かのくに R
それはなんですか? いいえ、これはお米です。
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コーヒーの夢を見ている。雨は夕暮れ、雲間から覗く細い月が干からびた左腕をそっと傷つけた。暗いカーテンが私を包む。街灯もなければ電線もない。溶けた地平線まで広がる漆黒の麦畑。麦の穂は空に昇る。一万キロ離れていたって見える星は同じだ。遅延する声に、電波のざらつきに、砂糖とミルクを加えてかき混ぜる。大きすぎるベッドの上で異物のようにまどろんでいる。
野菜を買ってきて水で煮る。熱湯でトマトの皮をむき、玉ねぎはほとんど丸ごと、キャベツ、ベビーキャロットは刻んでほとんど味はつけない。粉末のコンソメがほしいと思ってもスーパーで見つけられた試しがない。まあいいやとほんだしを入れると、かつおの丸く甘い味になる。冷まして鍋ごと冷蔵庫にぶちこみ、ときどきカップに注いでレンジでチンする。かのくにの玉ねぎは大きい。レッドスイートオニオンとあったので買ってみたら、確かに赤い方が甘みが強いような気がした。プラシーボかもしれない。
パンが固くて酸っぱいにおいがしておいしくないなと思っていたけれど、切ったハムとチーズを載せた上に蜂蜜を垂らして食べたらなかなかいけた。これはトースターで焼いてジャムをつけるものではないのだなとわかった。レンジで少し温めてから、オリーブオイルにつけるといいかもしれない。こういった発見は楽しい。パンも種類がいっぱいあって、デニッシュパンっぽいやつは比較的柔らかくてわたしたちの国の食パンに似ている。ちょっと甘いけれど。
パスタを茹でる。マッシュルームが予想以上にうまいことがわかったので、ブロッコリーといっしょにトマトソースで炒めてゆで上がった麺をぶちこみ、上から卵をかけたりしている。ナポリタンおじやみたいになった上、具が多すぎて食べきれない。二人ぶん作ってしまう癖がついている。親切でないかのくにでは、パスタは一人ぶんで束になどなってはいない。手で切れる袋もなければ開けやすい加工もない。開けやすい加工? なにそれ、はさみで切ればいいじゃない。かのくにの論理は至ってシンプルで、常に淡いを見る私の視線はきっぱりとエラーを吐かれるのだった。
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