2020年 マイメモリアルライブ&配信 アーティスト 8選

前々回の投稿で、2020年にグッときた音楽作品を振り返らせてもらいました。

その中で、「ほとんどのアーティストがライブという表現と交流の場を失った」と書いたけれど、代わりに配信ライブという新しい可能性に出会うこともできた。
また、コロナが一時的に落ち着きを見せた秋以降には、ソーシャルディスタンスや消毒、観覧時の制限や公演時間や回数の工夫によって、現場でのライブも数少ないながら行われた。

そのどれもが濃密だったし、2019年までは月に40本以上ライブに行っていた自分も、改めてライブというものの尊さに気付かされた2020年だった。

というわけで今回は、その中でも特に心に残ったライブをしてくれたアーティストを、配信ライブ編・リアルライブ編、各4組ずつ振り返りたいと思います。
こちらも特にベストとかは決めずに、時系列で。

<配信ライブ編>

①サカナクション

これまでも常に想像を遥かに越えてくる演出で感動させてくれた彼らのことだから、配信ライブでもきっと新たな音楽体験に連れていってくれると勝手に期待している自分がいた。

しかし、そんな想像の範疇をさらに軽く飛び越えてくるのがサカナクションで、終始これは…配信ライブ…?ですよね…?と、目と耳を疑いたくなるようなクオリティのライブだった、「SAKANASUARIUM 光 ONLINE」。

冒頭、一郎さんが一人夜の路上に缶コーヒーを持って佇むドラマのようなシーンから映像が始まる。
そしてイヤモニを付けながら歩みを進め始め、倉庫のような場所に辿り着く。
その扉に手を掛けると、中からは眩い光が…。
その中に入っていくと、既にスタンバイしていたのはサカナクションのメンバー達。
そう、そこはライブ会場で、一郎さんが歩いてくるところから既にライブ配信は始まっていたのだ。

配信でも、ちゃんと日常からライブという非日常への導入を再現してくれるあたりは流石だし、徐々に世界観に引き込まれていく形で『グッドバイ』からライブがスタート。
最初から鳥肌が半端ないし、曲から曲へと流れていくうちに、とんでもなく音が良いことに気付く。
本当にその場でライブを観ているかのような臨場感は流石、これまでのライブでもスピーカーにこだわってきたサカナクションだ。

そして"光"とタイトルに冠しているだけあり、多彩な光の演出も凄かった。
配信という状況を逆手にとって画面いっぱいに仕掛けを作ったりという工夫も、倉庫と思われる会場をフルに使った素早い転換も素晴らしかった。

これはひとえにチームサカナクションの連携力の為せる業で、『陽炎』あたりを境に雰囲気もガラリと変わって後半は楽しさが止まらないダンシングパートに突入していったのだけど、全体を通して一切止まることなく流れていくスタッフワークはマジで凄かった。
これが、一発勝負の生配信だなんて…。

最後、エンドロールとともに『さよならはエモーション』で締めるのもニクかった。
このライブは今年3月に映像作品としてリリースされるので、ぜひそちらでも振り返りたい。


②Base Ball Bear

こちらは以前noteでもレポートしたが、Base Ball Bear初の配信ライブが、自分の中では最も現場で観ていたときの感覚と近く、一番オンラインの隔たりを感じなかった。

⚫気付いたら自分の部屋が下北沢GARAGEだった https://note.com/y_hub_you/n/n21f9db617821

ベボベは特に、どのバンドよりもリアルにこだわるバンドであるのを知っているので、配信には抵抗があったかもしれない。
だからこそ、最初は彼らのホームグラウンドである下北沢GARAGEから、いつも通りのライブをやるというスタイルで配信を届けてくれたのだ。

それがとても良かった。
むしろ、配信だからこそライブハウスの最前でライブを観ているかのような錯覚も感じられ、また音響も良かったおかげか、確かなプレイの腕か、配信にも関わらずベースの音までしっかり聞こえてきた。

『不思議な夜』のようなライブ定番曲のアウトロにさえもしっかりアレンジを施してくるあたりは、常に変わり続けてきたベボベだからこそ、自粛期間をただ過ごしていたわけじゃないんだなと思わせてくれる。

そしてやはり、こいちゃんがボケて、堀くんがツッコんで、関根嬢が笑うMCもいつものベボベだ。
これだよ、これ!という3人の雰囲気はどんな状況でも変わらない。
初めての配信というのもあったので、観ている側が飽きないように、そんなMCのインターバルが何ヵ所も設けられていた。

しまいには、蝉がエレベーターに入ってきたという話から、「何で真面目なライブでこんな話してるのか」「これは季語」「MCは俳句」…というよく分からない展開になり、それに対し裏にいるスタッフの笑い声が「ヒャッハッ!!」と聞こえてきてツボに入り。
配信ライブでここまで通常運転のMCをするバンドも、そこまで自分が観てきた中では初めてだったかもしれない(笑)

