記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【ネタバレあり】2024/7/7 Mr.Children miss you arena tour @ららアリーナ 東京ベイ ライブレポ

Mr.Childrenがアルバム「miss you」を引っ提げたホールツアーが3月、奄美大島での追加公演をもって無事に完結。
このツアーについては以前、東京公演のライブレポを綴ったのでそちらを見ていただければと思うが、アルバムの世界に寄り添いながら、"I miss you"の想いが前面に出たようなライブだった。

コロナ禍、ライブ活動の中断や制限を余儀なくされた約2-3年間で募った「会いたい」という想いを爆発させるかのようなものも感じられたライブ。
しかし一方でより強くその想いが募ったファンが大多数いたのも事実で、SNSやファンクラブ・Father&Motherの「誰も得しないラジオ(仮)」で、「チケットが取れなかった」という声もたくさん見聞きした。

そういった声を受けてか、Mr.Childrenは次なるステージとしてアリーナツアーを計画。
「Mr.Children tour 2024 miss you arena tour」というタイトルで、"tour"という単語が2回も繰り返されてることが気になる(笑)が、"I miss you, I miss you, I miss you"と曲の中でフレーズを繰り返すように、何度だってツアーを回りたい!まだまだツアーしたい!みんなに会いたい!という想いが溢れてしまっているのだろうか。

そう、引き続いての「miss you」を引っ提げたツアーである。
そのような状況でもまたありがたいことに、自分はこのアリーナツアー千葉公演の2日目もチケットが当選し、参加することができた。
行けるからにはしっかりと余すことなく体感したいという気概で臨み、そして行ったからにはしっかりとこの目と耳で受け取ったものを残しておきたい!と、今回もレポを書いている次第。

ただし前回同様ツアー中での投稿となるため、ネタバレを避けたい方は後に改めてツアーに参加した後・ツアーが終わった後にまた読んでいただけたらと思います、悪しからず。

(以下、ネタバレ注意)






























自分が参加したのはツアー2本目、7/7(日)ららアリーナ 東京ベイ公演。
見慣れない会場名だと思うかもしれないがそれもそのはず、こちら今年できたばかりの会場で、なんとこけら落としを任されたのは、我らがMr.Children!
初めてこの会場で音を鳴らすアーティストとして選ばれたのだ。

関東でのアリーナ公演といえば、今回もセッティングされている横浜アリーナや埼玉スーパーアリーナで行われることが多く、アーティストによっては幕張メッセを使うことも多いが千葉ではMr.Childrenはあまりワンマンをやらないイメージがあった。

それだけに、お隣の系列商業施設「ららぽーとTOKYO-BAY」では熱烈な歓迎ムードで、ライブ当日は館内中のBGMがMr.Childrenで溢れており、タワーレコードを中心にフォトスポットやメッセージボードなど様々な施策が企画されていた。

会場周辺ではツアートラックの展示があったのと、グッズ売場としてサブアリーナが開放されていたくらいだったので、開場までは多くのMr.Childrenファンがららぽーとで各々の時間を過ごしていた。
そしていざ時間になり入場してみると、横アリやたまアリよりはやや小さいかな?と感じる印象の会場で、アリーナ席後方の自分でもステージはそこまで遠くなく感じられた。

前日にこけら落とし一発目のライブが既に行われているとはいえ、このツアーに初めて参加する人がほとんどであろう(近年Mr.Childrenのツアーに複数公演参加することは極めて難しくなっている…)から、会場には緊張感が漂っていた。

そんな中定刻を迎えると、巨大なLEDスクリーンにオープニング映像が流れ始める。
そう、ホールツアーと大きく異なるのは、こうした映像演出があることだ。
アルバムのブックレットにもある森や草原、そしてティザー映像でも印象的だった、大海原の水面がキラキラと輝いているシーンだっただろうか…?

