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【雑感】2023/5/31 J1-第11節 浦和vs広島

京都戦の前半で手前でのプレーが増えて、ハーフタイムで監督から一喝されて、という流れがこの試合にも続いたような感じでした。広島は1トップ2シャドーが浦和の2CB+岩尾に、両WBが浦和の両SBを積極的に捕まえに来ていましたが、浦和の方は序盤から手前で繋ぐことに固執せずにカンテを筆頭に前線の選手を目掛けて蹴飛ばすことが多かったです。

また、手前から繋ぐとしても中央を経由して逆サイドへ展開することは控えて同サイドでレイオフを使いながら縦にやり切ろうとすることで、ボールを失うとしてもリスクが低い場所を選んでいた印象です。

昨年10月のアウェーゲームでも広島の積極的な縦スライドによるプレッシングを受けて苦戦しました。あの試合との共通点はビルドアップ隊を形成するメンツの入れ替えをあまりしなかったことで、違いとして手前や中央でビルドアップのためのパスコースを用意することを前提にしないので、相手が前に出てくるからその分もっと手前に引いて相手の背中のスペースを広げるということをしなかったということだと思います。それによって、ロングボールを入れた後にこぼれ球を拾う選手を用意出来たというのはこの試合の重要ポイントだったと思います。

簡単に選手が列落ちしないというのは、先述した広島のWBの縦スライドの背中を取ることにもつながっていて、関根とモーベルグは手前に下りずにWBの背中で裏を取りに行くアクションを何度も起こしています。20'40~のようにそのアクションで相手のラインを押し下げることが出来ればカンテが縦パスを受けるスペースが作れるという流れもありました。

それだけでなく、右サイドは敦樹がポジションが京都戦と比べて高くなっていて、モーベルグの裏抜けや外に開いて酒井とパラレラの関係性を作ろうとしたときにハーフレーンの前に出ていくことが多かったと思います。これもまた広島の前向きなアクションを裏返しに行くことが出来ていたのかなと思います。

盤面を攻略するようなきれいな前進はなかなかありませんでしたが、結果的にはこのような前に出てきた相手を何回も押し戻したことが相手に疲労を蓄積させていったのかもしれません。


広島に先制はされたものの、66分の3枚替えで安居をCHに下してアンカー役のポジショニングが流動的になったことと、この交代の前に広島がシャドーにエゼキエウを入れたことによって浦和は下から繋げるようになっていきました。

安居は岩尾よりもスピードがあるのでポジショニングに幅があったり、平野よりもフィジカルがあるのでネガトラでも体を入れられたり、岩尾と平野の中間のようなスタンスで上手くCHへ移行できたように見えます。

広島は野津田→エゼキエウの交代によって川村が1列落ちましたが、非保持のタイトさという点で浦和のアンカーチェック担当がエゼキエウに変わったことの影響は大きかったと思います。交代直後の約1分間はアンカーの安居を経由して左右に相手を振ることで敵陣に押し込むことに成功しており、そこで一気に試合の流れが変わりました。

メンバーを代えても浦和は前線の4人が列落ちしないということは継続していて、ロングボールに対して競り勝てなくてもこぼれ球を作る、そしてそのこぼれ球を拾える位置に人がいるという状態が作れていました。

同点ゴールは押し込んだ流れからでしたが、押し込むまでのボール前進は西川からのフィードを関根が佐々木と競ってこぼれ球を作り、それを近くにいた興梠が拾ってサイドへ展開したところからでした。ロングボールは競り勝ってボールを収めることが出来れば最高ですが、相手に弾き返させない(ボールを自陣に押し返させない)でこぼれ球を作ることがとても重要です。

コンディションの問題もあるとのことですが、G大阪戦の後半からトップ下が小泉ではなく安居にスイッチされ、トップ下の選手が手前に下りるアクションがグッと減りました。手前から繋ぐことに固執しない、それによってピッチの人数バランスもより前のめりにしやすくなったことでこうした場面が増えてきました。

何度か雑感で書いていますがマチェイさんがレフポズナンでやってきたのはこういうスタンスでしたし、ACL決勝の後は変化を加えていくという言葉の通り、キャンプの段階でやろうとしていたことを表現できるようになってきたのかなと思います。