このライブには"夏の終り、秋の背中を感じさせるライブ"というしっかりとしたコンセプトもあり、『Summer Melt』や『セプテンバー・ステップス』といった初秋感の漂う曲でそれをしっかりと表し、最後は『senkou_hanabi』で、次の夏はきっとこんな風に過ごしたい…という儚い願いと強い想いが交差するエモーショナルな演奏を見せてくれた。
この曲は3ピースで披露されるのは初めてで、慣れない配信ライブでもそんな曲を最後にどーんと持ってくる心意気が本当にカッコ良かった。

本当にいつもと変わらない、楽しいMCとキレッキレのライブを通常運転で届けてくれたおかげで、配信という隔たりを感じない、いつも通りのBase Ball Bearを感じることができたライブだった。


③UNISON SQUARE GARDEN

対バンツアー「funtime HOLIDAY 8」が中止になってしまい、メンバーもファンも情熱の行き場を失っていたであろう、ユニゾンの2020年上半期。

しかし、そこで止まらないのがロックバンド。
この状況を逆に利用し、楽しめるものは楽しんでしまおうということで、まず1人3曲まで選べる楽曲人気投票を行い、その上位30曲の中からセトリを組むという配信ライブ「USG 2020 "LIVE (in the) HOUSE"」を7月に行った。

https://unison-s-g.com/2020/online-live/result/

そして次に、31位から70位までの曲縛りでの配信ライブ「USG 2020 "LIVE (in the) HOUSE 2"」を8月に…いかにもユニゾンらしい(笑)

そして特に自分がグッときたのは、9月に開催された「funtime HOLIDAY ONLINE」。
これは「ロックバンドの生存確認」をコンセプトに、彼らと縁のある7バンドを招いたオンラインフェスのようなイベントで、5時間ひたすらカッコいいライブが繰り広げられ続けるものだった。

東京スカパラダイスオーケストラ、フレデリック、パスピエ、BIGMAMA、9mm Parabellum Bullet、a flood of circle、THE BACK HORNがそのオファーに応えてくれた。

中でもスカパラは既にBiSHとの2マンで配信ライブを観ていたけど、このライブでは早速トリビュートでカバーした『桜のあと~』から始まったり、斎藤さんをfeat.に迎えた『白と黒のモントゥーノ』を披露したりと特別感満載だった。

MAMAはコロナ禍に加え、リアドが抜けてしまうという逆境があった中でも全くマイナスは感じさせず、キレッキレの『荒狂曲"シンセカイ"』からスタートし、トリビュートでの選曲とは違うカバーのユニゾン曲『ライドオンタイム』に驚かされ、さらに個人的に一番と言っても良い程好きな『SPECIALS』を披露してくれたりと、こちらまでプラスのオーラで満たされるようなアクトだった。

そしてゲストバンドで個人的に大本命だったのが、トリのユニゾンにバトンを渡す役割のバクホンで、その期待を遥かに上回るライブを見せてくれた。
コロナ以前に、将司さんの喉の不調に見舞われてしまい、ツアーを延期・中止にしてしまうという苦難があったけれど、それらを一気に吹き飛ばすかのように完全復活した歌声はまさに生存本能剥き出しで、"突き進めェ~!"(『刃』)とロックに転がっていくライブに魂を揺さぶられた。

そんな熱すぎるバトンを受け取って大トリを務めるのがホストバンド・UNISON SQUARE GARDENで、初っぱな"生きてほしい!"と叫んだ『Invisible Sensation』はこれまでライブで生き様を見せつけてくれた7バンドに対するアンサーのようだったし、その後もこれまでのバンドからもらったパワーで演奏を畳み掛けるユニゾンに涙が出そうだった。
初回・7月配信ライブで高音が出し切れなかった『Phantom Joke』を歌い切れたのも、さらに演奏&歌唱難易度が高すぎるのでは…と思われた『世界はファンシー』を当時初披露にも関わらず難なくやり切ったのも、この日だったからこそだろう。
ラストナンバーの『シュガーソングとビターステップ』では、もう次のアクトが無い大トリホストバンドの特権を活かし、会場の新木場STUDIO COAST全体を広く使って、このイベントでずっとMCを務めてくれたDJ・落合健太郎さんも登場し、カッコよく合いの手を入れてくれて、大団円を迎えた。

5時間ぶっ通しだったけれど、この年観た配信イベントでは後にも先にもこれ以上のものは無く、本当に素晴らしいものだった。
他のゲストバンドも音を鳴らして届けられる場所を提供してくれたユニゾンに感謝していたのが印象的だったし、たくさんのロックファンたちが7バンドの生存確認ができた喜びをハッシュタグ「#USG2020」で爆発させていてずっとトレンド1位だったので、もはやこれはロックファン側の生存確認が大いにできたイベントでもあったなぁと、とても嬉しかった。