当然1回しか観ていないので記憶が曖昧で申し訳ないが、その詳細は映像化が叶った際に改めて確認したい。
そう、ここから始まるライブは、ホールツアーに参加済みの自分でさえ想像を遥かに越えるものとなっており、次々と記憶が塗り替えられてしまうくらい、衝撃の連続だったのだ…。

やがて全面ホワイトに染まったスクリーンを背景に、メンバー4人とサポートKey.SUNNYさんが登場し、そのシルエットが逆光によりくっきりと各バンドセットの配置についたことが確認できる。

そして次の瞬間、ギターが、ドラムが、ペースがいきなり激しく躍動し始める…!
ジャンジャカジャカ  ジャンジャカジャカジャカジャカ…と切り裂くようなギターリフと、地響きのように鳴るドラム、ベース。
聴き覚えのあるそれは紛れもなく、アルバム「HOME」のオープニングを飾る『叫び 祈り』であり、桜井さん(Gt&Vo.桜井和寿)の歌詞にはならぬ叫びこそ打ち込まれた音源だったが、生バンドでその演奏を喰らうとかなり迫力が増して聞こえる。

2007年のリリース直後、「HOME」を引っ提げたツアーでも披露されることが無かったインストゥルメンタルなので、まさかこのタイミングでいきなりライブの冒頭で披露されるなんてマジかよ!…と面喰らい、ここからウェイクミーアップしちゃうのか!?水平線がおひさまとキスしちゃうのか…!!?などと興奮していると、やがてステージを檻のようなものが囲い、今度は静かにアコギのリフが始まり、『I MISS YOU』へ。
ホールツアーでは披露されなかったので、ここでライブ初披露となるが、アルバムタイトルにも紐付く重要な曲である。

間奏でバンドの音が躍動していくと同時に桜井さんの泣くようなシャウトも音源より強く響いてくる。
何度も"I miss you, I miss you, I miss you"と繰り返し歌ってきた自分を"殺したいくらい嫌いです"というラストの歌詞が衝撃的だが、桜井さんは特にここを強調して歌っていたような気がする。

どうしてそんなこと言うの…?と思ってしまいがちだが、30年を越えるキャリアを走り、各時代でコンスタントに作品をリリースし続けることは、その裏で想像を遥かに絶するような苦悩や葛藤があるのだろう…。
ミュージシャンに限らずとも、誰しもが時に自分が嫌になり、うんざりし、自暴自棄になってしまうこともあるだろう。
冒頭の『叫び 祈り』はその苦悩や葛藤を表していたのかもしれない。

そんな、叫び出したくなる気持ちをさらに解放させるように、不穏なイントロとともにまた桜井さんがシャウトし、『REM』へ。
檻のようなセットはここで無くなるが、
"出口を探しているんですが あなた知らないか?"
という歌詞からして、まだ苦悩や葛藤から抜け出せずにいるのだろうか。
ライブでの演奏はかなり久しぶりとなったが、この攻撃的なロックサウンドこそMr.Childrenの真骨頂である!と言わんばかりに、アリーナいっぱいにギター、ドラム、ベースが響きわたり、会場のボルテージも上がっていく。

自分自身も徐々にテンションが高揚していくのを感じたが、ガラリと切り替わるようにまた次のギターリフが始まると、「ららアリーナァ!!」と桜井さんが叫び、会場はさらに歓声を上げる。
ジャキジャキと切るようなギターリフ、いわゆるカッティングからスタートしたのは『アンダーシャツ』。

自分がカッティングという言葉を知ったのは、個人的にMr.Childrenの次に長く追っているBase Ball BearのGt&Vo.小出祐介氏の影響で、それこそ彼が「EIGHT JAM」の前身番組でも語っていたが、Mr.Childrenのライブアルバム「1/42」の『アンダーシャツ』をなぞるようにギターを練習しカッティングを習得したという。
3ピースのギタボとして今でも切れ味鋭いカッティングを響かせてくれている。

この曲ではそんなカッティングを田原さん(Gt.田原健一)が担い曲を展開させていくが、間奏では桜井さんの長いギターソロが印象的。
いつかのインタビューでは本人がこの『アンダーシャツ』のギターソロをお気に入りとして挙げていたが、改めてライブで聴くと半ばアドリブのようなアレンジが効いてめちゃめちゃカッコいい。
半音下げのアレンジだったが、こちらもかなり久しぶりの披露となった。

そして続く『Everything (It's you)』もまた個人的にはギターが印象的な曲だと思っているが、それは近年2マンライブ「UNITE」にてB'zとこの曲をコラボし、あの松本さん(B'z Gt.松本孝弘)がギターソロを弾いていたのが記憶にこびりついているので尚更であるが、今回はまた間奏で田原→桜井と鮮やかなギターソロリレーが展開された。
観客にもマイクを向けてくれながら、皆で\ステェェェェーーーーイ/と叫ぶ解放感は、コロナ禍を経て声出しが解禁された今、より強く感じられる。
桜井さんも心から「どうもありがとう!」と嬉しそうに叫んでいた。

