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3Dプリンター トラブルシューティング⑤ 糸引き

どもどもYanでっす。

今回の症例はコチラ。

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皆さんがよく使うマテリアルだとPETGとかTPUで出やすいやつ。英語だとStringingって言いますね。マテリアルの垂れも同じような原因で、こちらは英語だとOozingと言います。海外のForumとかで解決方法を探すのに英語でなんて言うかは覚えておくと便利。

注意:髪の毛よりも細い綿あめみたいな糸引きは、ボーデン式のFDMプリンタだと駆逐しきれないかもしれません。ボーデン式の限界。

糸引きの原因は?

・リトラクション不足
・プリント温度が高すぎる
・トラベルスピードが遅い

これらが糸引きの主な原因。それぞれについて説明していきます。

リトラクション不足

リトラクション不足というと引き戻す距離ばかりに目が行きがちですが、実は速度も重要だったりします。引き戻す距離を長くすれば長くするほどノズル内部の負圧(引き込む力)は強くなるので垂れにくくなります。また引き戻す距離が同じであっても速度が速いほど負圧は強くなるので、速く引き戻した方が垂れにくくなります。

プリント温度

これはリトラクションよりも仕組みが簡単です。フィラメントに使われている素材は加熱することで流動性が増しノズルから押し出すことができるようになっています。この温度が高すぎるとマテリアルがノズル内を流れやすくなり過ぎてしまうんです。なのでプリントするのに十分な流動性があれば良くて、加熱しすぎは垂れの原因に繋がります。

トラベル速度

前の2つに比べるとさほど影響は大きくありません。プリント終端部分から次のプリント開始部分までの移動時にマテリアルが垂れていくのが糸引きの原因なので、その糸引きが起きる前に次のプリント開始点まで行ってしまおうということです。糸引きをスピードで断ち切るという効果もあるかも。

対処法

対処法その①

プリントに最適な温度を再度確認する。タワー型のプリントテストモデルを使って、段階的に温度を変えて、品質が一番良い温度の範囲で一番低い温度を見つけます。これが現在設定してある温度と同じであればOK。設定温度よりも低い値だった場合は、これだけで糸引きが改善している可能性もあります。一度糸引きをしていたパーツをプリントして確認してみましょう。

最適な温度の見つけ方はこのnoteを参考にしてもらえば、結構簡単に見つけられるはず。

対処法その②

リトラクションセッティングを見直す。ダイレクトエクストルーダーの場合は0.5mmから0.5mm刻みで、ボーデン式の場合は3mmくらいから1mm刻みでリトラクション量を変化させて、糸引きテストモデルをプリントして糸引きが少なくなるリトラクション量を見極めます。リトラクションの量はノズルからマテリアルが吐出する圧を一定に保ってプリントクオリティを上げるためには少なければ少ないほどいい結果に繋がります。なので、リトラクション量は少ない方から段階的に上げて行って最適値を探るのがセオリー。

プリントが開始される部分で凹みが見受けられるときは引き戻し過ぎで、リトラクション後のプリント再開部分でマテリアルの吐出が間に合っていない可能性が高いので、凹みがない程度でリトラクション量を決定します。

次はリトラクション速度で対処を試みます。現在の設定値から5mm/s刻みで速くしていって糸引きや垂れが少なく、かつプリント再開部の凹みがない速度を見つけます。

こちらのnoteのリトラクション量のとこにテストモデルの紹介とかあります。

対処法その③

上記対処法①、②でも解決しない場合、トラベル速度、トラベル加速度、トラベルジャークの値をいじってプリントしない移動時のヘッドの動きを速くしてあげます。あまりにも速くしてしまうとプリンタ本体を揺らす原因となりプリントクオリティが落ちることになるので注意。

注意点

リトラクション速度、トラベル速度の調整で値を大きくし過ぎてしまうと、モーターへの負荷が高くなり脱調の原因に繋がります。

まとめ

糸引きが多いという声をよく耳にするPETG。僕も最初はPLAみたいにサイズはばっちりで反りも皆無で耐熱もPLAより優れてる!これは使えるマテリアルだって思ってたんだけど、糸引きまくりで苦労しました。

でも、しっかりと設定をしてあげることでPETGの糸引きは駆逐できます。

ボーデンだとどうしてもエクストルーダーからノズルまでの距離が長く、リトラクションに対するレスポンスが落ちてしまうので、完全に駆逐するという訳にはいかないです。ダイレクトエクストルーダーならPETGならいけます。最適な温度を探して、そのあとリトラクション量(速度)でかなりの糸引きをなくせるはず。

一般的に言われているPETGとかABSとかTPUとかPLAのプリント温度ってのはあまり信用しない方がいいです。参考にするならスプールに貼ってあるシールとかフィラメントのパッケージに書かれている数値。220~240℃みたいに幅広く書かれていることが多いのでこの範囲の下限から5~10℃下、上限から5~10℃上くらいまでの目安に最適温度探しをすればそうそう外れないです。

TPUは(僕の環境だと)速度をあげてプリントするとライン間結合が上手くいかないという症状が出てしまうので、速度を遅めにせざるを得なくて、完全には糸引きを駆逐しきれていないです。個人的に一番難しいのはTPUな印象があります。TPUだけはダイレクトエクストルーダー化してても5mmとかリトラクション設定しても大丈夫だったりします。多分溶けたときの粘度の関係。

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