④B'z

1988~2020年の楽曲を5つの時代に分け、毎週土曜日、各時代ごとにセトリを組んでZepp Hanedaで行ったライブを5週連続で配信したのが、B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-。
つまり5回ともセトリが一曲も被らず全部違うということである。
最初に発表されたときは凄いこと言ってるよこの人達…と大変なコンセプトに驚いたが、毎回見せ方も違って工夫されていたのが本当に凄かった。

10/31に配信されたDay1は1988~1993年の曲で構成され、デビュー曲『だからその手を離して』からスタートし、『BLOWIN'』や『恋心(KOI-GOKORO)』『ZERO』といったライブ定番曲から、『星降る夜に騒ごう』『快楽の部屋』といった20数年ぶりに演奏された超レア曲まで、興奮と驚きで盛り沢山な初日となった。
客席となるエリアもステージにして炎をくべたり、別セットを作って弾き語りコーナーを設けたり、皆で合唱する曲は過去のライブ映像から観客の声を拾ったりと、随所に趣向も凝らされていた。
終盤の『RUN』や『裸足の女神』はこんなご時世でも生きている自分達を讃えてくれているようだったし、稲葉さんはパンツに、松本さんはギターに、各々"PCR"と書かれたステッカーを貼っていて、検査を経て万全の体制で臨むプロ意識と、コロナには負けないぜ!という強い意志を感じさせてくれた。

11/7配信のDay2は、1994年~1998年までの曲でセトリを構成。
\プルルルルル…/\ガチャ/「ハロー?」
もうこのオープニングですべてを悟って発狂した。
「30年もやってるイカしたバンドがいるんだぜ、B'zっていうんだけど…」(※うろ覚えにつき意訳)
内容も2020年ver.にアップデートされた通話が終わると、『LOVE IS DEAD』でライブがスタート。

そう、これは1994年のアルバム「The 7th Blues」Disc1一曲目の完全再現だったのだ!
曲の前に、固定電話の着信音が鳴り、外人どうしの通話が聞こえてくるというもの。
長年のファンなら垂涎の始まり方だろうが、切なくて女々しい歌詞がたまらない『YOU & I』やこれぞ90年代サウンド!な郷愁感たっぷりな『夢見が丘』と次々に名曲が投下されていくので油断ならない。
『love me, I love you』でZepp Haneda中を歩き回りながら歌って、感染対策をしなければならないこの状況を皮肉るようなシーンもあったり、『もうかりまっか』で途中からコントが始まったり、春にリモート演奏動画も話題になった『HOME』でステイホームの話をしたり…。
この日もコロナ禍の配信ライブならではの演出が盛りだくさんだった。

11/14配信のDay3は、1999年~2003年の曲たち。
この5ERASでは、海外のサポートメンバーを迎えた普段のツアーと違い、オールジャパンのサポートメンバーでライブを届けてくれているのだけど、日によってメンバーが変わっていて、この日も約20年ぶりにDr:黒瀬氏、Ba:満園氏がB'zのサポートに参加。
この日はレア曲ラッシュなDay1・2とうって変わって、『ギリギリchop』を皮切りにシングル曲を多目に畳み掛ける王道セトリだったが、それだけにLIVE-GYM感がグッと増して、特に久々にB'zでプレイした先述お二人のテンションがまぁ最高で。
周りをスクリーンに囲まれてメンバー全員が向かい合い、ビル群や夜景、過去のライブ映像の観客たちをバックに、『juice』ではしゃぐようにコール&レスポンスしながら演奏する様はマジでライブ感抜群でめちゃめちゃ楽しそうだった。
そんな中、終盤で『ONE』『Brotherhood』を畳み掛けられた頃にはもう…。
「ぜったい会いましょう」「生きていくだけだよ」というフレーズは、今このご時世を何とか生きている自分らファンへのメッセージにしか聞こえなくてグッときた。

11/21配信のDay4は、2004年~2009年の曲たち。
この日もシングル曲を中心にひたすら畳み掛けてくるセトリで、アツかったDay3のライブ感をそのまま引き継いだものだった。
しかしやはり初っぱなからライブで滅多にやらない『ARIGATO』からライブが始まるスペシャル感はたまらないし、『ゆるぎないものひとつ』はアコースティックver.でしっとりと始まったり、今やウルトラソウルに次ぐアンセムの『イチブトゼンブ』でも、イントロで増田さんが名探偵コナンのテーマ曲をさりげなく混ぜてきたりと、随所でアレンジも。
そして『永遠の翼』『OCEAN』『衝動』あたりは、思えばこの辺の時代からリアルタイムでB'zを聴き始めた自分にとってドンピシャで、ひたすら画面の前で懐かしんだ。
終盤『BANZAI』では、Day3の皆で盛り上がっちゃいましょー!という空気感がスタッフの皆にまで拡大していたのが最高で、一層ライブ感が増していく中でのラスト、『いつかまたここで』は、生きていればまたライブで会える…という希望を乗せて歌ってくれているようで、めちゃめちゃ沁みた。