ここでMCへ。
桜井さんが「Mr.Childrenです!」と叫び、JEN(Dr.鈴木英哉)がドラムで合いの手を入れると、会場が歓びの声を上げる。
こんな当たり前のやり取りですら、アリーナの規模では久しぶりなのでグッとくる。

その歓声には「やっと会えたね!」という感慨も込められていたように感じたが、Mr.Childrenもまたこの日を待ちわびていたことだろう。
「一秒でも、一瞬でも早く皆さんに会いたいという気持ちでした!なので久しぶりに、そんな想いの詰まったこの曲を…」と披露されたのは『靴ひも』。
イントロが鳴った瞬間、これまたひときわ大きな歓声が上がったが、この曲もかなり久しぶりに演奏されたからであろう。

ホールツアーでも『常套句』や『声』など、実は"I miss you"の気持ちが歌詞に表れているのだと実感させられる既存曲たちが演奏されたが、靴ひもも結ばずに君の待つ場所へ…と衝動的に駆け出していくこの曲もまた例に漏れずだ。

曲終わり、SUNNYさんがゆったりとしたアレンジで鍵盤の音色を響かせながら、やがて『Fifty's map ~おとなの地図』へと繋げていく。
『靴ひも』『声』『常套句』…と、昔からずっと"I miss you"の気持ちを歌にし続けてきた自分が時に"殺したいくらい嫌い"になり、"時々何もかも投げ出したくなる"。
桜井さんでも、Mr.Childrenでも、当たり前だが我々と同じような気持ちになるときがあるのだな…と感じるが、この曲ではそんな想いを"似てる仲間がここにもいるよ"と、そっと優しく肯定してくれる。
50代を迎えても尚、等身大の人間として精一杯生きるMr.Childrenを、間奏で徐々に高まっていく演奏で痛いほど感じ、それが不思議と勇気をくれる。

続く『青いリンゴ』ではまたガラリと爽やかな雰囲気に。
ホールツアーでは、間奏のサックスソロを山本拓夫さんが務めてくれていたが、今回はサポートがSUNNYさんのみの5人編成なのでそこは打ち込みの音源だった。
しかし不思議にもCD音源と違うようなライブ感があったのは、ライブ用にサックスを演奏し直してくれているのか、ホールツアーのライブ音源を使っているのか…(気のせいだったらスミマセン)。

ここでまたSUNNYさんのソロアレンジへ。
もはや5人目のメンバーだと言っていいほどMr.Childrenのライブに彩りを与えてくれているが、どんな曲が来るだろう?というワクワクも増幅させてくれている。
そして『つよがり』へ。
この曲は物理的な距離というより、心の距離で"君"に近付きたいという心情を歌っているのだと思うが、そうした意味ではこれも"君に会いたい"="I miss you"という気持ちに近いような気がする。

そしてそんな"I miss you"の気持ちをより強く表現するかのように、『Are you sleeping well without me?』からアルバム「miss you」の世界へさらに深く潜っていく。
スクリーンは古びれた部屋の中を表すような映像に切り替わり、その部屋の隅にひっそりと置かれたかのようにステージの端にセットされた椅子に桜井さんが腰掛けて歌う。
この2.5次元的な演出はホールツアーにはなかったアリーナならではのものだ。

そして桜井さんがステージ反対側に配置されている椅子へ移動し、また腰掛けたところで『LOST』へ。
ホールツアー同様田原さんがアコギを弾き、ナカケー(Ba.中川敬輔)は一旦ステージからはけ、ボーカル・ドラム・キーボードという編成。
Mr.Childrenのライブは桜井さんの歌を前面に出し、それをバンドメンバーがバックアップするというスタイルだが、ホールのレポでも書いた通り、まさに"LOST"=失って初めて気付くベーシストの存在の大きさ。
4人編成の少しもの寂しく渇いた音は、ラスサビで再びナカケーが合流しベースラインが加わった瞬間、一気に躍動感を増す。
ああ…やっぱりこれがバンドだなぁ、これがMr.Childrenの音だなぁと改めて実感する。

