シェア
葉月 陽
2021年3月11日 09:03
その会議室には余計な調度品はなく、ただ中央に無機質なテーブルだけが置かれていた。床に塵一つなく清潔ではある。だが、やはり全体としては清潔さよりも無機質という印象のほうが目につく。一方の壁には丸い窓があり、そこからの光が部屋の中央に置かれたテーブルを照らしている。 窓の外に目を向けると、白く渦巻く大気に一部を覆われた青い星が大きく見えている。地球だ。窓の外に地球を眺めるこの人工的な部屋は、地球の
2021年3月10日 19:09
その日は年の瀬にあってもマフラーがいらないほどの暖かな日だった。だがそれは陽のあたる場所にいるときの話であって、日陰に入れば寒さは身にしみる。公園のよく目立つ位置に孤独に立ち尽くす時計は公園の規模に見合った白いポールの簡素な丸い時計で、その針は午後二時半を告げていた。 公園から通りを隔てた建物の二階にあるファミリーレストランからは、まるで罰で儲けるようにポールに掲げられた時計が寒風に耐える様が