最終日・11/28に配信されたDay5は、2011年~2020年、つまり最新のB'zの曲たちで届けられた。
巨大なスクリーンが頭上に斜めに掛かるカッコいいセットが露になり、『GO FOR IT, BABY -キオクの山脈-』で徐々に高まっていく始まり方。
そして『さよなら傷だらけの日々よ』で一気にライブのギアが入るのだが、最新モードのB'zを見せる最終日とあってカメラワークもドローンを駆使し、まさにB'zの周囲を目まぐるしくグライドしていく様にテンションもどんどん上がっていった。
『HEAT』も、このとき発売されたベストアルバムのツアーが自分的・初LIVE-GYMだったのでエモさ爆発で嬉しかったし、『マジェスティック』や『WOLF』では逆に、直近で参戦した2019年「NEW LOVE」のツアーも蘇った。
そして"-8820-"とサブタイトルにもあるので、当然2020年の曲=新曲(『YES YES YES』)も披露され、この時代でもB'zは止まらず走り続けてくれていることを証明してくれた。
終盤『C'mon』『兵、走る』でも、「もう一度笑いあおう」「ゴールはここじゃない まだ終わりじゃない」という力強いメッセージが、そんなB'zの今とこれからを物語ってくれているようだった。

あっという間に駆け抜けていった、Day1~Day5の5週間・全5回毎回セトリの違う配信ライブ。
事前収録とはいえノーカットの一発撮りが徹底されていて、「毎回ツアー初日がやってくる感じ」という増田さんの言葉からも大変さが伝わってきたけど、おかげでこちらも毎回Zepp Hanedaの最前でB'zを観ているようなライブ感を味わえた。

稲葉さんも、毎回観てくれている視聴者の存在を感じてくれていたようで、そんな意識で歌を届けようとしてくれる中で「無観客ライブは無観客じゃなかった」と気付けたと言ってくれた。
最初は「90年代B'zこそ至高」なんて思っていた自分だけど、ずっと走り続けてくれているB'zはどの時代もずっとカッコいいんだなと気付くことができた。


<リアルライブ編>

①[Alexandros]

こちらもnoteでレポート済みだが、コロナで一切のライブ・イベントが開催できなくなった約半年を経て、久しぶりに現場参加した、[Alexandros]のTHIS SUMMER FESTIVAL 2020。

⚫半年ぶりのリアルライブ ~8/14 [Alexandros] THIS SUMMER FESTIVAL 2020~https://note.com/y_hub_you/n/n515b4de54c58

アレキも10周年ツアーや夏フェスが中止となり、6月に"Party in ur Bedroom"と題して2daysの配信ライブは行っていたが、ファンの前で演奏する機会はなかなか叶わなかった中での、久々のライブ。

Zepp Hanedaにて、初日を一般にも開かれた対バンイベント、2日目をFC限定のリクエストライブというコンセプトで行われ、感染対策を考慮したキャパシティで各日500人しか観客を入れないという中、奇跡的に初日のチケットを取ることができた。

対バン相手は、なんと久々に帰ってきたあのバンド、[Champe](しゃんぺ)である。
個人的には前年サトヤスがドラムを叩いたさいたまスーパーアリーナでのラストライブに立ち会えなかったので、今回は司会進行を務めてくれるということで、久々に彼に会えるのも嬉しかった。

ソーシャルディスタンス、検温、手足の消毒…と、これまでとは明らかに違う入場方法に慣れないながらも、いざ会場に入ると、ステージにはマイクスタンドや、ギター、ドラム、ベース、アンプといった機材が並んでいて、音出しが始まるともう、その久しぶりの光景だけで泣きそうな自分がいた。

そして時間になり、ステージにサトヤス登場。
盛大な拍手で迎えられるが、彼が何を喋っても笑いが返ってこないのは、決してスベっているからではなく、皆が感染対策のルールを守っているから。
そんな空気に戸惑いながらも、持ち前の明るさで高らかに[Champe]を呼び込み、いよいよライブへ。

『Burger Queen』をSEにメンバーが登場し、配置に着いてリアドがカウントした瞬間、なんとそのSEが生演奏に切り替わったのだ。
自分としても半年ぶりに体感する生演奏というのもあり、これには早速シビレた。
テンションが最高潮のまま、曲は『For Freedom』へ。

