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色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年

いきなり私の名前がでてきて動揺した。

小説の世界がいきなり現実と交錯し始める。

「ゆず」心が弱くてその後殺された女性だ。

その呼び名が出てくる度に心ががさがさとし自分との対比が始まる。

小さい頃うまく人と交わることができずどこか浮いた少女だった。

これは両親との関係がうまくできていなかったからで

子供の頃から自分は不要ではないか何のために生まれてきたのかを考え

中学の頃は聖書を開いたり精神世界の本を読みあさったりしていた。

愛情を受けて育った人の伸びやかな笑顔や

人からの愛情をそのまま受け入れることが出来る素直さがとても羨ましかった。

両親からもらえなかった愛がせめて他の人からもらえないかと貪欲に願うのに

その愛を信じられなくて捩れた心を抱えていたのかもしれない。

そしてその捩れた部分はじんわりと相手に伝わっていつしかぎくしゃくするのだ。

両親との関係でできた心の傷は普段は心の深い部分に埋もれていて

今もうっすらと血を流し続けている。

そして触れればすぐにどくどくと赤い血を流し出す。

主人公のつくるは昔の友人と会うことでその傷口を癒すことができたけれど

二人を亡くした私はいつまでもその疼く傷口を抱えて生きていかなくてはならない。

小説は忘れていた記憶の蓋を開けて揺さぶりそしてそのほの暗い感情を覚まさせたまま

終わってしまいなんだかぽつんとひとり取り残されたような気分になった。

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