続く『アート=神の見えざる手』は、ホールでは影絵を使ったような演出が印象的だったが、アリーナでは余すことなくスクリーンを使い、迫力のある映像でより一層曲の狂気感を引き立てていた。
そして何よりも桜井さんの表現力。
ここでも椅子に座ったまま、まるで記者会見や週刊誌のインタビューで発言をしているかのような、時に攻撃的なカメラ目線で、時に立ち上がって歩き回り、語気を強めながらラップする姿には圧倒されるばかりだった…。

再び椅子に座った桜井さんの頭上に血の雨が降り注ぎ、真っ赤に染まるような映像。
そこにやがて誰かが傘を差し出すようなシルエットから、『雨の日のパレード』へ。
この曲ではナカケーがウッドベースを演奏していたが、Mr.Childrenのライブではあまり見ない光景なので驚いた。
だが次第にズーン…と響くウッドベースの音が耳に馴染んでいき、心地好くなっていく。
そしてラスサビ、"見上げれば Rainbow"の歌詞とともにカラフルな映像が拡がっていくスクリーンに、何だか泣きそうになってしまった。

中盤からここまでのパートはホールツアーの流れを踏襲しているように思えたが、再び雨音のBGMが流れ、一瞬「Atomic Heart」の『Rain』か?と思うようなその音は、次第に強まっていき、やがて川のせせらぎのような音に変化していく。

そしてSUNNYさんが聞き覚えのあるイントロをそっと鍵盤で叩き始め、なんとここで『血の管』へ。
2016年のホールツアー「虹」以来8年ぶりの演奏だろうか。
アルバムの流れと予想をぶったぎるようにして、でももの静かに、幻想的に、ただただ鍵盤の音と桜井さんの絞るような声だけが、だだっ広いアリーナの空間に溶けていく。

"あの夜を想いだす 独りを感じる"………

そんな歌詞から漂うもの寂しさはやはり「miss you」の世界観とリンクしているように感じるが、静寂を残したまま田原さんと桜井さんがそっと息を合わせるようなアコギのユニゾンから『Party is over』へ。
再び「miss you」の世界に戻るが、不思議と違和感がなく通底しているように感じるのは、やはり歌ってきていること・鳴らしている音の根幹が32年間揺らいでいないことを示しているようにも感じる。
それでいてその根幹がしっかりしていれば、誰もが沸き上がるような明るい曲から、こうした孤独に寄り添うような曲まで、いろんなタイプの音楽を奏でることができる。
そこがMr.Children最大の強みであり凄みだと、ライブ一つで思い知らされる…。

そんな静けさの中から再びベースが踊り始め、また沸々と高まっていく音で会場の空気を変えたのは『We have no time』。
次第に手拍子の音も大きくなっていくが、やはりこうしたダンサブルな曲はアリーナのような大きなライブ会場が映える。

そしてバンドの躍動感を保ったまま『ケモノミチ』へ。
今回もやはりアルバムプロモーション映像のときとは違い、アコギを掻き鳴らすのは田原さん。
そしてツアーのティザー映像や冒頭でも流れたお馴染みの大海原をバックに、今回は正真正銘、エアーではなく生演奏でベースやドラムも躍動し、桜井さんが叫ぶように歌う。
これぞ、"鼓膜でくらうロックンロール"だ。

そんな力強いバンドの音や『ケモノミチ』という曲名からは大地を踏み締めて歩いていくイメージが浮かびがちだが、映像では虹色の鳥が大空を羽ばたいていくシーンが印象的だった。
それにしてもこのカラフルな鳥、どこかで見たことがあるような…。

とアウトロで物思いにふけっていると、やがて『365日』へ。
バンドで演奏されるのは同じく半音下げでアレンジされた「Thanksgiving25」のツアー以来、かなり久しぶりだが、4月に百年後芸術祭の一環でKURRKU FIELDSにて開催されたライブ"通底縁劇・通底音劇"「super folklore」で櫻井和寿としては歌われたばかり。
そこでは突然のサックスソロ披露もあったので、まさかここでも…!?と緊張しながら間奏を待っていたが、当の桜井さんは何事もなく音に揺れていたので、次のサックスお披露目はスカパラ甲子園になるのか、どうなるのか。笑

