見出し画像

左右対称にするのは難しい(2021/5/26 広島vs浦和)

勝利が目前だっただけに非常に悔しい失点でしたし、またしても4連勝へのチャレンジに失敗したのは残念でした。

5連戦の4戦目でしたが、スタメンは前節の神戸戦の後半のメンバーでした。ただ、相手の陣形が違えば空く場所も変わるわけで、メンバーが同じでもスタートポジションを変えることでボールの前進経路を作ろうとする形はありました。


ビルドアップ隊は2CB+2CHの4枚で、柴戸と敦樹は最後尾に下りることもありますが、基本的にはプレッシング時には5-2-3のように並ぶ広島の3トップのゲートの奥に立つことでハイネルと柴崎に固定して、この脇のスペースを右は小泉、左は汰木が使って前2列を越えることを目論んでいたのではないかと思います。

配置的にユンカーが中央に定位することが多いので、右のハーフレーンは田中と小泉の2人で狙うことが出来、前半のうちは佐々木がこのどちらについて行くのかはっきりさせられなかったので、浦和は右側からは割とスムーズに進むことが出来ており、CFが1枚の相手に対しては今シーズンで一番意図的な配置が取れていたように思います。

画像1


先制点の場面は西と小泉がポジションを入れ替わったことで広島のプレッシングの目線にずれが生じ、小泉がフリーで前を向いた状態になり、田中達也の抜け出したコースへ見事にボールを通すことが出来ました。クロスで交錯した後、すぐに折り返しのボールを認知して見事に押し込んだユンカーは流石でしたが、そこに至るまでのボール前進は人への意識が強い広島の特性を利用したいというのは見えたのではないかなと思います。

画像2


左の汰木と明本もお互いのポジションを入れ替えて相手のマークをずらそうという試みは見えましたが、右とは違ってどちらかがハーフレーンでどちらかが外レーンの2枚なので、それならハーフレーンにいる方を野上、外レーンにいる方を藤井が見ればよくなるわけで、特に藤井は自分のマーク対象をロックするのが早いため、そこへボールが出た時のアプローチはとても早かったです。17:55の槙野→汰木のパスカットからカウンターに出て行ったのはその象徴のようなシーンだったかなと思います。


上手くボールが回せない時に、ボールを受けるために手前のスペースへ下がって後ろ向きでボールを受けてしまうというのはポゼッションへの意識が高いチームではよく見らる光景で、浦和の左サイドはまさにそういった感じでした。

こういう時にハーフレーンにいる選手が後ろに抜けていくことで手前のスペースを広げて敦樹に出てきてもらうとか、ユンカーがそこへ下りて起点になるとかが出来ても良かったかなと思います。


後半になると広島は佐々木がボランチ脇に入る小泉を見ることが意識づけされたようで、46分と48分に立て続けに佐々木がハイネルの背後にポジションを取った小泉を捕まえに出てきています。

たとえそこで剥がされたとしても広島は5バックなので中には逆サイドの藤井も含めて3枚残っているので、ここに出て行く!と決まったからには一気に出て行くというのはアグレッシブなアクションを好む城福監督のチームらしいなという感じでしょうか。



広島は56分に浅野と川辺を投入。これを見た浦和は敦樹と田中を下げて山中と関根を投入し4-1-4-1のような形に変更します。これは恐らく浅野がシャドーに入った時の守備陣形が要因だろうと思います。シャドーと表現するのがあっているのかも正直よく分かりません。

前節のセレッソ戦でもそうでしたが、列ごとの人数で表せば5-3-2。ただ、中盤の3は5-4-1の右SHがいなくなったように左に偏った並び方。そして、この左に偏ったことで空いたスペースというのが浦和にとっての右ハーフレーンになる訳で、そこに送り出されたのが山中でした。

インサイドでのポジションでプレーするのが得意な彼が輝きやすいシチュエーションが用意されており、荒木のハンドを引き起こしたクロスを放ったのもこの位置からでした。

画像3


しかし、思いのほかこのスペースを使おうとする素振りが無く、前半と同様に右サイドを中心にボールを回していく場面が多かったです。山中が交代で入っていくときに明本や汰木に指を回すような仕草をしていたので、この位置でローリングしていこうという意識はあったのではないかと推察しますが、山中、汰木、明本がいずれも相手と近い位置にポジションを取っていることが多かったように思います。

浅野が2人分走ると言わんばかりに自分の脇のスペースへ追いかけていったというのもあったとは思いますが、例えばここで誰か一人が相手から離れた位置に立ってボールを受けることが出来ていれば、そこに広島の選手がズレて対応することになるので、今度はほかの誰かが空くという好循環を作れなかったかなと。

画像4


ただ、この試合だけでなくシーズンを通して右サイドで作って相手を寄せておいて、広くなった左サイドへ岩波が発射するというのが浦和の定番パターンになっており、試合の途中になって「ここからは今までとは逆で左から作っていこう」と意識転換することは難しかったんだろうなと想像します。

そもそも、右の西、関根、小泉は狭いスペースで上手く振舞える選手ですが、左の山中、明本、汰木は大きいスペースの方が得意な選手なので、そこに入っている選手の特性的にも難しかったのかもしれません。

汰木に代えて武藤を投入して、もう少し左でも作れそうな状況を作りたかったのかもしれませんし、結果的にあの山中のクロスの直前は武藤が狭いスペースで山中にボールを落としているので、狙ったことを少しは表現できていたのかもしれません。

ただ、シーズンが始まって3か月の段階なので、得意パターンを反転させたやり方をいきなり実践するというのは厳しいでしょう。連戦中には新しいことの積み上げはしないというのがリカルドの方針ですし、この停滞は受け入れる必要があると思います。これからの積み上げに期待しましょう。


試合としては2回リードしながらも2度追いつかれるという展開だったので、勝ち点2を落としたという感覚になってしまいますかね。ただ、お互いに同じような場面が10回あったとして、そのうち何回ゴールになりますか?と言われれば同じような回数だったんだろうと思うので、引き分け自体は妥当な結果だと思います。

それでも、4-4-2vs3-4-3で、前線からのプレッシングが出来る小泉、ユンカーはすでにピッチから外れていたことで相手の使う幅を制限することが難しい状況になってしまったので、それであれば3月の横浜FC戦や札幌戦でやったような片方のSHを少し後ろに落として5枚気味に構えることで対応する方法もあっても良かったかなと思います。

サイドチェンジからトラップ一発で山中を外した藤井は上手かったですが、5-4-1になっていれば内側に入られた時にあれほどスクランブルな状況にはならなかったのかな。。とか。ま、結果論ですし、実際に5-4-1にしたら選手たちの守備での目線が変わってしまって、かえって迷うようなことがあるかもしれません。

これも、ビルドアップの左右反転と同様に、今後際どい試合をものにしていくためのオプションをどう積み上げて行くのかを見守っていきたいと思います。


さて、5連戦の最後に迎えるのは昨年ダブルを食らった名古屋。守備の柱である丸山が怪我で離脱し、仙台にも敗れて少し調子は落ち気味のようにも思いますが、狭いスペースを馬力で突破できるアタッカーを揃えており、浦和がこれまで苦手にしてきたのはこうしたゴリゴリいけるタイプの選手なので、そこをいかに抑えるのか。どれだけスカウティングをして臨めるか分かりませんが、リカルドが名古屋をどう捉えて対策を取るのか楽しみにしたいと思います。

今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?