【雑感】2022/8/19 JDTvs浦和(ACL-Round16)
今回は現地で観たので雑感を書くのが翌日になりました。中2日での3連戦ということで、ノックアウトステージなので1戦必勝で挑むのは勿論なのですが、願わくば90分以内で、なおかつ早い時間に勝負をつけてしまってハードな展開は避けたい、というところだったと思います。
試合冒頭こそ相手にボールをプレゼントしてしまった場面があったりはしましたが、相手の5-3-2とも5-2-3とも言える守備配置に対して、きちんと流れに応じてポジションを取って前進しながら上手く自分たちに流れを持ってこれたと思います。
基本的にJDTは2トップに加えて左IH~トップ下の役割をするファイズ(21番)で岩波、ショルツ、岩尾を捕まえるようなポジションだったと思いますが、ファイズは撤退時は左IHに入ることもあって、2トップだけで浦和のビルドアップ隊3人を相手せざるを得なくなって岩尾かショルツが空くという場面もありました。
また、JDTはWBを前に押し出すのではなく中盤3枚がスライドして横幅をカバーしようとしていたので、大畑や酒井が相手のIHから離れて手前に引いたポジションを取っていれば、CBからの縦パス+横方向にワンタッチで流してSBがオープンにボールを持てるというのは自動化されています。
それだけでなく、先制点のPKに繋がるCK獲得に至る突破のように、右であれば酒井、敦樹、モーベルグがローリングしながら相手のIH、WBを翻弄するような展開を作ることが出来ました。
この場面は21番が岩尾をチェックしに出て行っていたので中央からアマト(55番)が酒井のところまでスライドしますが、ライン際にいる酒井までは遠いので、アマトが酒井に到達すまでに敦樹は酒井の横サポートに入れています。
酒井→敦樹→モーベルグの横+縦のパスで中盤ラインを越えて、敦樹がお手本通りのパス&ゴーでプレスバックしてきたファイズ(21番)の背中を取って前向きにボールを受け直すことが出来ました。
それを見越して酒井もボールをはたいたらすぐにWB裏のスペースへ走り出しており、このあたりは最近メンバーが固定され始めていることでお互いのイメージが共有出来ていることが窺えます。
浦和の選手たちは、JDT側が2トップは岩波とショルツ、3MFはアンカー役の岩尾とIH役の敦樹と小泉を捕まえに来ているのかな、というのが10分足らずで把握できていたように感じました。試合冒頭は外側をスタート位置にしていた大久保が少しずつ内側に入ってきていて、岩尾の1列前に敦樹、小泉、大久保の3枚が並ぶような配置になってどこかで1枚空くような形に出来ていました。
積極的にプレッシングするチームであれば、3CBの左右どちらかがCHの脇のスペースへ縦スライドして潰しに出ていくという運用をするのをよく見かけますが、JDTの5バックは基本的には5人の列をキープしてゴール前にスペースを空けたくなさそうに見えました。
大久保が中央に入るのが上手くハマったのは40'05~のビルドアップだったと思います。ゴールキックから岩波が中央にドリブルしている間に岩尾、小泉、敦樹はそれぞれ相手に捕まる状態になりますが、そこへ大久保が中央に現れました。この場面では中央CBのサード(32番)が大久保を潰しに出ていきますが、これを綺麗にターンで外したのは爽快でしたね。
ゴールキックをつないで始めたのでJDTの両WBも大畑、酒井のところまで出てきていて、さらに大久保が中央CBの縦スライドを外せたので、相手の最終ラインは左右CBの2枚だけで、浦和は左に松尾、右にモーベルグに加えて、岩波→大久保の縦パスをスイッチに敦樹と小泉が追随して一気にゴール前へ飛び出していきました。
松尾がドリブルで運んでいる間に、最初にゴール前へ到達した敦樹がニア、次点のモーベルグがファー、3番手の小泉がマイナス、と6月以降改善されたゴール前へ入る際の優先順位もばっちりでした。
松尾からのクロスに対して惜しくもモーベルグが合わせきれなかったものの、相手のポジションを見てポジションを調整をして作ったフリーの選手へ縦パスを入れられたこと、相手より先にポジションに入ったので相手が寄せてくることを感じてターンで外せたこと、相手の前向きな矢印をひっくり返したら一気に加速できたこと、最後のゴール前で人数と入り方が良かったこと、素晴らしい流れだったと思います。このシーンにこの試合でのベストビルドアップ賞を差し上げます。