そんなズコーッをよそに優しく展開していくサウンドの余韻を残しながら、続いて『記憶の旅人』へ。
今年5月に公開された映画「青春18×2 君へと続く道」の主題歌なのでライブでは初披露となったが、びっくりするぐらいストレートに映画に寄り添った歌詞と、象徴的なあのランタン上げのシーンを再現した映像に、映画のストーリーが蘇ってきて懐かしい気持ちになった。

怒涛の「miss you」&新曲ゾーンを抜け、ここでMCへ。
「楽しんでますかー?」の呼び掛けに沸き上がる会場。
「ららアリーナ、こけら落としを務めさせていただいております!
もう昨日もやってるんだけど…笑。
そこで今回、改めて"こけら(杮)"という言葉の意味をずっと考えてました。
木造建築が完成した直後の木くずを"こけら"というらしく、最初にそこで公演を行うことでその木くずを落とすという意味で"こけら落とし"というそうで。
でもららアリーナを見渡しても木造らしき箇所は見当たらず、鉄骨やコンクリートだらけですが…笑。
皆さんの元に木くずは降ってこないけれど、今日はたくさん良い音楽を浴びてもらいたいと思ってます!」
言葉1つの意味合いを深く真面目に考えて掘り下げるのはいかにも桜井さんらしい。笑

「あと、今日(7月7日)は七夕の日でもありますね!
…だから何だって話ですけど。笑
今日もこうして、この場所に集まれたこと、そんな皆さんを讃えるようにこの曲を!」
と、ホールツアーではアンコールに披露された『The song of praise』へ。
その当時は、久しぶりに皆でコール アンド レスポンスをする景色が感慨深かったが、アリーナ規模になるとその感動は倍増。

スクリーンには\Oh-! Oh-!/と歌う客席がたくさん映し出され、それと同時にMr.Children4人の顔写真がどアップで歌っているようなコラージュが\Oh-! Oh-!/の吹き出しと共に被せられ、見てると思わず笑顔になってしまう。笑
それに合わせて実際にメンバーも口ずさみ、特にJENは弾むような声で合いの手を入れる。
なんて幸せな景色なのだろう…。
楽しさと同時に、ふと油断すると涙が出てきてしまうような。
そんな、ここにある景色を讃えたい。
皆と合唱しながら何度もそう思った。

「久しぶりに聴いてみたらいいな!と思った曲です、『End of the day』~!!」
ネイティブにも負けないような発音で高らかに曲タイトルを叫ぶ桜井さんに、またまた沸き上がる会場。
この『End of the day』もライブで演奏されるのはかれこれ「(an imitation) blood orange」のツアー以来、11年ぶりである。

"Oh No! Oh Yes!
あと一歩のとこまで きっと来てる"

当時のツアーはちょうど大学4年の就活が終わるか終わらないかというタイミングで参加していただけに、この曲の歌詞にものすごく鼓舞されたのを未だに覚えていて。
そしてあれから時を経て10年以上、社会人としてやってる今は今で、ちょうどまた仕事で試練に直面しているタイミングなので、またドンピシャで刺さりに刺さり…。

よくいろんな人が言っている「ミスチルはいつどのタイミングに聴いても自分を必ず救ってくれる曲がある」というやつ、これはマジ。
曲を聴く度に、ライブに行く度に実感する。
気付けば手拍子しながら何度も何度も\Oh No! Oh Yes!/と叫んでいた自分の目に涙が滲んでいた。

そして間髪入れずに鳴った『未完』のイントロには、さらにグッと来ざるを得なかった…。
この曲にはMr.Childrenというバンドとしての決意や覚悟、また個人的にも初めて聴いたときの衝撃や、4人でこの曲を演奏する姿に涙したあの日、そして過去最多のツアー参加を数えた2015年のスタジアムツアーのかけがえの無い想い出…いろんなものが詰まり過ぎている。

もしかしたら、先述の映像に出てきたあのカラフルな鳥は、この曲の歌詞にも登場し、その未完ツアーの映像にも出てきたあの鳥だったのではないか…!?
と、ここで自分の中の伏線が回収され合点がいった。
"鼓膜でくらうロックンロール"たる剥き出しのバンドの音が、さらに強く突き刺さる。
そして間奏で一旦その音が止み、桜井さんの語りが入る。

