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【雑感】2022/9/3 鹿島vs浦和(J1-第28節)

試合の2日前にクラブから選手1名、スタッフ1名のコロナ陽性がリリースされましたが、この試合のスタメンが出た段階でさらに衝撃でしたね。試合後に酒井はACLのノックアウトステージの中で肉離れを起こしていたとの記事が出ましたが、彼以外にもACLのノックアウトステージに出場した選手で言うと、西川、馬渡、モーベルグ、大久保、江坂がベンチ外でした。

この試合のメンバー選考でどれだけギリギリのタイミングで変更が入ったのかは分かりませんが、メンバーが出た段階では言ってもこれまで試合に出てきた選手ばかりだし、イレギュラーな要素はあるにしても全然やれて欲しいという思いがありました。


鹿島は前節の川崎戦から引き続きの4-◇-2の配置で保持での外担当はSBだけで、それ以外の選手は中央3レーンにいる状態。ビルドアップは2CB+ピトゥカの3枚にIHの樋口、和泉がサポートに入ることはあるものの、基本的には前線にしっかり人数をかけた状態で、幅を取るSBにボールが入った時にはサイドを深くえぐるのではなく早めにクロスをファーサイドへ入れるという約束事があったように見えました。

鹿島の先制点の場面は鹿島からするとポジトラで一気に攻め入った展開ではありましたが、クロスのターゲットには鈴木、仲間、カイキの3枚が入れていたのと、クロスが岩波、ショルツを越えたファーサイドまで飛ばされてしまいました。

大畑がちょっとショルツとの距離があったりもしましたが、鹿島としては岩波、ショルツというサイズがあってクロス耐性のある場所を越えて、サイズ的にミスマッチになる大畑のところでヘディング勝負したのでしてやったりだったのではないかと思います。


ただ、この場面は浦和の15'00~のビルドアップが引っかかったところからでした。鹿島は2トップの鈴木、カイキとトップ下の仲間がショルツ、岩波、岩尾をロックして、ビルドアップ隊を牽制するスタンスでしたが、そうすると手前でスタートするSBが浮きやすいですし、実際に宮本がフリーでボールを持てる場面が多くありました。

この場面はビルドアップでの配置で少し試行錯誤を始めてショルツを左に開かせて岩尾が間に下りたところからスタートして、岩波からのパスを宮本はフリーな状態で受けています。

宮本へカイキが横方向に追いかけてきて縦に進みにくかったので内側でサポートをした小泉にボールを渡しますが、小泉に対して仲間は逆サイドやバックパスを切るような角度で寄せていきました。この時の宮本のサポートの仕方がちょっとイマイチだったというか、状況を狭く苦しくしてしまったかなと思います。

この場面に限らず鹿島が4-◇-2の間は特に宮本がオープンにボールを持てる場面がありましたが、ここで自分で2トップ+仲間のラインを運んで越えに行っても良かったかなと思いました。あるいは、小泉に寄るのではなく、仲間の小泉への矢印を感じて、関根がいた場所へポジションを移して関根を押し出しつつ小泉の横サポートに入るとか。

ラインを越えるためには一瞬でもグッとスピードアップする必要がありますが、そのアクションによって相手の重心を後ろに下げることが出来るので、そのままラインを越えられないとしてもビルドアップ隊が鹿島の選手たちから距離を作ることが出来て、ビルドアップのやり直しもしやすくなります。


SBが自分で運んでラインを越えた場面で言うと50'50の大畑のプレーが比較対象として分かりやすいかなと思います。ショルツからのパス自体も「そのまま前に行けよ」というメッセージを感じるボールで、大畑はそれをしっかり汲んで自分でボールを運んだことによって広瀬を引き付けて、その背後を松尾が取れています。

松尾が広瀬の背後を取れたので関川が引き出せて、そのままそのスペースへ大畑が入っていってPA内まで侵入出来ています。大畑からのクロスは弾かれてしまいますが、鹿島の選手たちを後ろ重心に出来ているのでこぼれ球を敦樹が前向きに拾えていて二次攻撃へ移行出来ました。

ここまでスムーズに相手陣内へ侵入出来たのは出来すぎ感もありますが、停滞気味の右サイドに比べて、大畑のスキルとそれによって生まれるスペースへの松尾のアクションも良かったですね。この場面はちょっと効果的に前進が出来なかった右サイドとは対照的な場面かなと思いました。


浦和の右サイドの停滞感は失点後に岩尾と敦樹の左右を逆にしたことも影響していたかもしれません。序盤から岩尾が相手にロックされているので敦樹が岩尾と横並びになって、宮本が残る最終ラインと合わせて3-2の形になる場面もありましたが、そうすると左は中盤より前に外が大畑、内が松尾の2人と左IHからトップ下を主戦場にしていた小泉が良い距離で立てていたのですが、右は外側手前の宮本と外側奥の関根という2枚だけの構図になりがちでした。これは春先にも似たような構図がありましたね。


