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【第23回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-1:自社のリスク・機会に関する対応状況の把握

 今回は、STEP4までのプロセスで特定した、事業インパクトの大きいリスクと機会に対して、自社の対応状況がどうなっているかを把握するプロセスについて紹介します。

1.自社の対応状況の把握

 まず、これまでのプロセスにおいて特定した、事業インパクトが大きいリスクと機会に関する、自社の現状の対応状況を把握します。大企業の場合で、特に多数の事業を行っている場合には、TCFDプロジェクトの担当者が把握していなくても、既に対応している、もしくは対応に向けて検討に着手している部署が存在しているケースがあり得るのではないかと思います。また、社内だけではなく、海外を含めたグループ企業で実施している場合もあるかもしれません。
 シナリオ分析における事業インパクトに関しては、重要性のある一部分を対象として実施している場合であっても、対応状況の把握に関しては全社に広げて情報収集し、対応中のものについてはディスクロージャー資料に記載することもできると思われます。従って、必要な情報の種類や収集ルートなどについて、情報収集体制をあらかじめ検討しておくとよいのではと考えています。

2.対応状況のチェック

 次に、現状の対応状況が十分かどうかについて、例えば競合他社の状況と比較してチェックします。投資家の目線としては、一番悪いシナリオにおける状況を見ることが目的ではなく、同業他社と比較してどうか、という事が重要という声もあります(シナリオ分析実践ガイドAppendix4座談会「気候変動対応を通じた企業価値向上に向けて~TCFDシナリオ分析と開示の最前線~」連載第4 回 投資家から企業への期待参照)。同業他社間比較は、社内でも聞かれると思われますので、あらかじめ開示ベースの情報だけでも情報収集されることをお勧めします。
 これらの作業をまとめた資料として、シナリオ分析実践ガイドでは下記のような一覧表が紹介されています。

【リスク・機会の対応状況一覧】

出所:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドver3.0~」
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf


  次回は、今回の現状把握を基に、今後の対応策を検討するプロセスについて紹介します。

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