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歌舞伎を好きな理由

歌舞伎鑑賞は私の趣味の中でも新しく、趣味歴4年目くらい。特にここ2年くらいでよく見るようになった。
2019年は平均すると月1くらいで見に行っている体感だが、友人に「歌舞伎の何が好きなの?」と言われると、意外とうまく表現できなかったので、まとめてみる。

歌舞伎との出会い

私の歌舞伎との出会いは、歌舞伎好きの叔母が連れて行ってくれた大学二年生か三年生の時。「高尚」「値段が高い」といったイメージを持っており、敷居が高かったの一言につきる。
やはり初回の感想がポジティブかネガティブになるかは、次回また見に行きたいかに直結すると思うので、友人を連れて行く際はどのような演目を選べば楽しんでもらえるかは結構気を使う。
ちなみに記念すべき初回歌舞伎の目玉演目は、玉三郎の「壇浦兜軍記 阿古屋」だった。『平家物語』が好きで、琴、三味線、胡弓を弾きこなす姿に私がハマらないはずがなく、叔母にはとても感謝している。

1. 様式美 - 非日常空間

歌舞伎という言葉の自己連想ゲームを行うと、まず思い浮かんだのが、「様式美」
東銀座の歌舞伎座の建物を目に入れた瞬間から非日常の空間は始まるのだ。歌舞伎座の中は花道があり、定式幕(黒、緑、柿色)がある。舞台が始まる前の高揚感をいつも感じている。
そして何より幕が開ければ演目の中の、化粧、衣装、見得、台詞、大向こう(成田屋!高麗屋!といった屋号や、待ってました!といった掛け声のこと)に引き込まれる。歌舞伎の内容的な敷居は決して高くないと感じているが、こういったお作法は慣れるまでは十二分に楽しめないとは思う。逆にある程度ルールがわかってくれば、「この化粧は云々」「このやりとりは云々」というのが「あぁぁ〜〜」となって楽しめるのである。

2. ストーリー

自分が好きな話・演目を、数多とある話の中から見つけることができるのも好きだ。歌舞伎は通常「昼の部」「夜の部」と分かれていて、各部はバラバラの話が3つ詰め合わせになっている時や、長い話が三幕に分かれて上演される時などがある。毎回行く度に違う演目を楽しめ、同じ演目を違う役者で楽しむことができる。歴史の中で積み重なり、生き残ってきた珠玉の話がつまらないわけはなく、ハズレの演目かもしれないというリスクは総じて低い。とはいえ人により好きなタイプの話は異なるので、いくつかあげてみる。

時代物
江戸時代から見た時の「時代劇」、特に鎌倉時代や戦国時代の内容が多い。歌舞伎の三大名作とされる、「仮名手本忠臣蔵」、「義経千本桜」、「菅原伝授手習鑑」は全てこの時代物。古めかしい台詞でイヤホンガイド(台詞を現代語に同時通訳)が必須アイテム。一方で古典と言われるだけあり、話の筋は心動かされるものが多い。

世話物
江戸時代の現代劇で、町人の生活や遊郭を描いたものが多い。こちらはイヤホンガイドなく楽しめる。「知らざあ言って聞かせやしょう」で有名な「弁天娘女男白浪」など。
この他、舞踊という区切りもあるが割愛。詳しくはこちらを参照
初めての友人を連れて行く時は、アクロバティックな幕か世話物を選ぶようにしている。

3. 推しの俳優の追っかけ

そして好きな「推し」を見つけ、その人が出演する舞台を見にいくというのも醍醐味の一つ。ジャニーズやアイドルには微塵もハマらなかったのだが、見事歌舞伎では待望の「推し」と出会えることができた。
こちらがその推し、八代目市川染五郎くん。早くも傾城で、三島由紀夫が好きだっただろうなと思いつつ、ファンの一人として彼の出る舞台や雑誌は可能な限りチェックするようにしている。これから演技に磨きをかけ、成長していくのが一生の楽しみになるのだろう。

既に叔母に予言的に脅されていることでもあるが、歌舞伎は一生もので、好きな俳優ができたら、その人の子供、孫まで追っかけたくなるとのこと。
ちなみに他にも、猿之助、七之助、隼人あたりが好き。

好きな演目

最後に自分が好きな演目をご紹介。
・「義経千本桜」より四の切

…ここは吉野山の僧たちの頭、川連法眼(かわつらほうげん)の館。法眼はひそかに義経をかくまっている。そこへ佐藤忠信が訪ねてくるが、またそのあとに静御前が忠信を供に到着したとの知らせ。怪しむ義経は二人の忠信のどちらが本物か、静に命じて確かめさせる。静が初音の鼓を打つと、現れた忠信が鼓に聞き惚れる怪しい様子に、静が問い質すと、忠信は鼓の皮にされた夫婦狐の子で、親恋しさから人間に化けて静に付き従ってきたのだと白状するのだった。義経は、肉親の縁薄いわが身とひき比べて狐を哀れに思って鼓を与える。狐忠信は喜び、鎌倉方に味方した僧たちが攻め寄せてくることを知らせる。ー「歌舞伎演目案内」より

「義経千本桜」は長いお話で、歌舞伎座では一場面が演じられることが多い。19年7月に海老蔵が「義経千本桜」のダイジェスト版ともいうべき演目を行ったが、基本はそんなことはない。(尚この演目は大変エンターテイメントであった)

私は「碇知盛」と呼ばれている話やこの「四の切」、狐に化けた忠信が狐とばれて舞台上であっちで出たり、こっちで出たりする話が大好きである。(なぜ我々は頼朝の源氏の話ではなく、義経や平家の話にひかれるのか、浮世絵でなぜ人気を博したのかは自分なりにいつかまとめたい)早変わりや欄干を渡る様が見事。


・「黒塚」

哀しみの果てに鬼となった女。その憂い、喜び、そして怒り。
旅の僧に一夜の宿を貸した老女が、決して覗くなといった部屋には死体の山。哀れな老女は実は人を喰らう鬼女だった。安達ヶ原の鬼女伝説に取材しながら、鬼女の恐ろしさだけではなく、鬼女の人間性まで掘り下げて描いた醍醐味ある作品。昭和の歌舞伎舞踊の傑作。 ー「歌舞伎演目案内」より

美しい芒の原で一人、月を背に童女のように踊る鬼女が悲しくも胸を打たれる。猿之助が踊る様が本当に好きで、絶対次回も観に行くと決めている。また「黒塚」の音楽が素晴らしく、目も耳も一流のものを楽しめるのが最高なのである。

など…笑
無限に書けることに気づいてしまったので、一旦やめる。
説明の方向性を見出せたので満足。

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