声は出せない分、いつも以上にボディーランゲージと拍手で沸き立つ会場は、『Waitress, Waitres!』でさらにボルテージを上げ、本来なら\イエー!イエー!イエー!/と叫ぶところでようぺが胸に拳を当て、"心の声はちゃんと届いてるぞ"と言わんばかりのジェスチャーからサビに突入した『Starrrrrrr』では、畳み掛ける歌と演奏からものすごい勢いでメンバーたちの想いが入り込んでくるようで、めちゃめちゃ泣いてしまった。
これこそがライブだよなぁと。
声は出せなくても、客席とステージで想いを交わすことはできるのだ。

その後も『Kids』から『Untitled』まで、懐かしの曲たちが披露され、続けていよいよ[Alexandros]の出番へ。
[Champe]と同じく途中から生演奏にスイッチする『Burger Queen』で登場し、1曲目はさっそく合唱でお馴染みの『Adventure』を。

すると、このライブは同時に生配信もされていたのだが、スクリーンにTwitterや配信媒体のコメント欄が映し出され、会場にいる自分たちが歌えない分、配信を観ている方々が全国から文字で一緒に歌ってくれたのだ。
おかげで会場のキャパ以上に皆で盛り上がっている感じがしてグッときた。

そこから『Run Away』で一気に加速し、『ムーンソング』『月色ホライズン』で月にちなんだ流れを演出した後、『Dracula La』で再び配信で観ている方たちが\おーおーおー/と盛り上げてくれた。
そして『Girl A』『Mosquito Bite』で風格を見せつけながら、あっという間にアンコールへ。
MCでようぺが語る。

「今日、本当に皆来てくれると思わなかったよ、ありがとうございます。正直、いろんな声があって開催を迷う部分もありましたが、うちらのファンなら大丈夫だろう!と、開催することに決めました。
10年間いろいろあったけど、ファンには恵まれたバンドだなと思います。」

本当に誇らしかった。
もうこれは、しゃんぺとアレキと、そしてその両ファン達の完全勝利だ。
1ミリも声を出せないというルールを現地の誰一人として破らず、皆が守り、その分配信の視聴者さん達が盛り上げてくれた。
"全員集合"と銘打たれた通り、本当に全員で作り上げたディスフェスだなと。

その後『rooftop』で「また会えたら~」と語気を強めて歌い、『ワタリドリ』でこの状況でも観客にマイクを向け続けるようぺからも、今度はこの皆でもっと大きな会場に集まり、楽しみたいなという想いが伝わってきた。
マスクの奥で泣き笑い、心の中でめっちゃ叫んだ1日だった。


②UNISON SQUARE GARDEN

配信の部でもユニゾンを挙げたが、満を持して秋から開催されたリアルライブのツアーがまた本当に素晴らしかったので、こちらでも取り上げたい。
このライブもツアー中にnoteでレポートしたが、ネタバレに配慮した内容だったので、こちらで完全版として改めて振り返ることにする。

ロックバンドは座っても観られた。

UNISON SQUARE GARDEN 久しぶりのリアルライブ、「USG 2020 "LIVE (on the) SEAT"」の謳い文句、「ロックバンドは座っても観られる」に対しての、紛れもないアンサーだ。

ロックバンドの尊さというものに感動し、震えるぐらい感動したライブ。
前述の通りユニゾンは、これまで配信ライブを3回行い、毎回オンラインならではの趣向を凝らしてくれた楽しいものだったが、その3回の配信も、この1時間のリアルライブのためだったのだと、東京ガーデンシアターでのライブを観て思い知らされた。

10月から始まったこのツアーはあくまでも「ロックバンドは座っても観られる」をテーマに行われた。
時間は1時間きっかり、日によっては2部制で、マスク着用必須・声出し禁止の、着席ライブ。
どんなライブになるか全く予想がつかない中で自分も席に着いたが、場内アナウンスが流れ、会場が暗転し、突然『クローバー』のサビを歌う斎藤さんのアカペラが聞こえてくる形でライブがスタートした。

「君がここに居ないことで
あなたがここに居ないことで
回ってしまう地球なら別にいらないんだけどな」

優しい歌声でこのフレーズを聴いた瞬間、ブワァっと身体中に響いてくるものがあり、涙腺を刺激した。
ライブ会場に足を運んで来て、彼らの前に座っているということを、第一声で肯定してくれている。
そして会場はパッと明るくなり、『フルカラープログラム』で弾けるバンドの音を浴び、決壊した。

大好きなロックバンドが目の前で音を鳴らしている。
そんな当たり前のことが、こんなにも嬉しいことだったのかと、これまで3回、オンラインという隔たりのあるライブを観たからこそ、まず物凄い感動に襲われ、心と身体が覆い尽くされてしまった…。