また、シーンが前後しますが、大久保は中盤に加わるだけでなく、そこから裏へ飛び出す意識はそのまま残せていて、2点目のFK獲得の場面も小泉が3MFの脇でボールを受けると、前向きになった小泉を潰すべきか、自分の担当エリアを埋めておくべきか迷ったデイビス(2番)の内側を抜けて行こうとしました。
この場面で大久保のさらに良かった点は、一旦アイマン(42番)とデイビスの間を抜けようとしてから、デイビスの体が外に向いたのを見て背中側(サード/32番との間)にコース変更したところですね。
前半で3点差をつけられたことで、ハーフタイムで3人交代しますが、代わって入った江坂、明本は勿論、安居も名古屋戦、磐田戦に続いて着実にチームの中で彼らしさを発揮できていましたね。
敦樹と岩尾の組み合わせだと、敦樹がIH化して前へのダイナミズムを作るので、4-3-3気味の配置になってSBを手前からスタートさせることになりやすいです。酒井も大畑も最後尾からスタートしつつ、状況に応じて周囲とポジションを交換しながら前に出たり内側に入ったりといった静的な振舞いが上手なので、この人選と4-3-3の配置がハマっているのだろうと思います。
ただ、これによって明本や宮本(明本をSB枠で勘定するのが適切かはさておき)のような、運動量を活かした動的なプレーが売りの選手にとっては、最初から適切な場所に人がいる状態である4-3-3の配置では、個々で動いてしまうとバランスを悪くしてしまいやすいので、この人選、配置の中だと彼らを活かしにくくなっている面もあるように見えます。
なので、敦樹ではなく安居という、前に飛び出すよりは味方の横や斜め後ろでサポートを取ってボールを捌くのが上手な選手、要は岩尾と近いタイプの選手を組ませることによってチーム全体のバランスのとり方も変化させることが出来ているなと後半は感じました。
CHの人選だけでなく、大久保を下げて小泉を左SH、中央に江坂を入れたというのもその変化の大事なポイントで、小泉はスタートから内側に入ることが多いので、左外は明本が1人で担当することになります。あえて最初はアンバランスな状態からスタートして、最初は人がいない場所を運動量で埋めてもらうイメージです。
相手が4-4-2に変更した後ですが、62分、63分と連続して小泉が内側、明本が外側という配置から相手の最終ラインを突破しに行ったのは明本の運動量を活かした展開だったと言えると思います。
中央は江坂はより前目のプレーヤーですが、江坂、小泉のいるエリアによって空いている場所に岩尾か安居のどちらかが出ていく、時には小泉が下がって役割を入れ替える、などポジションや役割をローテーションすることも出来ていて、出ている選手のキャラクターは変えてもチームとしての機能性は落とさずにプレーできていたのは良かったと思います。
後半の非保持では江坂や最後に入ってきたユンカーが少し緩いなと思ったりもしましたが、試合展開的にフルスロットルでなくても良い状況ではあったし、大事なのはこの3連戦を勝ち抜くことなので、過度にエネルギーを使わずに無失点で終えつつ、彼らに2ゴールと2アシストがついたことによってチーム全体のムードが高まったのではないかと思います。
60分にヒヤッとするビルドアップでのミスはありましたが、概ね試合をコントロールしたことでちょっとスタジアムの雰囲気もゆったりモードというか、テンションが落ち着いたところで、最後に西川からの目が覚めるような強烈パントキックからのゴールで再び興奮させてくれたのは最高でした。
次の試合は、20時キックオフ、さらに中2日同士の試合という最良の抽選の結果になりましたね。試合後にゴール裏から「準決、勝って唄いましょう!」という声がありました。この試合の前に西川のインタビューでも「アルヒラルとやりたいんだ!」という言葉もありました。あと2つ勝って、まずは東アジア王者の座を勝ち取りましょう。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
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