【雑感】2024/7/14 J1-第23節 京都vs浦和
試合中は雨が降っていたもののそれがかえって高温多湿で過酷な環境になってしまったのか、試合が終盤に行くにつれて両チームとも何人もの選手が足を攣っていました。京都はいつも通り保持はダイレクト志向ですし、非保持も好戦的にプレッシングに出てくるので、浦和がビルドアップ時にそれに付き合って裏へボールを入れる回数が増えるとどうしてもボールがピッチを行ったり来たりする展開になりやすく、それがさらに選手たちの脚に来ていたのだろうと思います。最後の最後はいつも飄々とプレーしている安居ですら足を攣っていたのは少し驚きました。
試合全体を通して観た時には、序盤は浦和が京都のプレッシングを手前からでも一気の奥を使ってでもひっくり返すような展開をしつつも、グスタフソンが20分過ぎに負傷交代してからは少しずつオープンな展開になりやすくなり、それが動的なゲーム展開を好む京都にとって有利に働いたのかなと思います。浦和目線で言えば、前節の湘南に続いて残留争いの渦中にいるチームに対して内容も悪い上に連続して勝ち点を落とすというとても厳しい結果になりました。
浦和はグスタフソンがスタメン復帰したことで、ビルドアップではグスタフソンをアンカーにした4-1の形でスタートすることが多かったと思います。そこに対して京都は3トップが中央付近でスタートするのがベースにあると思いますが、右WGのマルコトゥーリオがより好戦的に前に出てきてホイブラーテンや西川まで矢印を出していました。
浦和がそこを外して大畑までボールを届けた時には右IHの川﨑がそこまで出てきていましたが、京都の中盤が福岡が安居、平戸が敦樹の近くにいることが多いため、川﨑は13'10~のようにヘソの位置にいるグスタフソンと外側にいる大畑の両方を見るようなバランスになっています。
また、15'55~はマルコトゥーリオと一美のスタンスが逆になっており、そうなると一美の脇にいる関根がフリーになっていたので、浦和はSBが相手の矢印の届かずオープンにボールを持てる場所になりそうですし、この構造は京都のIHにとってはかなりハードになりそうなので、これの試行回数を増やして疲弊させられると良いかなと言う印象でした。
ただ、グスタフソンが負傷して武田と交代したことで浦和の配置が4-2-3-1になったところに対して、京都の方は飲水タイムを挟んでから32'55~のようにマルコトゥーリオが大畑を見て、川﨑がアンカー役になった安居とその先にいるホイブラーテンを見るようなイメージに変わったように見えました。
マークする担当のハマりが良くなったことで、浦和はそれまでのように関根や大畑のところでボールがオープンに持てることが無くなったことと、ハマりが良くなる分人を捕まえに京都の中盤が前のめりになったところをひっくり返すことを目論んで裏へのロングボールが増えていったのかなと思います。
38’25~も川﨑がヘソの位置にいる安居を脇に置きつつホイブラーテンへ出て行くことでマルコトゥーリオは大畑を見ることに専念できています。さらに川﨑が西川まで出て行った時には福岡が安居まで出て行っており、一美が関根、平戸が敦樹をロック出来たので、ボールを持っている井上は前へロングボールでプレッシングを回避しました。
浦和は4-2-3-1になってからは右に武田、トップ下に大久保という形になりましたが、ロングボールでプレッシング回避をする回数が増えたことが影響しているのかもしれませんが、前線の選手たちが横一線に並んでしまうことが多く、京都のゴール付近までボールを持って行っても打開がしにくくなっていただけでなく、ボールを奪われた時にはその横一線にいる選手たちが全員ボールよりも後ろになってしまうので、ネガトラのフィルターになれる選手も用意出来ていないという状態でした。
38'25~の井上のプレス回避の後もシュートを打ち切れずにボールを奪われ、そこから原へのロングボールを起点に押し込まれて京都の決定機になっていますが、チーム全体でのバランスが崩れている状態からの被カウンターでした。
前半の京都のチャンスシーンはこの場面のほかに47'50~の原が左外に流れてボールを受けたところから中央へ鋭いインスイングのクロスを一美に向かって入れた場面が挙げられますが、これも浦和がゴールキックを前線へ放り込んだところでこぼれ球を上手く作れず、敦樹と武田がボールを拾いに出たところをひっくり返されて前進を許しています。
京都からするとCFの原や右WGのマルコトゥーリオが中から外に流れて行ってチャンスメイクをする側に回った方がゴール前での危険なシーンを作れていましたが、チャンスメイクをしている本人こそゴール前にいて欲しいというジレンマはあるように見えます。
後半のキックオフからの流れもマルコトゥーリオが右外に開いていくことで鈴木冬一が中へカットインするコースが空いていますが、この時に原も左外に流れていてゴール前は一美と川﨑がいる状態でした。また、46'30~の浦和のビルドアップに対して前半の途中からと同様に川﨑がホイブラーテン、マルコトゥーリオが大畑を見るという形で人を嵌めた状況を作ったことでロングボールを蹴らせて回収した後も、マルコトゥーリオが右外に流れてクロスを上げる側になっており、原もマルコトゥーリオが前を塞がれると一番早くサポートのために寄って行ってゴール前から離れてしまいました。浦和贔屓の目線で観ている自分としては背が高くて足元も上手な選手がゴール前から離れて行ってくれるのは怖さが減って助かるなという感覚でした。
後半最初の5分間は前半の終わり際からの流れのまま、浦和がボールを持っても手前が全員捕まっているのでロングボールを蹴り出す、そこでこぼれ球を作れない上に、配置のバランスも良くないのでボールがすぐに自陣へ帰ってくるという循環でした。