広島も保持で前から選手を下してサポートを作るということはやらないため、3-4-2-1の配置のままビルドアップを行っていました。それに対して浦和はSHを左右CBへ出すようにしてプレッシングを行っており、特にモーベルグは外にいる東へのコースを切りながら佐々木まで出ていく意識があるように見えました。

ただ、出ていくのが遅れるとコースの切れ具合が甘くて佐々木から直接東までボールが出たり、きちんと寄せられても佐々木から野津田(縦パス)を経由して東へ通されることはあって、プレッシングに寄ってボールの奪いどころを作るまでには至りませんでした。


また、広島は高い位置で前向きな選手を作る方法として縦パスを受けた選手がターンするよりもレイオフで3人目に前を向かせることの意識が高いように見えます。これは横浜FMにも同じようなことが言えますが、ターンするよりレイオフの方が技術的なハードルが低いのと、前を向く選手はサポートのために前に出ていきながらボールを受けるのでより勢いをもって次のプレーに移行できるというメリットがあります。

最後は敦樹がペナルティエリア無いで上手く体を入れてボールを取れた23'04~もそうですが、ペナルティエリアの手前でFKになった31’30~などCBやWBからCFへ前向きなパスを入れて、そこに対してシャドーの選手がサポートに入って前向きにボールをもらうことで浦和陣内へ攻め入ることが何度もありました。

後半早々の広島の得点も、ポジトラからでしたがCFのドウグラスヴィエイラへボールが入った時に川村が素早くサポートに出ていったことで浦和の守備陣をひっくり返してシュートまでいっています。チームとしての色が良く出ていた場面だったと思います。


これは5バックだと仕方がないという面もあるのですが、一旦押し込まれた状況になった時に5バックだとボールを奪った時に前に出ていける選手が少なくなりやすいです。外でプレーする選手がWBだけなので、相手も人数が多い中央に人数が偏りやすく、それによってポジトラでの脱出経路も限定的です。そうなると、浦和が3枚替えした66分から酒井のゴールまでであったり、その後の時間帯も含めて広島は自陣の深い位置から出ていきにくくなります。

また、先述の通り浦和が保持でロングボールも使ったことで広島の選手たちの疲労を溜めていったことも影響したかもしれませんが、後半は浦和が押し込める時間が増えた分広島の前向きなアクションは減っていった印象です。

それでも、浦和のように4バックのチームが5バックのチーム相手に試合終盤まで4-4-2のままその構造を壊されることなく試合を終えられたのはとてもポジティブなことだと思います。

一般的に4バックのチームは5バックのチームに対して幅を取られてSB-CBの間を取りに来られた時に中央の人数が薄くなることが多く、浦和はこの試合も控えに岩波がいるので90分を越えてリード出来た状況で3CBにしてゴール前からCBがいなくなるのを防ぐというのが常套手段の1つとしてあると思います。ただ、その状況での選手交代は安居→柴戸で目指したのはあくまでも4-4-2の維持でした。

2月のFC東京戦、横浜FM戦は逆サイドのSHの絞りが甘くて、そこを使われて逆サイドへボールを逃がされてピンチを招くというのがありました。それと比べるとこの試合のモーベルグは逆サイドにボールがある時にはきちんと絞ってきていたり、自分のサイドにボールが来たら前向きに出ていったり、やるべきことが頭の中で整理されて、尚且つそうしたアクションを起こし続けられるコンディションになってきたということなのでしょう。最後まで4-4-2を保てるというのはアタッカーの選手が入りがちなSHの貢献が欠かせません。

今のチームの4-4-2でのきちんと構造を保ったゾーン守備はそのうち時間を取って細かく見て行きたい、あるいは誰かが見てまとめてくれると良いなと思います。いわゆる4-4-2のゾーン守備の教科書みたいなもので提示されていることをそのまま表現できている場面はいくつもあるので、そういう本や動画と見比べながら試合を観ても面白いかもしれません。


未消化分をきっちり勝てたことで順位表の見栄えも良くなってきました。次の鹿島戦で勝てば優勝争いに関わる指標としての勝ち点≧試合数×2に追いつくことが出来ます。

試合後のDAZNでのインタビューで敦樹が「優勝争いするために勝つしかなかった」と話していましたが、こうして順位表で上にいるチームに対して直接勝つことで勝ち点の体裁を整えるだけでなく自分たちの気持ちも高揚させて行けるので、次の鹿島戦もしっかり勝ってさらに高い順位へ行きたいですね。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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