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【第25回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-3:社内体制の構築と具体的アクション、シナリオ分析の進め方の検討

今回は、前回検討した対応策を推進するための今後のロードマップや、今後のシナリオ分析の進め方について紹介します。

1.今後のロードマップの策定

 STEP5-2で決めた対応策を社内で推進していくためには、今後のロードマップを策定し、対応策を実行に移すための体制を整備することが必要になります。シナリオ分析実践ガイドでは、
①    対応策を推進するために必要となる社内体制を構築
②    関係部署とともに具体的アクションに着手
③    シナリオ分析の今後の進め方を検討
の3項目を挙げて、時間軸とともに下記のような例を示しています。

【アクションプランの例】

出所:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドver3.0~」
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf

 STEP5-2において検討した対応策は、具体的にすぐに着手するものというよりは、現時点では、今後の大まかな方向性であるケースが多いと思います。従ってこの段階では、詳細なプランに落とし込めるようなレベルに至るまで、社内でどのように展開していくかといった道筋をつけるようなロードマップを作成し、コンセンサスを得ておくとよいのではないかと考えています。

2.今後の進め方のポイント

 シナリオ分析実践ガイドでは、今後の進め方についてのポイントがいくつか紹介されています。
 まず、社内体制については、TCFD提言における「ガバナンス」の推奨開示項目Ⅰa)「気候関連のリスクと機会に関する取締役会の監督について記述する。」、b)「気候関連のリスクと機会の評価とマネジメントにおける経営陣の役割を記述する。」に該当するため、経営層の理解のもとで体制を構築することがポイントとされています。社内体制は個社によって異なりますので、なぜそのような体制としたのか、その体制により何を達成することを目的としているのか、といった事がステークホルダーにも説明できるようにしておくとよいのではないかと考えています。
 また、シナリオ分析は継続的に実施していくものとなります。第16回の「STEP3-2:関連パラメータの将来情報の入手」でも紹介しましたが、使用するシナリオやパラメータは定期的にアップデートされますし、現時点では入手できないパラメータも、グローバルな気候変動対策の進展に伴い取得できるものが出てくる可能性があります。このような最新情報に関するモニタリングを含め、次年度以降、シナリオ分析をどのように進めていくのかを検討することも必要になってくると思われます。
 更に、シナリオ分析実践ガイドでは、「中期経営計画に気候変動の概念を組み入れていくことは一つの方向性である」としています。企業の事業戦略決定プロセスとして、「経営ビジョン→中期経営計画→各事業部計画→各自業務のアクション」という流れは一般的に想定されるものですが、現時点では、この中に気候変動が加味されていない事が多いのではないかと推測されます。TCFD提言の結論のセクションでは、「広く採用されることにより、気候変動に関連する財務上のリスクと機会は、組織のリスクマネジメントと戦略計画プロセスの自然な一部分になる」とされています。シナリオ分析実践ガイドでは、気候変動を上記の企業の事業戦略決定プロセスに加味するためには、中期経営計画に含めることが重要であるとして、下記の図のようなプロセスを紹介しています。

【気候変動の中期経営計画への組み込み】

出所:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドver3.0~」
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf


 次回からは、シナリオ分析実践ガイドの最終ステップとなる「文書化と情報開示」の内容を紹介します。


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