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【Lost Liner Notes】 チック・コリア / シークレット・エージェント (1978年)

Chick Corea / Secret Agent

これは2005年にリリースされたCDのために執筆したライナーノーツを加筆・訂正したものです。

1975年、チック・コリアは当時活動していたリターン・トゥ・フォーエヴァー(以下RTF)とは別に新たなるソロ・プロジェクトを始動し、アルバム『妖精』をリリースする。この作品はRTFのロック・テイストのサウンドとは異なり、ギターレスでホーンやストリングスを導入し、アルバム1枚をひとつのテーマで統一するというコンセプト・アルバムになっていた。当時バンドでツアーとレコーディングを繰り返す生活に疲れていた(と、チック自身が語っていた)彼は、『妖精』で手応えを掴み、翌1976年の『浪漫の騎士』を最後に一旦RTFでの活動を休止してソロ・プロジェクトの方向へと進んでいく。そしてLP2枚組の大作『マイ・スパニッシュ・ハート』をリリースするが、レコード会社との契約の関係などもあり、そのソロ・プロジェクトの延長線上にあるギターレスでホーン・セクション入りという編成に、RTFのもうひとりのリーダーであるスタンリー・クラークを加えたメンバーでRTFを復活させて1977年に『ミュージック・マジック』をリリース、その後全米ツアーも行なって、その時の模様がLP4枚組の大作『ザ・コンプリート・コンサート』としてリリースされた。そしてこのツアーをもってRTFの活動に完全に終止符を打ったチックは、ソロ活動に専念することになり、1978年にルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』をモチーフにした『マッド・ハッター』、そしてそのレコーディングから派生したセッション・アルバム『フレンズ』をリリースし、それに続いて制作されたのがこの『シークレット・エージェント』だった。

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