欠肝人間

就活のときの企業選びの条件って人によっていくつかあると思うんだけど、私にとってはそのひとつが「お酒が飲めなくてもやっていけること」だった。

私はお酒が飲めない。
一口たりとも受け付けないというわけではないけれど、周りと比べたら“まったく”と言い切ってしまっていいくらい飲めない。
コンビニのお酒で飲めるのはほろよいだけ。それも半分くらいが適量で、1缶飲み干せたら「今日お酒強いわ!」なんて言っちゃう。居酒屋ではカクテルをグラスに3分の1が限界で、サワーは相性が悪いのか、3口くらいでギブアップする。それ以上の度数のお酒は怖くて飲めない。

こういう話をすると「コスパ良くて羨ましい!」とか言われるんだけど、いや、実際コスパ悪すぎるのよ。
いわゆる「酔ってる」という状況が、私にはめったに訪れない。たまーに居心地の良い飲み会だと楽しくなってきたりするけど、それも場のおかげなのかお酒のおかげなのか怪しい感じ。素面っちゃ素面、正気っちゃ正気。
そしてたいていの場合は、めちゃくちゃ気持ち悪くなってしまう。
ちょっと飲んだだけで顔が赤くなり、動悸がしてきて、ある瞬間に「あ、これやばいやつだ」と本能が危険を察知する(ここまで摂取した純アルコール量、約7g)。そこからは全身が真っ赤になって止まらない頭痛と吐き気に襲われ、どんなに水を飲んでも吐いてもバファリンプレミアムを飲むまで収まらない(バファリンプレミアム、通常のバファリンより高いけどめちゃくちゃ速く効く。これがなきゃ生きていけない)。
つまりはアルコールによる恩恵を受けないまま、飲み会代2,500円を払って苦痛を味わうことになる。これのどこがコスパ良いのか教えてほしい。

こんな感じで私にとってアルコールは毒にも等しいのですが、世間ではお酒というものがかなりの重要項目として位置づけられているらしい。

だって「牛乳アレルギーだから牛乳飲まなくてもすむ会社がいいな」なんて思う人、いないでしょ。でも成人で構成された社会というコミュニティでは、ううん大学だってそうだ、お酒が飲めないというただ一点が相当なハンデになってしまうのを肌身で感じている。

たまたま自分がお酒の重要視されるコミュニティに属していたからより強くそう感じるのかもしれないけれど、世間一般も傾向としては同じだと思う。人並みにお酒を飲める人にはわからない感覚だと思うけど、コミュニケーションの場≒飲み会という図式、下戸にとってめちゃくちゃつらい。

「お酒を飲みながら会話でコミュニケーションを取る」飲み会ならなんとかなる。自分のペースで飲みつつご飯を食べて喋っていればいいから、普通のご飯よりちょっと高めのテンションを意識しておけば問題ない。
けれど、「お酒を飲み飲ませること自体がコミュニケーションとされる」飲み会、もう完全にお手上げ。銃を持たずしてサバゲ―に参加することはできないし、少食の人間は大食い大会には出られない。つまり、完全に場違い。そういう場で飲まずにうまく盛り上げられる人はすごいけど、残念ながら私はそうではない。

先にことわっておくけれど、下戸も飲み会を楽しめるように配慮しろと言う気は毛頭ない。飲み会文化を悪と糾弾する気もない。あの雰囲気が好きな人がいるのはわかるし、合わないなら参加しなければいい話……なんだけど、下戸の苦悩はここからはじまる。

なんかさ、「行かなきゃいけない/行った方がいいかな?」みたいな飲み会ってあるじゃない。たぶん社会人になってもあると思う。歓送迎会とか。想像だけど。
個人的にも「お酒は飲めないけどみんなの顔が見たいから行こうかな」って気分になるときもある、から、たまに行くんだけど。

「えっ来るの?」って言われるのが本当に嫌で嫌で嫌で仕方なくて!

