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【第27回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6-1:TCFD提言開示項目とシナリオ分析の関係性の記載

今回は、シナリオ分析の開示方法について、シナリオ分析実践ガイドに記載されている例を紹介します。

1.TCFD提言の開示推奨項目とのマッピング

 下記の表のTCFD提言11の開示推奨項目のうち、シナリオ分析は「戦略」に該当する部分となります。

出所:気候関連財務情報開示タスクフォースの提言
(サステナビリティ日本フォーラム 私訳 第2版)
https://www.sustainability-fj.org/susfjwp/wp-content/uploads/2022/05/FINAL-TCFD-2nd_20220414.pdf

 これまで紹介してきた環境省のシナリオ分析実践ガイドのSTEPに従って進めていくと、上記の開示推奨項目の該当部分と紐づけることができるようになると思います。ただし、シナリオ分析実践ガイドのSTEPとTCFD開示推奨項目は一対一の対応関係にあるわけではなく、また、順序も同じとはなっていません。従って、TCFD開示推奨項目に対応していることを示す方法として、シナリオ分析実践ガイドは、シナリオ分析の開示箇所とのマッピング表を作成することを推奨しています。下記は、マッピングの例として掲載されている対照表です。

【TCFD提言開示推奨項目との対照表】

出所:環境省 「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドver3.0~」
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf


2.TCFD提言の開示推奨項目以外とのマッピング

 TCFD提言以外にも、サステナビリティ情報の開示に関する国際的なフレームワークは、複数存在します。これらのフレームワークに基づいた開示には重複する部分も多いため、複数のフレームワークとのマッピングを行っている事例もあります。
 下記リンク先のトヨタ自動車の開示では、GRIスタンダード(Global Reporting Initiative:欧州のNGOが公表するサステナビリティ開示のディファクトスタンダード)、SASBスタンダード(Sustainability Accounting Standards Board:米国のNGOが、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関して設定した開示基準)、TCFD、ISO26000(International Organization for Standardization:組織の社会的責任に関する国際規格)という4つのガイドラインを参考とし、サステナビリティに関連する開示を「Sustainability Data Book」という一冊の開示資料にまとめて公表しています。開示資料の各ページに、参照したフレームワークの名称と該当する項番が記載されています。

https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/report/sdb/sdb22_jp.pdf

 更に、巻末には「SASB/GRI対照表」が掲載されており、SASBとGRIの開示項目がどこに記載されているか一目でわかるようにまとめられています。非常にわかりやすい対照表になっていますので、ご参考になると思います。

 なお、これらのフレームワークは、主に民間の任意の設定主体が自主的に開発してきたものですが、重複する部分も多く、作成者と利用者の双方にとって負担も重いものとなっていました。サステナビリティ情報の重要性が国際的にも共通認識となってきたことを受け、2021年11月に国際会計基準(IFRS)財団の下部組織としてInternational Sustainability Standards Board(ISSB)が設立され、2022年3月末に、ESG情報の国際的な開示基準の公開草案が公表されています。現在の複数のフレームワークは、将来的にはISSBから公表される基準として統合されていく事が予定されています。



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