「2年前にデビュー30周年を記念した「半世紀へのエントランス」というツアーを回り、そして50周年を目指して走り始めました。
辿り着けるかどうか、どこまでいけるか分からないけれど、今は楽しく、いい状態でバンドをやれている実感があります。
どこへでも行ける気がしています!
皆さんもそう、何だってやれるはず。
でも日々のいろいろで、普段はたたんでいる羽を忘れてしまいそうになったときには、またここに戻って来てください。
また一緒にライブやりましょう!」

記憶の断片をかき集めているのでニュアンス的な話になるし、ひょっとしたら誇張になってしまっているかもしれない。
正直、ここのMCは感動の凄まじさに、はっきりと正確には覚えていない。笑
けれど、おおよそそんなメッセージだったと思う。
一通り話し終えた後、また桜井さんがそっとギターリフをしながら、1オクターブ下げでささやくように歌い始める。

"「いっそ飛べない鳥の羽なんか もがれちまえばいい」
そう ほざいてみたって試練は手を緩めちゃくれない"

そして次の瞬間、桜井さんの声が、ギターが、そしてバンド全体の音が一段階ギアを上げ、一気に解き放たれる。

"だから もうユニフォームを脱いで 脱いで
自由 自由 自由!!"

\\ 自由!! 自由!! 自由!! //

原曲の倍、渾身の力を込めて叫ぶ桜井さん。
まさしく前述のMCの通り、まだ何だってやれる!どこへでも自由に飛んで行けるんだよ!!と言ってくれているように。
もしくは50周年="胸の中の約束の場所"へと動き始めた自分たち自身に向けて、鼓舞するように…。
そのあまりの心強さにたまらない気持ちになり、とうとう瞼のダムが決壊してしまった。

そして桜井さんはブルーフラワーのエレキギターを携えたまま、『終わりなき旅』のイントロを掻き鳴らす。
2年前、「半世紀へのエントランス」のスタジアムツアー1曲目に決意表明のようにして鳴らされたこの曲。
その意志をより強固にするように、まだまだ始まったばかりの旅の途中、その道を確かめるかのように、今回は本編ラストに演奏されることとなった。

時に自分を"殺したいくらい嫌い"だと思ってしまう苦悩の檻…いや、鳥籠をいざ飛び出してみると、まだまだ外の世界は捨てたもんじゃないと思えるような、素晴らしい景色が広がっていたりする。
特にここ数年は、Mr.Childrenも自分たちファンも、コロナ禍にもがき苦しんだ日々だった。
何度も孤独に苛まれ、"I miss you"の気持ちが募るばかりだった。
それでも希望を捨てず、前に進み続けていたら、やがて再び皆でコール アンド レスポンスができるような、讃えたい!と思えるような景色に出会うことができた。
いいことばかりでは無いし、嫌な事ばかりでもない。
きっと人生はこの繰り返しなのだろう。
だから、

"息を切らしてさ 駆け抜けた道を 振り返りはしないのさ
ただ未来へと夢を乗せて"………

ラスサビ直前のこの歌詞を、桜井さんは敢えてマイクから口を離し、ららアリーナに集った自分ら観客に歌わせてくれた。
"閉ざされたドアの向こうに"、また進んで行けるように。

そんな会場の声を一身に受け、進んでいったラスサビ。
バンドの音は凄まじいパワーをもって爆発し、桜井さんも、もはや歌詞にならない想いをシャウトに変えた。

大歓声と拍手を背に「Mr.Childrenでした!」と一旦ステージを後にするメンバーたち。
もちろんすぐにアンコールの手拍子が巻き起こるが、冒頭の『叫び 祈り』も含めて数えてみるとここまでで23曲。
この時点で既にホールツアーのアンコールまで含めた曲数に並んでいるが、体感的にはあっという間だった。
MCも曲中に挟まれていたり、やや短めだったりしたのもあるが、今回は今まで以上に曲にメッセージを込めてくれていたように感じた。
それぐらいストーリーを感じるというか、ドラマチックなセットリストの本編だったように思う。

