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妖怪きなこ爺
2019年12月29日 11:00
冬晴れの穏やかな1日だった。空が高くて太陽の光は柔らかく、北風はハッとするくらい冷たかった。底冷えする大地を柔らかな日差しが少しずつ温めていた。僕は中央高速を東京に向かって走っていた。道中で富士山が見えた。穏やかな日差しを浴びて、雄大なその大山は一層に荘厳さを増しているようだった。くっきりと澄んだコバルトブルーの空と、山頂の雪化粧が稜線をくっきりと写した。雲ひとつない空はどこまでも晴れ
2019年12月29日 09:56
水木先生からサインを頂いた年の年末に僕は彼女と正式に別れることになる。上京して、ほころびだらけの関係のままウダウダと過ごした半年間。僕達はお互いに辟易して、お互いに失望した。ただ相手に向けた何倍もの失望を自分自身にもしていた。自信を失うと人は脆い、あまりに脆い。僕達の最期の1ヶ月は、まるで消えてしまったロウソクを眺めてるようだった。もう灯らない、そのロウソクを眺めているうちに、僕達は言葉を失い