敦樹が左、岩尾が右になってからは徐々に小泉が右側にポジションを移してこれまでの試合で敦樹が見せてきたような右ハーフレーンを抜けて行くアクションを行っていました。前半のうちに1点返した場面はまさに右外の宮本、関根に+1で小泉がハーフレーンを飛び出していったことがきっかけでした。

小泉がこうしてアクションに変化をつけたのは良かったのですが、敦樹が左CHになったことは保持においてはあまり効果は感じませんでした。もしかすると失点場面のように大畑が鹿島のクロスの狙いどころにされていそうということで、大畑の近くは岩尾ではなく敦樹にして手当をしたかったのかもしれません。


後半になると鹿島は仲間をCHに落としてフラットな4-4-2に変更し、浦和は関根がSH兼WBの4-4-2⇔5-3-2に変更しました。浦和の変更については鹿島のクロス砲撃への耐性を強める意味合いが大きかったと思います。より大畑がその局面にさらされないようになったことでクロスの怖さは減りましたが、後ろに人数が増えるのでボールを奪ってカウンターを仕掛けても人数が足りないので迫力は出せず、そこで奪われてまた押し戻されるという展開が続きました。

55分くらいまでは押し込まれる時間が続いた中で、55'25に彩艶がクロスをキャッチした際にすぐに切り替えてボールを岩尾に渡したのはちょっと経験不足というか、状況判断がまだまだ足りていないなという気がしました。

どんどん前がかりに4局面の循環スピードを上げたい鹿島と、一旦保持ではスピードを落として静的に攻め筋を見つけたい浦和というのが両チームのスタンスだと思います。この時間帯までは鹿島の望むスピード感で推移した中で、やっと落ち着いて自分たちのテンポに戻せる場面だったのかなと。結果的には鹿島が撤退したのでビルドアップの局面になりましたが、焦ってボールを渡さなくても同じような局面に出来たのでは?と思ってしまいます。


鹿島は4-4-2に変更後は一応鈴木とカイキが岩尾を間に挟んで監視しておくイメージだったのかもしれませんが、しっかり消せていたわけではないので岩尾がこのスペースでボールを捌ける場面が作れるようになりました。73'30は大畑から内側に横パスを入れて2トップと2CHの間で岩尾が横ターンして宮本までボールを飛ばせており、外の宮本へ安西が出たら内側を関根が抜けて三竿を引き出すというのは良い流れだったと思います。

対4-4-2ではこれまで積み上げてきた4-1-2-3のような配置でビルドアップが出来るようになり、ユンカーに代わって入った柴戸が右IHになりますが、これまで敦樹がやってきたことと同じように相手のSHの背中でボールを受けてターンして前を向くというアクションが出来ていました。

このようにポジショニングでは誰が入ってもいるべき場所に人がいるようにはなっています。ただ、そこでボールを受けた上で何が出来るのかというのは個人のボールスキルや判断スピード次第になり、その部分でこれまで試合に出ていた選手たちと彼らに代わってこの試合に出た選手たちでは差があるのが見えてしまいました。

鹿島の4-◇-2、4-4-2に対して取るべきポジションを取れていながらそこで作れた優位を相手に無理やり潰されたわけではなく、自分たちの力量のせいで活かせずにチャンスをなかなか作れなかったという展開に対してのガッカリ感が、得点経緯だけ見れば2点ビハインドを追いついたというポジティブな要素を上回っていました。

試合後のフラッシュインタビューで岩波に対して「アウェーで貴重な引き分け」という表現をインタビュアーの日比野さんはしていましたが、個人的には勝ち点2を失ったという感覚です。


5月の引き分け地獄の時はチームとしての最適解というか、お互いに取るべきポジションが取り切れていないのでゴール前に迫力を出せなくて得点できなかったという内容でしたが、この引き分けはちょっとテイストが違いますよね。

保持ではやりたいことが良く分かるものの非保持の整備はまだまだだったこの試合の鹿島に対して引き分けているようではACL決勝でアルヒラルにやり返すどころか、今季3位を狙うなんていうところにすら届かないでしょう。

だからといって、今シーズンは残念でしたが。。と白旗を上げるなんてありえないし、もう間に合わないかもしれないけど少しずつでも個々が出来ることを増やしていくしかありません。順位表という他チームとの比較とは別のところで、自分たちに矢印を向けて取り組むしかありません。

このままズルズル脱落していくようでは去年と同じです。そんな悔しいことはありません。嫌な流れをきちんと次の試合で断ち切れるように準備していきましょう。次はホームですから。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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