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【雑感】2022/7/10 浦和vsFC東京(J1-第21節)

4月の対戦はかなりクローズドな展開でなかなか決定機すら作れませんでしたが、ここ最近改善されつつある裏への意識の強化によって上手く相手の陣形を広げることが出来ていたと思います。

CFが定位置になりつつある松尾と左SHの大久保の2人が裏抜けの先鋒隊となり、彼らが裏を狙ってFC東京の守備陣を押し下げることでその手前に入る小泉、モーベルグ、敦樹が中盤で前を向くスペースが生まれました。


東京は前半はディエゴとレアンドロが2トップ気味になる4-4-2で非保持を行いましたが、これに対して浦和は2CB+2CHの4枚をベースにしつつも、右CHの敦樹は岩尾よりも気持ち前目でトップ下の小泉が左寄りでプレーすることで、中盤は逆三角形のような形になることもあったと思います。

基本的には両SBが幅担当でSHを内側に入れるようなイメージだったと思いますが、そこに対して岩尾、敦樹、小泉がきっちり横サポートに入ることでSBにボールが入った時に苦しくなるような場面は無かったのではないでしょうか。

なかなか輝けない試合が多い今季の小泉ですが、この試合については大久保、大畑との関係性がとても良く、「3人目」としての振る舞いは効果的だったと思います。それが上手くいったのが8'54~の最終的には酒井がシュートを打った場面でした。

ショルツから大久保に縦パスが入りますが、パスが出た瞬間に小泉は自分が大久保からのレイオフを受ける(「3人目」になる)ために手前に動きつつ大久保の方へ体を向けています。パスを受ける大久保としてもパスを受ける視野の中に小泉が入っているのでボールを預けやすく、自分に寄ってきたのがCHの梶浦なので前向きな小泉に落とせばその矢印の逆向きでボールをもらい直せそうだというイメージを作りやすかったのかなと思います。

さらに大久保が梶浦の逆を取る横方向の矢印のままボールを運んだことで、逆サイドのバングーナガンデと松木をゴール正面へスライドさせることが出来ており、これによって大外で待っていた酒井がフリーでシュートを打つことが出来ました。


さらに、20'23~はショルツからパスを受けた大畑に対して大久保が前方向でのサポートとして長友の背中のスペースへ走り、小泉は横サポートに入りました。梶浦が大久保について行ったので大畑→小泉のパスコースが空き、大久保は小泉にパスが入ったことに気付くとすぐに体の向きを直して小泉からのワンタッチパスでそのままハーフレーンをえぐってクロスを上げることが出来ました。

この一連はショルツを含めて大久保、大畑、小泉が菱形を作りながら前進する対4-4-2でのポジショナルプレーのお手本のような突破だったと言えます。大久保はボールに追いつくので精一杯だったので中の様子を見る余裕はなかったと思いますが、CFの松尾が真っ先にニアへ走りこんだことで木本、森重、バングーナガンデがその対応のためにニアを埋めに行っていたため逆サイドから遅れて入ってきたモーベルグはフリーでした。

この場面で大久保がモーベルグまで見えていて、なおかつ苦しい体勢からファーサイドまでボールを飛ばすことが出来てしまったら最高すぎますが、この人の動き方自体は10分後に訪れる先制点の場面とも共通していたと思います。松尾が外からドルブルでハーフレーンをえぐっていきますが、この時にゴールに一番近かった小泉は真っ先にニアへ走りこんでいます。

FC東京のビルドアップでボールを奪った場面なので外に開いていたバングーナガンデは間に合わず、小泉が入ってきているので中央にいた森重はそこを消さないといけなくなります。松尾は余裕をもってファーサイドから走りこんでくるフリーのモーベルグを見つけてラストパス。

ゴール前に入る時に、一番近い人がまずはニアに入るのは86'40に江坂が右のハーフレーンをえぐってクロスを上げた時の明本の動きも同じで、ファーサイドに入ってきた関根がフリーというのも同じでした。5月に課題としてあがっていたゴール前に人数をかけられるようになってきた中で、いかにゴールまでの動きを合わせていくのかという点について整理が進んでいるように見えました。

得点シーンに話を戻すと、ゴールががら空きになっていながら、ダメ元で飛び込もうとするスウォヴィクの矢印の逆を取るモーベルグのシュートは凄いですね。相手がこれから動くから今いる場所に蹴っても大丈夫、というのは理屈は分かっていたとしても簡単に出来ることではないと思います。


FC東京の保持は前半は4-4-1-1気味でしたが、レアンドロを中央でプレーさせることでビルドアップで苦しくなっても逃げ先としてディエゴ単独ではない状態にするということを目論んだのかなと思います。

松木の素晴らしいFKを獲得したのもレアンドロの強引なドリブルでしたし、ディエゴへボールが入った後にレアンドロが素早くサポートに入ることで上手く前進した場面もありました。


