「新生児から使用可」のだっこひもは「不当表示」ではないか?

■「不当表示」が「だっこの常識」を急激に変えた?

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エルゴはじめ各社の抱っこひもが「新生児から使用可」「ヘッド&ネックサポートで頭部を支えて使用(両手が自由になる)」と表記されていることを知っていますか?
※FaceBookには14日と書きましたが、これは他のだっこひもの表記で、エルゴは新生児(0カ月~ 50.8cm 3.2Kg以上)とありました。
※「両手が自由になる」は販売店記載のキャッチコピーでした。2016年版のエルゴの説明書にある上記の表記に修正しました。

エルゴベビーの不当表示の記事が数社上がっています。

エルゴベビーで不当表示 「肩の負担7分の1」根拠なし
https://www.asahi.com/articles/ASMDN4HYTMDNUTIL01D.html

しかし、「新生児から使用可」「ヘッド&ネックサポートで頭部を支えて使用」はもっと強烈な「不当表示」です。
どのメーカーも、頭や首が手で支えられないことの新生児の体への負担、健康や発達への影響を一切検証してないにも関わらず、これらの表記をしています。
これらは、医療的に厳密に検証されていなければならないことだと私は思います。

新生児のだっこの常識はこれまで「横抱きで必ず頭や首を手や腕で支える」でした。
しかし、エルゴはじめ各社のこの「不当表示」により「立て抱きでだっこひもが首を支える」常識になっています。

■赤ちゃんの首や背中・体幹への負担を至急検証せよ!

どの記事も「利用者=だっこする人」としか認識していません。
恐らく提供しているメーカーもです。
第一の利用者は「だっこされる人」つまり、生まれたばかりの新生児を含む赤ちゃんです。

メーカーは新生児や乳児の専門家の監修のもと、
「横抱きで頭を手や腕で支えるだっこ」と
「自社製だっこひもが立て抱きで首を支えるだっこ」の
新生児、乳児への体の負担の違いだけでも早急に調査し公表すべきです。
小児医療、周産期医療、母子保健など医療関係者も、ここまで変わってしまった「だっこの常識」について、早急に見解を示すべきだと思います。

赤ちゃんの頭の重さは体重の1/3以上あります。私なら25kgです。
頭に10kgの米袋を2つ半のせて、縦に衝撃を加えられることを想像してみてください。それもまだ十分筋肉がついてないぐらぐらの首や肩、背中にです。

さらに、抱っこしている人の腰や肩への負担が少なく、行動が自由になり、しかも「よく寝る」ので、一日3時間以上も抱っこひもに入れられているということが「常識」になっています。寝かせ付けのために、わざわざ抱っこひもに入れる親は多いのです。
赤ちゃんの時間感覚は、成人の2倍から3倍程度長いと言われます。
私の感覚に置き換えると、一日6~9時間以上、まっすぐに固定されて25kgの衝撃が首・肩・背中に加わり続けている状態です。
首や背骨を守るには、ずっと筋肉を緊張させていなければなりません。

実際、これらのだっこひもを長時間使われている赤ちゃんは、首や背中が固く凝っており、体をうまく丸めることができません。長時間のだっこひも使用のあと、横に寝かせると不機嫌で泣く赤ちゃんが多いです。それは、首や背中が凝って痛いのだと想像しています。
そのようなとき、首や背中を優しくなで続けていると、すっと力が抜けて落ち着くことが多いです。

■乳幼児期の利用は運動機能の発達への悪影響を懸念

これらのだっこひもは「長く使える」ことも売りにしています。
使用上限は3歳~5歳となっています。

体をよじれるようになった6カ月児、歩けるようになった1歳児、走り回りたい2~4歳児のいずれも、体の向きを変えられないようにがっちり固められ、手足はだらりと垂れ下がったままです。体を支える筋肉は発達しようがないでしょう。
体が固定され、だっこしている大人の体しか見えないので、退屈すると上を向くしかなく、反り癖がつくと考えられます。
エルゴに代表される、体の固定力の強いだっこひもを長時間使うことは、運動機能の発達が急激に進む乳幼児にギプスをはめているのと同等に見えます。運動機能や体幹の筋肉の発達に弊害があるのではないかと懸念があります。

以下の記事はこれらの弊害についてまとめられたものです。

エルゴ弊害について②:開排位固定による影響
https://note.com/primecare_sugi/n/nfcd7f00fa3d8
Note PRIMECARE杉本 2016/12/10 16:43

エルゴの弊害について⑥「反り身の助長」
https://note.com/primecare_sugi/n/nf99fd315cda5
Note PRIMECARE杉本 2016/12/10 16:48

■睡眠姿勢、睡眠習慣の獲得への悪影響の懸念

だっこひもが愛用される大きな理由として「すぐ寝る」「ずっと寝てくれた」という声が多数聞かれます。
一方、「ずっとだっこしてないと寝ない」「だっこひもで寝ても降ろすと必ず起きて泣く」という声も同じくらいたくさん聞かれます。
それは「だっこひもで寝かせる」ことが、「水平に寝る習慣を獲得する」ことを妨げているからかもしれません。

※数名からのご指摘で、赤ちゃんの睡眠姿勢、睡眠習慣に関する考察が不十分でもっと精査しなければならないことに気づきました。近日中に、このテーマで記事を書こうと思います。2019/12/23

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