「リンモチ」の方がもてはやされてるけど、うちにあってるのは「識学」だから「識学」にするぜ
2016年春に神戸にて家業に入り、今月で丸3年目半になった。
企業としてはまだまだ地方超零細企業の域を出ないが、事務所の移転をしたり、コワーキングスペース事業 ON PAPER を始めたり、社員の人数が増えたり、事業領域と市場が広がったり、少しずつではあるが雰囲気は変わり始めている。
しかし、ここから先の未来へ進んでいくためには、いよいよ組織としてのステージを意図的に変えていかなければならない段階にきている。ある意味では現状に来るまでに3年も使ってしまい、少し焦った方がいい状況かもしれない。
そこで、昨年からマネーフォワードや管理会計ツールを導入してみたり、セールスフォースを使ってより高度な管理会計の仕組みを整えていこうとしているわけだが、これらに加えて「組織」としての運営哲学をきちんと整理し、会社としての足腰を整え、鍛えていく必要があると考えている。
この問題についてはもちろん以前から課題意識があり、いつか取り組まなければならないところだと考えていたため、組織コンサルティングで近年勢いがある「識学」や「リンクアンドモチベーション」について本を読んだり、営業を受けたり、自分なりに調べたりしてみていたのだが、この2つの共通点として両者とも、専門系コンサルティング特有の一定の「うさんくささ」があるため、どこまで言っても導入をするのを躊躇ってしまうし、同じように魅力を感じながらも踏み込めない人も多いように思う。
*実際、どちらもアカデミックな雰囲気を醸し出して、信用を得ようとしているところからも、この「うさんくささ」に対する課題意識が見えるように感じる
一方で、両者を調べていく中で思った相違点として、片方が徹底的にモチベーションを軸にしていることに対して、もう一方はモチベーションを徹底的に無視している。
実際、リンクアンドモチベーションの手法を実践、導入して成功した経営者の話を聞いた後に、識学を徹底的に信奉して実践して成功した経営者の話を聞いて、混乱のあまりその日は仕事が手につかなかったこともあるぐらい、真逆のアプローチである。その日は珍しく夜中にジョギングをして気持ちを落ち着かせたくらい心の底から混乱してしまった。
そこで両者を比較して考えてみることで、自分なりに整理をし、自社にとってどちらのアプローチがより適切なのだろうかというところをまとめてみた。
【そもそも組織コンサルティングとは】
まずその前に、組織コンサルティングとは何かという点について前提を確認しておく。私の理解では彼らが「理論」として提供する基本的な考え方は「経営者としての人間観、組織間、社会観に対してブレが生じないようにするための指針」である。そして副次的な機能として、担当の営業やコンサルたちは、その指針を理解し、実行し、定着させるまでの伴走をしてくれるペースメーカーである。
つまりもともとブレない哲学をもっていて、それをしっかり実行している経営者には不要なものである。(*多くの場合そんな人はおらず、経験の中で少しずつ身につけていく、あるいは身につかないまま終わるようにも思うが)
そしてブレないということ自体が大事であって、まずは、ブレてさえいなければどちらのアプローチでも良いと思う。
また、この観点でいうと、独自のメソッドをもった家庭教師やスポーツトレーナーに非常に近い存在だといえ、そう考えると、今回の2社が真逆のアプローチを取っていることも納得がいく。要は学校の成績が上がったり、スポーツの結果がよくなることがゴールであって、そこに至るまでの指導法やカルチャーは無数にあるわけである。より勝率の高い選択肢はあるかもしれないが、少なくとも全てに共通して効くものはなく、各生徒やプレイヤー、そして科目や種目に応じてより相性のいいメソッドやコーチがある。企業にとっての組織コンサルティングもそれと同様に考えることができる。
【まずは両者についてご紹介】
メソッドの詳細については当然ながらあまり紹介されていないので比較が難しいが、営業文句などからスタンスや価値観の違いは見えてくる。とくにCMを比較するだけでもいろいろ違いが見えるから面白い。
・リンクアンドモチベーションとは
社名 株式会社リンクアンドモチベーション (Link and Motivation Inc.)
上場市場 東京証券取引所 市場第一部(証券コード:2170)
設立 2000年3月27日
創業 2000年4月7日
資本金 13億8,061万円 (2018年12月31日現在)
売上収益 399億円(2018年12月期)
決算期 12月
事業内容
モチベーションエンジニアリングによる企業変革コンサルティング
モチベーションマネジメント事業(育成・制度・風土変革支援)
エントリーマネジメント事業(採用支援)
インキュベーション事業(投資・組織人事支援)
リクルート出身の小笹会長のもとで、「モチベーションエンジニアリング」と称する独自のメソッドを用いて、企業コンサルティングを推進する。昨今では「モチベーションクラウド」というサービスも展開し、急成長を遂げている。
↓役所広司さん出演のモチベーションクラウドCM
・識学とは
会社名 株式会社識学(SHIKIGAKU. Co., Ltd.)