リカルドもアルベルもスペイン人指揮官らしく後方から繋ぎながらボールを前進させることを志向していますが、チーム構築をしていく中での段階の踏み方というか、理想と現実のバランスの取り方に違いを感じます。

リカルドは昨年のシーズン序盤にトップ下の小泉が後ろに下がってボール保持を安定させていたことに象徴されるように、後ろから運べる人数はきちんと確保することでボールロストのリスクは減らすものの、ゴール前での人数を減らしている分だけそのエリアでの怖さを作るのには時間がかかっています。最低限試合は壊さないようにするという点でリカルドは現実的な視点が強めだと言えます。

一方、アルベルは全体の人数バランスは理想形から崩さないことでゴール前での人数は常に確保できているものの、チームとして成熟できるまでは後ろから運び出すときの難易度が高く、この試合では結果的に失点にもつながってしまったように時間がかかって難しいプレーに対して失敗しても良いからトライし続けるという点で理想を優先するタイプなのではないかと思います。


東京が上手く前進できている場面ももちろんありました。36'43~がその一例だと思います。後半にはっきりと4-3-3にしてからの方が分かりやすかったようにも思いますが、浦和の4-4-2の守備ブロックのうち、FW-SH-CHのトライアングルのところにIHが出入りして浦和のCHを動かしたいというのがこの試合の狙いだったのではないかと思います。

この場面を見ると、松尾の脇から木本が運び出すときに梶浦がこのトライアングルのエリアに入ってきていて、外の長友とのパス交換から浦和のCHの奥にいるレアンドロへボールを通しています。

64'03~は後半からIHに入った渡邊がやはりこのエリアに入ってきていて、岩尾がそこを気にしたことで空いた大久保ー岩尾のゲートを木本が通しています。この場面はカバーに入った敦樹とショルツがボールをカットし切れなかったという点もありますが、いずれにしても浦和のCHを中央からどかしてボールを前進させています。

東京はこの位置に入る選手が上手く相手と距離を取ってボールを受けるか、相手が近いのであればそこを囮にしておいて別の場所を使うかが出来た時にはボールが前進できており、逆に相手に近づかれているのにそこを使ってしまったのが浦和の先制点の場面だったと思います。梶浦が岩尾にロックされているのに木本がそこへボールを出してしまっており、逃げ場のない梶浦から木本へそのままリターンしたところを松尾が奪ったという流れでした。

ビルドアップ隊に使う人数を最小限にしているからこそサポートの質が問われますが、東京はまだこの部分で構築途中という感じですね。IHの選手もそうですが、アンカーに入る選手がCB→IHの後やCB→SBの後にボールを受けらるようなサポート、いわゆる「3人目のアクション」が出来る選手がまだ作れていないので、夏にこの部分を補強できるとビルドアップの質も変わるかもしれません。去年浦和に平野が来たことによって現れた変化がそれですよね。


2点目は敦樹の素晴らしいミドルでしたが、後半から東京は非保持も4-5-1としていたことも影響しているように感じました。先述の通り大畑、大久保、小泉のところで良いようにやられてしまっていたので、4-5-1にすることで紺野を外担当(大畑を見ておく)、長友を内担当というイメージで役割をはっきりさせたのではないかと思います。

2点目で敦樹がシュートを打つ時も、岩尾から敦樹にパスが入った時には紺野は逆サイドから絞っているので中央付近にいますが、敦樹がオープンにコントロールできることを確認すると逆サイドで幅を取っている大畑の方へズレていきます。結果的に紺野がどいてくれたおかげで敦樹がドリブルしてシュートを打てるスペースが生まれました。

内と外の担当を決めていなければまず中央のスペースは紺野が埋めておいて、外にボールが出たら後ろから長友がスライドして紺野が長友のいなくなったスペースをカバーするという動きになったのかなと想像します。


3点目は自陣でスローインを受けて逆サイドのモーベルグまで振った江坂が、60メートル以上走ってモーベルグを外から追い越すという素晴らしいハードワークぶりでした。そして何より着実にプレーを向上させてきている大久保がゴールという目に見える数字での結果を出せたのは本当に良かったですね。

昨年からとても真面目な性格というのは十分に伝わってきていて、ちょうど金曜日のLineNewsでその部分について吹っ切れてきていることが紹介された矢先でした。


敦樹にしても、大久保にしても、昨年から継続して試合に出る中で確かな成長を見せてくれています。酒井が離脱している間は宮本も成長が見えています。見るからに成長していく選手が間近にいることは他の選手にとっても大きな刺激になると思いますし、同じポジションで後塵を拝している選手がこれについていってくれると良いですね。


この試合は予定があったのでスコアだけ知った状態で試合翌日に観ましたが、勝つと分かって観るのはとても気が楽ですね。残念ながら今月のリーグ戦の残り2試合(清水戦、川崎戦)も同様にリアルタイムでは観られないのですが、この試合と同様にワクワクしながらDAZNのページを開けることを願います。

今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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