3人は至って通常運転だ。
寸分の狂いもない超人的なギターボーカル、縦横無尽に動き回りながらグルーヴを放つベース、圧倒的な手数で音を埋め尽くすドラム。
座って観ていたからか、いつも以上に集中して観られたのもあるのだろう。
『セレナーデが止まらない』といった予想を越えてくる選曲や、『夏影テールライト』→『Phantom Joke』といったアルバムの流れの再現もあったりしたのが相まって、いつも以上にマスクの中で笑みが止まらなかった。

観ているこちらは声を出すことができない。
立ち上がってジャンプしたり、ステップを踏んだりすることもできない。
だが、それでもめちゃめちゃ楽しい。
『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』では、それが制約であるのを忘れてしまうくらい、身体を横に揺らし、腕を振り、手を叩き、その瞬間にできる最大限の楽しみが引き出された。

さらに『ライドオンタイム』ではメンバー3人の演奏が弾むように、原曲よりも速いスピードで畳み掛けてくるもんだから、表情は見えずとも、そこにいる全員が間違いなくテンション高く、心の中で踊り狂っていたことだろう。
座っていてこんなに楽しいライブは初めてだ。UNISON SQUARE GARDENはどんな状況でも観ている人たちを楽しませる天才だ。

久しぶりに彼らの音を生で浴びれる夢のような時間はあっという間に過ぎていき、1時間が経とうというフィナーレで披露されたのは、『harmonized finale』。
速すぎる時間時計の中で駆けていく演奏だが、ずっと続けばいいなと思うほど終わりが近づいてるのもわかる、久しぶりの尊い時間だからこそ、歌詞が一つひとつ響いてくる。
そして曲の終わり際、再び会場は暗転し、斎藤さんのアカペラだけでこのフレーズが歌われる。
予めことわっておくが、この曲は2014年にリリースされたシングルだ。

「be with youを懇願して どれくらいだろう
新しい時代へと橋が架かるだろう
何回だってI'm OKまだ立てるから
君を追いかけるよ その未来まで」

"SEE YOU, NEXT LIVE!"
とステージのバックに幕が掛かり、あっという間にライブは終わった。
この、ライブが終わる瞬間にフッと日常に引き戻されるような感覚にハッとさせられた。
この緩急というか、コントラストをいつも以上にハッキリと感じさせてくれるような演出は、リアルライブは尊いものなのだということを教えてくれる、ユニゾンなりのメッセージだったのかもしれない。

ロックバンドは座っても観られた。

たった1時間。
それなのに、物凄い感動と充実感に包まれた。
本当に、生きてて良かった。
マジで、大袈裟じゃなく、生まれてきて良かった。
この感覚は何物にも代えがたく、きっと二度と味わえないだろう。
久しぶりだからこそ、初めてだからこその感覚。

ユニゾンの曲のほとんどは田淵が作詞しているが、特に深い意味が込められているわけではない。
だがそんな歌詞たちが、時に意味をもって聞こえてきたり、そのときだからこそメッセージをもって響くときがある。
冒頭の『クローバー』と最後の『harmonized finale』がまさにそうだった。
メンバーの真意は分からないが、それを実感したときの感動にもまた、とてつもなくブチのめされた。

ありがとう ありがとう また会える日まで。
ありがとう ありがとう ここからまた始まってく。


③BiSH

このnoteで何度も取り上げてきたBiSHのワンマンライブに、ようやく満を持して初めて参加することができた。
2020年、1月までは前年から続いた「NEW HATEFUL KiND TOUR」を回っていたBiSHだが、世界の状況が一変してからは、彼女たちのファン="清掃員"と会えない日々が長く長く続いた。

その期間、332日。
ただ、何もせずくすぶっていたわけではなく、事務所内外の配信ライブやイベント参加をはじめ、3.5th AL「LETTERS」の緊急リリース、ベストアルバムのリリース及び全国のライブハウスへ向けた収益金の寄付、「しゃべくり007」等メディアへの積極的な露出、Ubar Eatsの配達員…と、精力的に様々なことに取り組んでいた。

2019年のフェス等でBiSHが気になり出し、今では清掃員と名乗っていいのか分からないが、FCにも加入してしまうほど急激に沼へハマってしまった自分も、そんな活動を楽しく追いかけていた。
でもやっぱりどこかでライブに行きたい気持ちが募っていて、そんな矢先についに代々木第一体育館での「REBOOT BiSH」の開催が発表された。

12/24、332日ぶりの、"BiSH再起動"。
これは行かない手は無い!と、早速FCでチケットを申し込み、無事に購入が叶った。
ただ、冬を迎えるにつれ再び第三波と言われる感染拡大がやってきて、12月にはCOUNTDOWN JAPANの中止が発表される。

