・合理化・最適化」という点が強調されます。しかしデジタルの可能性はもっと大きなものがあります。
しばらく前に「第四次産業革命」という言葉が流行しました。この言葉の意味するところは、デジタルは「省力化・合理化・最適化」の単なるツール以上のものであるということです。人々のつながりを根本的に進化させ、産業のあり方そして社会のあり方を変えるほどの可能性があるということを意味します。
そうした可能性の一つが、社会をフラットにする役割です。例えばYoutube等のデジタル技術によって、映像メディアはテレビ局といった一部の業界の独占でなく、一般の人にもアクセスできるものになりました。多様な人が参加することで、新しい映像メディアの多様性が増し活性化しました。
こうした話はほかにもありますが要点を言うと、デジタル技術を使うことで、会社という枠がなくても個人が社会に対し直接のプレーヤーになることができるようになりました。そうした状態をフラットな社会であるといいます。結果的に多様な人が参加することで多様な意見が生まれ、社会が活性化することが期待されます。
「まちづくり」と「デジタル」
こうしたデジタルの役割を念頭に「まちづくり」はどのようになるか?私はより多くの地域住民がフラットな立場で参加できる「まちづくり」が可能になると考えます。そしてそれは「安全保障」と「地域の価値創造」の両面において、より優れた「まちづくり」になると考えます。
地域によって多かれ少なかれ違いはあると思いますが、70代かそれ以上の年齢の地域の長老を中心に「まちづくり」をしているところが多いのではと思います。理由は単純で、長い間住んでいることもあり地域のことをよく知りまた人的ネットワークがあるからです。
理屈があるからといって、それが最適だとは限りません。よく指摘される問題として世代間格差が挙げられます。なにしろ70代という孫が成人しているような年齢ですから、価値観が共有できる住民は半分もいないでしょう。じゃぁ若い人が中心になればいいかというと、結局のところ世代間格差が消えるわけではありません。
世代間格差のなにが問題か?価値観の共有できない人が「まちづくり」に参加しなくなります。要するにフラットな立場で「まちづくり」ができません。ここに「デジタルまちづくり」の可能性があります。
現在の「まちづくり」の危機
ここでは「まちづくり」の中でも「安全保障」の機能に注目します。
極端な例ですが、大きな災害が見舞われたとしましょう。元気なうちはうまく避難できるかもしれませんが、病気を抱えていたり高齢であったりすると、避難に遅れることがあるかもしれません。世代間格差を超えた「安全保障」がないと、弱者の被害が拡大します。特に独居の方だと災害現場に取り残されるなんてこともあるかもしれません。
日常でも十分危険が潜んでいます。夏の暑い日に日射病になりそのままなくなるというケースは、全国で年間千人を超え増加傾向にあります。もし近所の人のちょっとした手助けがあれば、こうした事故は救えたかもしれません。
つまるとこ、一部の人だけが参加する「まちづくり」には、負担が集中してしまうために限界があります。熱意をもって活動される方もいます。素晴らしいこととは思う一方、負担が集中することで燃え尽きてしまい、結局は続かなくなったという話も聞きます。特に高齢化が進む日本では公的機関による「安全保障」の機能は低下する一方なだけに、一部の人だけが「まちづくり」に取り組むことは今後深刻な結果を招きかねません。
「デジタルまちづくり」のススメ
「デジタルまちづくり」で、「まちづくり」の「安全保障」機能の強化ができると期待しています。
住民の方は専門家ではないので、トラブルを解決するわけではありません。近所に住んでいるため、トラブルの現場に立ち会う可能性があります。そうした時、状況を適切に把握して関係する専門家につなげることが、トラブル解決に大変役に立ちます。しかしここに個人情報という大きな壁があります。
例えば近所の方に健康上のトラブルが生じたとしましょう。対応する専門家はかかりつけ医か近くの病院となるでしょう。すぐに分かればいいのですが、もしも意思疎通ができない状況であったりすると代わりに判断をしてくれる近親者に意見を聞く必要が出てきます。残念ながらこうした情報はすべて個人情報なので、現場に立ち会った地域住民が分からない場合があります。そうなると目的の情報を得るまでにあちこちに問い合わせるなどしなければいけません。それは時間がかかるだけでなく、心理的にも非常にストレスの掛かることなので、最悪ほおっておかれてしまうなどなるかもしれません。
こうした事態に対応するための、こうした状況に必要な個人情報をデジタル技術を使って管理すればよいと考えます。そうすることで、地域住民全員で「安全保障」に関わることができ、また時間を無駄にすることのない対応ができます。ただし自由勝手に個人情報にアクセスされると問題なので、適切な運用をする前に管理方法を決める必要があります。
いろいろな運用方法があると思いますが、私の考える運用方法は以下の2つのルールで運用します。
1.アクセスできる人を制限する。一人に制限すると、たまたま不在のこともあるので、複数の人がいいと思います。
2.個人情報にアクセスするときは、そのことが本人に通達される。要は、不要に個人情報を閲覧されることを防ぐためです。
言うまでもなくこれは、デジタル技術を用いるから可能な話です。
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