本人としては「お前が来るなんて珍しいね~」くらいの気持ちで言ったのかもしれないけど、私は自分が下戸なことを本当にコンプレックスに思っていて、自分が場違いなのも自覚しているから、ちょっとそういうこと言われると「ああああああごめんなさい私なんかが来てしまって!」って舌を噛み切ってしんでしまいたくなる。さらにはそういう人ほどふだん「私お酒飲めない人嫌いなんだよね」なんて言ってたりするので、「ああああああごめんなさいアセトアルデヒドも分解できない欠陥人間が身の程もわきまえず!」と地面に埋まってしんでしまいたくなる。

たまに「先輩来てくれるんですかー!」って(フリだとしても)喜んでもらえたりもして、そういうときは後輩に気を遣わせてることに若干の申し訳なさを感じつつ、だいぶ心的ハードルが下がる。が、そうやって調子に乗って、ちょっとでも馴染もう楽しもうと振舞ってるときに

「お前がコール振ってんのウケるわ笑」って茶化されるのも本当に嫌で嫌で嫌で仕方なくて!

本人としては「お前のそういうの珍しいね~」くらいの気持ちで言ったのかもしれないけど、私は自分が下戸なことを本当にコンプレックスに思っていて、自分がそういうのに慣れてないのも自覚しているから、ちょっとそういうこと言われると「ああああああごめんなさい私なんかが調子に乗ってしまって!」って舌を噛み切ってしんでしまいたくなる。さらにはそういう人ほどふだん「俺お酒飲めない人嫌いなんだよね」なんて言ってたりするので、「ああああああごめんなさいアセトアルデヒドも分解できない欠陥人間が身の程もわきまえず!」と地面に埋まってしんでしまいたくなる。

中には私が楽しめるように私のキャパの範囲で構ってくれる人もいて、それが毎回本当にありがたいんだけど、やっぱり気を遣わせてしまうのが申し訳ない。だからやっぱり参加しないのがお互い気を遣わなくていいのかな、とも思うんだけど。

飲み会でちくちく刺してくる奴ほど「飲み会来ない人ノリ悪いわ~」とか言い出すのはなんなんだ!?!??!?!?!?!?!?!?!?!?

行っても駄目、行かなくても駄目なら酒が飲めない人間はいったいどうすればいいんですか?

人には好き嫌いがあるしその判断基準も人それぞれだけど、「お酒の強さ」というどうしようもないことを理由に「嫌いな人リスト」に入れられるの、結構苦しい。ふだん仲良くしてる人ならなおさら。

「そんなこと言う人気にすることないよ」って言ってくれる人もいるかもしれないけど、自分のコンプレックス周りのことに敏感になってしまうのはある程度仕方ないことだと思う。それに文字では伝わらないし、ここで全部書くことはしないけど、明らかに揶揄や嘲笑を含んだ言葉を投げつけてくる人もいるんだ。加えて世間には意外とそういう人が多いし、無自覚だからたちが悪い。 

一緒にお酒を楽しめる方がいいのはわかる。
私だって一緒にケーキ食べに行ってくれる人とか、脱出ゲームをやってくれる人とか、漫画の感想を言い合える人とか、仲良くしたいなって思う。

でも私、それをしない人を「嫌いだ」なんて思わないし、あまつさえ本人に言おうとは思わないけどなあ。

そこまでの求心力があるのがお酒というものなんだろうか。私は飲めないから一生わからないけど。

一般論を語ろうと思ったら思いっきりエピソードトークになってしまいましたね。反省。

愚痴みたいになってしまったけど結局何が言いたいかって、「お酒というものがこれほどまでに大きな役割を果たしている社会で下戸として生きるのは、そうでない人が想像するよりだいぶ苦しい」ということ。
たぶんこれを読んで「被害妄想」とか「自意識過剰」って笑う人がいると思うけど、こればかりは当事者じゃないとわからないと思うんだ。
私がたまに使う例えで「全く酒が飲めない成人は重度の紫外線アレルギーの小学生と一緒」っていうのがあるんだけど、これならちょっと想像しやすいんじゃないかな。
みんなが当たり前にできる外遊びが自分だけできなくて、友達の輪が広げづらい状態。室内で遊ぶことももちろんできるんだけど、やっぱり外で遊べた方が楽しいんだろうな、みたいな。

お酒飲める体に生まれたかったなあ。それかスイーツ巡りと謎解きが重要なコミュニケーション手段になる世界線に生まれたかった。

お酒は飲めないけどおいしいご飯屋さんとケーキ屋さんを探すのは得意なので、落ち着いたらぜひ遊んでください。お好みと予算と場所を考慮して最適なお店をご提案します。特にこだわりのない人は、大学周辺の隠れた名店巡りか、東横線・大井町線・小田急線沿線のケーキ屋巡りに付き合ってくれるとうれしいです。よろしく!


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