しかし再起動一週間前に迫る頃だろうか、公式からライブの注意事項が発表され、感染対策を徹底し開催するという運営の強い意志が感じられた。
もちろん、当初からキャパシティは半分で行う予定でのチケット販売が為されており、当日は配信も行われるので、感染対策を講じながらそれぞれの形で楽しむことができる。
BiSHのみんなに会いたい。
清掃員のみんなに会いたい。
そんな互いの気持ちがシンクロし、ついに12/24、ライブの決行を迎えることになる。

平日だったので自分は仕事を終えてスーツのまま会場に向かい、またこれまでフェスや映像で観ていたBiSHのライブは、清掃員たちのコールや合唱ありきの部分もあったので、実感と想像が全く湧かないまた会場に入り、固唾を飲んでそのときを待った。

すると、ステージ裏のあたりから微かに、
\せーの、ちんPOー!!!!!!/
と聞こえてきた。
BiSHのライブ前恒例の掛け声だ。
すると会場からは拍手が起こり、不安な気持ちが一気にかき消された。
いよいよ、始まる。

スクリーンに、事務所社長・渡辺淳之介氏のメッセージが流れる。
本当に万全の準備をしてこの日を迎えたからこそ、どうかしっかりと感染対策をして、楽しんで欲しいとの想いがひしひしと伝わってきた。
そして暗転すると、秒単位・分単位・時間単位でそれぞれ332日という時間の長さを表し、みんなが本当にこのときを待っていたんだということを実感させられるような映像が流れ、メンバーそれぞれの「ただいま」と、6人揃っての「おかえり」の声が。

そして次の瞬間、『LETTERS』のイントロが流れ、ステージに垂らされた幕の向こうで影となったメンバーが歌い、踊り始める。
やっと、やっと会える。
そんな気持ちを募らせるように曲は進み、大サビ前に演奏がピタっと止んで、アイナのアカペラに。
緊張感が走る中、会場中を震わせる魂の歌声が響き終わった瞬間、一気に幕が降りてメンバー6人が姿を現し、大サビへ…。

332日ぶりの、BiSHと清掃員の再会の瞬間。
とてつもない感動と、物凄い瞬間に立ち会ってしまったという鳥肌が、全身を走った。
後で映像を見返して分かったが、チッチはもう号泣しながら歌っている…。

そうして幕を開けたREBOOT BiSHだが、2曲目からは『SHARR』『MONSTERS』『GiANT KiLLERS』…といった、デスボイスやヘドバン必至のパンクな曲たちでガラっと"楽器を持たないパンクバンド"たるBiSHの世界を創っていく。
それに対し清掃員たちは"心の喉ちんこ"を焼き殺すように応える。
個人的には『DEADMAN』で飛び跳ねてぶち上がるのが夢だったので、念願叶って嬉しかった。

メンバー紹介のMCではまだ緊張しているのが伝わってきたが、続く『DiSTANCE』からはまた雰囲気をクールに変え、様々な顔を見せてくれる。
頭上で○×を作るのが楽しい『SMACK baby SMACK』、わちゃわちゃ感が楽しい最新曲の『STORY OF DUTY』、BiSHらしからぬキュートな初期曲『DA DANCE!!』、激しくもしっとり沁みる『リズム』…。

今年は本当に自分自身にもいろいろなことがあったなぁと、それらの曲を聴きながら浸っていたが、いろいろ乗り越えてきたその景色の先、ステージの上にはBiSHがいて、その瞬間を多くの人たちと共有している。
まさに自分だけの景色。
原曲とは大幅に違うストリングスアレンジの『My landscape』が本当に美しくて、ただただ感動していた。

そしてライブはハイライトへ。
これまでも喜怒哀楽を共に過ごしてきた大事な曲『オーケストラ』では終盤、アイナのパートで会場中から真っ赤なサイリウムが一気に灯るサプライズが。
有志の方々による、3日後に誕生日を迎えるアイナへ向けてのものだったようだが、涙で感極まって歌えなくなってしまうという一幕も。
自分も感動してもらい泣きしそうだったが、やっぱりこういう瞬間はステージと観客とが向き合うライブじゃないと味わえない。

続く『ALL YOU NEED IS LOVE』では、これまでのように皆で肩を組むことはできなかったが、気持ちで繋がって皆で横に揺れている、そんな光景にグッときた。
だから次の『サラバかな』でも、「その手を離さないよう」と皆の心の合唱が聞こえてきた気がした。