設立 2015年3月
事業内容
「識学」を使った経営、組織コンサルティング
「識学」を使った従業員向け研修
「識学」をベースとしたwebサービスの開発、提供
「識学」関連書籍の出版
従業員数 63名
安藤社長による「識学」というメソッドで組織コンサルティング事業をてがており、2019年2月にはマザーズ上場を果たした。識学クラウドなどサービスもだしているようだが、まだまだコンサルそのものを軸に据えて成長をしていくように見える。
↓要潤さん出演の識学CM
【自分なりの比較と理解】
いろいろな考え方と、軸でそれぞれを2項対立で整理してみた。ちょっと意味不明なところもあるかもしれないが、自分的には納得しているので、もし意味不明だったら聞いてください。
思想→箕輪さん界隈の価値主義VS資本主義的な発想
GとLの時代→富山さん的な理解
幸福の軸→セリグマン的な理解
業種→富山さん的な理解
リーダーの指向→フィードラーのコンティンジェンシー理論的な理解
組織のライフスタイル→マクロ組織論的な理解
【時代のトレンド的には「リンクアンドモチベーション」】
時代背景で考えるといまのトレンドは確実に「リンクアンドモチベーション」であると思う。「IT革命を発端とした個の時代」というのが明らかに大きなトレンドであるし、今や誰しもがその流れを感じていると思う。そういう社会情勢に疎い人でさえ、順番に説明されると同意するくらいトレンドになっていると思う。リンクアンドモチベーションはこの現代の時代背景と価値観をベースにして展開している。このトレンドについてあまり実感がない人はモチベーション革命(尾原和啓) や、お金2.0(佐藤航陽)をよむことで、時代背景がよくわかるようになると思う。
【でも、会社や業種によっては「識学」がいい】
しかし、全ての会社、全ての業種、全ての職種でその価値観が通用するのかというと、けしてそうではないのではないかと思う。
上述のモチベーション革命の中で紹介されているが、心理学者のマーティン・セリグマンによると、人間の幸福感には5つの軸があり、それぞれ「達成」・「快楽」・「意味合い」・「良好な人間関係」・「没頭」らしい。
社会が成熟してインフラや基本的なサービスがフル稼働しているからこそ、ひとびとは満たされており、「達成」「快楽」を必要としない固定的・硬直的なサービスに従事する人や、いわゆる「渇けない世代」が増えてきていると思うが、そうではない人やそれでは立ちいかない組織や業種も少なからず存在する。
これから大きく拡大をしていくことを目指していたり、熾烈なグローバル競争環境の中で戦うことが求められている場合は、やはり「達成」「快楽」を軸にした幸福を感じ、モチベーションを燃やすことが必要なように思うしそういった企業や経営者は少なくなっていてもけしてゼロではない。
これは富山さんのいうGとLの時代の理屈でも説明されているように世界が極端に2極化していて、多数派と少数派が入れ替わってきているのが今のトレンド、という話にも通ずる。
いずれにせよ、そうなると少数派である「達成」「快楽」重視あるいは重視せざるを得ない組織や経営者にとっては、むしろ新しい時代の少数派として非常に息苦しく、つらい時代がやってきたとも言える。
私の理解では「識学」はそういう人たちに向けたソリューションであり、救いの手であるように思う。表側で多数派によって「リンクアンドモチベーション」が支持される時代であるからこそ、裏側で苦しむ少数派にとっては「識学」が必要されているのではないか、と考えている。
【組織の段階によっても違う】
またマクロ組織論でいうところの組織のライフスタイル段階によっても違うと思う。「識学」は「官僚化」が必要な「起業直後〜共同体」レベルの組織にとって有用な考え方やメソッドであり、「リンクアンドモチベーション」は「官僚化」した結果、その弊害に苦しんでいる組織にとって、再度柔軟性と成長意欲を手に入れるためのメソッドであるように思う。このあたりの違いは、業種適正にもリンクしていっているように思う。
【社長個人の価値観との相性によっても違う】
あとは社長個人の価値観とあっているかどうかによってもどちらを選ぶべきかが変わるように思う。当初に言った通り、これらはあくまで経営者にとってのブレない軸であるべき指針であって、どんなに内容が優れていて組織にあっていても、経営者自身が納得しておらず、理解をしていなければ組織全体に浸透しないからである。最終的には実行されて、企業としての結果が出なければ意味がないので、最後にはどのような会社にしたいか、というところから好みで選んでしまってもよいと思う。どちらを選んでも、経営指針としてブレがなければ目的は達成されると思う。
以上、自分の考えを整理するために書いたので粗いですが、ご容赦ください。
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