そして再びステージに登場したのは、アコギを携えた桜井さんとSUNNYさん。
ホールツアーに続いて今回もこの2人でアンコールの1曲目を担うようだ。

「これからお届けするのはアルバム「Q」に収録されている『Hallelujah』という曲です。
この"ハレルヤ"という言葉は神を讃えるときに使うものですが、そうした宗教的な意味合いではなく、祈りに近いような気持ちでこの曲を歌っているような気がします。」
と、もう24年も前にリリースした曲に込められた意味を丁寧に紐解きながら、弾き語りのアレンジで歌う。
そしてラスト、まさに何度も何度も祈るように"ハレルヤ"をひたすら繰り返す場面で田原さん・ナカケー・JENも再び登場するのだが、ここではJENのドラムのみならず、田原さんとナカケーも"ハレルヤ"という言葉に合わせて太鼓を叩くという、これまた珍しい形の演奏を披露してくれた。

そして間髪入れずにSUNNYさんがキーボードでアコーディオンっぽいイントロを表現し、『優しい歌』へ。
ホールツアーではそれこそ桜井さん・SUNNYさんの2人編成でBank Bandのアレンジに近い形で歌われたこの曲だが、今回は原曲通りのバンドアレンジ。
明るく前向きにドライブしていく曲調と、元気に響き渡る\Oh-! Oh-!/のシンガロング、やっぱりこれだよな~!と感じるし、同じ曲でもアレンジが違うだけで全然違った印象に聞こえる。

楽しかった時間はあっという間。
そんな時間を惜しむかのように、SUNNYさんがゆっくりと鍵盤でイントロを鳴らしたのは『Sign』。
やっと戻ってきたコール アンド レスポンス。
昔は当たり前だった、そんなライブの"ありふれた時間が愛しく思えた"し、あとわずかでライブが終わろうとしているのを悟ると寂しい気持ちにもなるけれど、この"残された時間"を"大切にしなきゃ"という気持ちでこの曲を噛み締めた。

曲終わりには桜井さんも、
「『終わりなき旅』を歌ってるとき、『Sign』を歌ってるとき、ふとお客さんの顔を見ると泣いている人がいて、油断するともらい泣きしそうになります。
そんな一瞬一瞬を、まさに何ひとつ見逃したくないと思いながら歌ってます。」
と語ってくれたが、それはこちらも同じだ。
バンドの一挙手一投足、一音一音を、何ひとつ見逃したくないし、聴き逃したくない。

それでも、名残惜しくも終わりは来てしまう。
「最後の最後は、一番新しい曲を!」と、ライブのラストを飾るのは、まだ未発表の最新曲『in the pocket』。
これから公開される予定のアニメ映画「きみの色」の主題歌に決まっており、その予告編でチラっと聴いたときは明るくポップに跳ねる曲の印象だったが、いざ初めてフルで聴いてみると、どこか切なさも感じられたし、バンドがテーマの映画ということもあり、Mr.Children4人の音が強く前面に出たような曲だった。

曲終わり、桜井さんが思わず「終わっちゃったー!」と漏らしていたが、それだけこの日も全身全霊で届けてくれたんだなと感じたし、本当にあっという間だった。

- 7/7 Mr.Children tour 2024 miss you arena tour @ ららアリーナ 東京ベイ セットリスト -

01.叫び 祈り
02.I MISS YOU
03.REM
04.アンダーシャツ
05.Everything (It's you)
06.靴ひも
07.Fifty's map ~おとなの地図
08.青いリンゴ
09.つよがり
10.Are you sleeping well without me?
11.LOST
12.アート=神の見えざる手
13.雨の日のパレード
14.血の管
15.Party is over
16.We have no time
17.ケモノミチ
18.365日
19.記憶の旅人
20.The song of praise
21.End of the day
22.未完
23.終わりなき旅
en1.Hallelujah
en2.優しい歌
en3.Sign
en4.in the pocket

演奏曲数が増えた分、メンバー4人全員が喋ったホールツアーとは違いMCは少な目だったが、今回はその分バンドの演奏に想いを込めてくれていたのがひしひしと伝わってくるライブだった。

特に『未完』曲中のMCにもあったように、半世紀へのエントランスをくぐり抜けたその先も、まだまだ止まらずに駆け抜けていこうとする4人の意志とパワーに、良い意味で完全にやられてしまった。
あんなライブを見せつけられたら、自分も頑張らないわけにはいかないじゃないか…と。

この先、どんなにつらいこと、しんどいことがあっても、この日を、そしてそんなMr.Childrenの勇姿を何度も何度も思い出して、乗り越えて行こうと思えた。
そんな、鼓膜と心にくらうロックンロールをありがとう。