ラストスパート、『beautifulさ』や『BiSH -星が瞬く夜に-』では自分もさらにBiSHたちに届くように思いっ切りトゲトゲしたり、踊りハジけた。
6人の涙混じりのMCも含め、本当にキラキラ輝いたような時間が終わり、今年はなかなか思うように旅行とか行けなかったけど、最後の最後に絶景を見ることができて、本当に生きてて良かったと思えた。

それは、BiSHと清掃員、皆で作り出した景色。


④TRICERATOPS

CDJが中止になってしまい、希望を失いかけた中での、2020年ライブ納めとなったライブは、活動再開を果たしたトライセラのツアーファイナル。
約2年半、各々ソロ活動等で演奏や表現を磨き、再集結した10月のZepp DiverCityでのライブはチケットが取れず、配信で見届けたが、今回個人的にも2年半ぶり以上の時を経て、ようやく3人に再会できることとなる。

会場は新木場STUDIO COASTだったが、様々な感染対策が講じられており、特に印象的だったのはライブハウス内の室温。
本来なら冬でも空調が効きわたり、しかも多くの体温が密集する熱気で暖かいものだか、ディスタンスを考慮して間引かれた座席配置に、常に行われている換気のおかげでめちゃめちゃ寒かったのだ。

しかしそれを越えてくるのがトライセラ。
いざライブが始まると、もうツアー3本目かつ、活動再開後に東京でライブをやるのは2回目なので、初っぱな『UNIVERSE』でスローに始まったのは意外だったが、徐々にギアを上げていく3ピースサウンド。

『Fever』のイントロが鳴った瞬間、後方の席だったのもあるが、COAST中の腕が上がり、皆が跳ね出す光景があまりに感動的で、パーっと明るくなる照明とも相まって、なんだか希望の光が沸いてくる象徴のような感じで、気付いたら寒さを忘れていた。
そこに追い討ちをかけるような間奏のギターソロがまたエモいの何の…。

その後も『Gothic Ring』『Raspberry』と、緩急を織り混ぜながら定番曲を畳み掛けると、続く『Guatemala』からはアコースティックセットにチェンジしたり、『Happy Saddy Mountain』からは唱さんがキーボードを弾き語ったりと、さらに引き出しの多さを見せてくれるあたりは、相変わらず流石。

そして個人的には『2020』を2020年に聴くというのが単純に夢だったところがあったのだが、いろいろあった2020年、そしてこの1年を乗り越えて2021年へ…と、今年を振り返ったり来年に想いを馳せながら聴いていたらグッときた。
そこからの『Fly Away』がまたよりメッセージを際立たせる。

グッときた後はもうひたすら踊るだけで、『Mirror』のアウトロから林さん・佳史さんのセッション、そして『Groove Walk』~『Rock Music』のメドレーは、改めてロックバンドとしての強さをこれでもかと見せつけてくれたのが最高にカッコ良くて、観てるこちらも今年一番身体が動いた。

そして1年の終わり、本編ラストに『shout!』を持ってきてくれたのは、なんだか凄く感慨深かった。
次は心の中だけじゃなくて、皆で大声でシャウトしたいよね。
そんな祈りにも似たような想いに応え、その瞬間は心の中で思いっきり叫んだ。
トライセラもまた、ライブ納めとして全てを出し切るような気概で、Wアンコールまで届けてくれた。
そのエネルギーはまさにロケットに乗って月まで行ってしまうかのようだった。

2020年、最後の最後に大逆転勝利できたような、そんな高揚感と爽快感。
今回のツアーでは同期を使わずに3人の音だけで届けるという拘りから、今まで観てきた以上に洗練されたギタードラムベースを堪能できたけど、そんなトライセラの正真正銘のロックが、つらかったこの1年の、何もかもを晴らしてくれた。

ライブ中、自分の隣に息子さんに連れられて来たのか、親子でファンなのか、おばあさんだったんだけど、ギターソロに合わせてエアギターしてて、めちゃノリノリで楽しそうだったのが印象的で。
やっぱり音楽は必要だと思ったし、そんな光景は絶対に奪われちゃいけないと思った。

唱さんもMCで「嫌なことも多いご時世だけど、そこにばかり引っ張られないで、自分で良い方向にチャンネルを合わせてこうぜ!」というようなことを話していて、やっぱりどんな状況でも自分は好きな音楽とともに生きていきたいなと思った。


以上、すっかり長くなってしまったけれど、2020年、特に心に残ったライブを紹介させていただきました。
ライブの数が減ってしまった分、その一つひとつが濃密な時間で、新たな楽しみ方に出会えたり、自分の意識の変化として、より一層ライブの瞬間一秒一秒を大切にしたいなと思えるようになった。

既に1ヶ月が過ぎようとしているけれど、2021年、今年はどんなライブに出会えるだろうか。
こんな時代でも、いや、こんな時代だからこそ、相も変わらずその楽しみを忘れずに過ごしていきたい。