ただ、51'10~に西川がクロスボールをキャッチして一旦プレーを止めて仕切り直したところから、手前で関根、その1つ奥で大久保、と2つ中方向へドリブルを挟んで前進して高い位置でのスローインを獲得すると、そこから大久保と武田の2人でペナルティエリア内に侵入し敦樹の決定機になっています。
さらに56'20~のビルドアップでは関根が敦樹と入れ替わって右IHの位置でボールを引き取ったところから前進に成功しており、この時は配置のバランスも良かったのでネガトラでボールを奪い返したり、京都のクリアボールを拾えたりとしっかり相手を押し込んだ展開を作れていました。
60分になるところで浦和は負傷明けでプレータイムに制限があったであろう関根と大久保を下げて、こちらも負傷明けである松尾と新加入の二田を投入し、京都は右SBに右利きの佐藤と、左WGに平賀を投入します。
浦和はビルドアップで関根を失ったことがさらに機能不全を招いていったのかなと思いますし、二田は自分の周りに広いスペースが出来た時にはそれを持て余してしまうような雰囲気があって、時間に余裕を持った状態でボールを持ってもそこから中へ入れるところでの精度も、そこから切り込もうとするときのスピード感もまだまだだったなと思います。
66'35~の浦和のビルドアップではその前のプレーの流れから川﨑と平賀が前に出て浦和のCBを掴みに行っていますが、ここで西川→アンカー→CBという縦+横で相手のプレッシングを外すお馴染みのパターンを発動します。さらにオープンになった井上と敦樹で原に対して2v1を作って前進、そこに対して寄せてくる平戸に対して敦樹と渡邊の2v1を作って前進、さらに武田の近くにいる福岡に向かって運んで福岡に対して敦樹と武田の2v1を作って前進と3連続で2v1を作って前進に成功しています。
これはトレーニングのレポートで度々聞かれる3v2など少し大きい人数の状態から局地的な2v1を作って攻略していくというところでの成果だと思いますが、ここでクリーンに前進できたものの、敦樹が手前に引いた分だけ前に出ていた渡邊と中央から右へ流れながらボールを受ける武田に対して、二田はスタートポジションである右WGの位置にいたままだったため、今度は三竿に対して武田、渡邊、二田の3v1と人数飽和しており、それによって京都のDFラインと駆け引きをしているのはチアゴだけという状態になっていました。
思い返せば今季の開幕当初は選手たちが自分のスタートポジションを遵守しすぎるあまりにノッキングを起こしたりもしていましたが、途中加入の二田も同じようなことが半年遅れで起きているのかもしれません。例えばこの場面は渡邊と武田が右から前に出てくるのであれば、二田は早い段階で三竿に近づく、さらには三竿の内側かCB間まで入り込んで相手に影響を与えるような振る舞いが出来ると良かったかもしれません。
65分の段階でアピアワウィアが足を攣っており、飲水タイムを挟んで75分に京都はアピアワウィアと福岡に変えて金子と米本を投入し、陣形を5-4-1へ変更しました。これによって大外で最初から余る選手が出来るので、それまでのように原やトゥーリオが外に出て行く必要がなくなり、77'10~はWBになった佐藤が大畑を外してペナルティエリア内へ侵入し鋭いクロスを送っています。
このタイミングで浦和は井上、京都は平戸が足を攣ってしまい、お互いに最後の交代カードを切ります。浦和はなかなかボールが入らなくなったサンタナも含めて下げて小泉と堀内を投入し、CFに松尾、トップ下に小泉、左WGに武田、そして右CBに敦樹という配置になりますが、これによって浦和は前線でボールを収める選手もサイズのある選手もいなくなったので攻め手が無くなってしまったように見えます。一方で京都は平戸に代えて新加入のラファエルエリアスを投入すると、このエリアスがブラジル人らしい狡猾なボールキープ技術を見せて京都の前への勢いを加速させます。
決定機やその一歩手前の数というのは京都の方が多かったというだけでなく、浦和の方はいかにゴールを取りに行くのかというところが時間が経ち、人を入れ替えるごとに分からなくなっていってしまったのかなと思います。離脱者が多いだけでなく、メンバー入りした選手たちも時間制限があるなど万全では無いコンディションだった中でどのようにやりくりすべきかというのは難しい所だったと思います。
先述した敦樹の2v1の部分だけでなく、ビルドアップでのホイブラーテン、佐藤、井上の振る舞いは昨季足りなかった個人戦術、個人スキルの部分での物足りなさを解消するものではありますが、それとは別の部分を見ると、今季の始動時から取り組んできたチーム全体の構造を維持しながらの適切な前進という展開がどんどん失われて行っているのはとても心配です。
グスタフソンがいなくなった後により顕著になった、配置を崩しのてボール前進によってネガトラが機能しなくなり、試合の展開を制御できていないことは、4-2-3-1をオプションにすると明言してからも発言している「試合を支配する」という言葉からは離れて行っています。そして、人がいない、結果も出ていない、という悪循環から、これが今加速していると思います。
4-2-3-1の配置へ転換した時に、保持においては「最初の状態のままで良い」という形から「動いて良い状態を作る」という形へ代わったということを書きましたが、「動いて良い状態を作る」ためには適切に動くことが求められますし、動く必要がある人とそうでない人という部分の判断もより求められます。スタートの配置が換わることで構造を維持出来る動き方も変わるわけですが、ここを再び整理するのにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。
今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?