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【雑感】vsAl Hilalに向けて

Al Hilalの試合のうち、国内での上位対決3試合(vsAl Ittihad、vsAl Nassr、vsAl Shabab)とACLの外国人枠の関係でDF、MFがサウジ国籍の選手を中心にしていたvsAl Batinを少しスキップしながらですが観たのでその感想を簡単にまとめておきます。

◆Al Hilalの保持

4-△-3、ないし4-▽-3が彼らの基本陣形ですが、中盤の三角形の頂点がどちらに向くのかはあまり決まっていないというか、選手のキャラクターによってどちらにも見えるという印象です。

基本的にビルドアップは2CB+2CHの4枚が担っていました。CBがボールを運んで縦パスを付けるという雰囲気はあまり無くて、ボールをピックアップするために落ちてきた中盤の選手がボールを前に出していくイメージ。

中盤の選手のうち、2枚がボールをピックアップしに下りていって、もう1枚は少し前目にポジションを取ることが多いのかなと思います。3枚とも下りることもなくはないですが、傾向としては後ろ重心2人と前重心1人という分担。

SBはCBの脇のあたりからスタートすることもありますが、基本的にはどんどん前に出ていって攻撃的に振舞うことが多かったです。その分、カウンターを食らう時は誰もいなくなった外のスペースからになりますが、中盤の選手が機動力高めなのとCBも迎撃態勢はあるので最悪ファウルで潰してしまって一旦プレーを切るという割り切りもしっかり出来ていたので、カウンターのままやられてしまうというイメージはあまりわきませんでした。

前線3枚を見ると左WGは外に張るというよりは内側に入ってプレーをする選手の方が起用されがちで、右WGはほぼ強くて速くてデカいMaregaになります。そしてCFのIghaloもデカくて強くてターゲットには最適な選手。

ビルドアップで丁寧に下から繋ぐことに主眼を置くチームでは無くて、強力なレシーバーが前線にいるので、相手の中盤ラインの背後でボールを受ける選手は用意せずに、最終ラインを背負いながらボールを受けられる選手にズバッと縦パスを入れるかロングボールを入れるかというイメージ。

広範囲に動けるIHや前のめりなSBがサポートに入るので、高い位置で前向きなトランジションを生み出して相手を押し込んでいくというのが彼らの身体的な強みも踏まえて狙っている部分なのだろうと思います。

では、Al Hilalの保持vs浦和の非保持でどうなるかを考えてみると下図のような感じでしょうか。

浦和はいつも通り2トップが中を閉めて外誘導というのが基本線だと思います。ただ、Al Hilalも特に右サイドはWGとSBが外外で並ぶことも気にしていなさそうなので、浦和が狙っていることとAl Hilalが許容していることがかみ合いそうです。となると、分かりやすくMaregaと対峙するであろう左SBがどれだけ耐えられるのか、それは空中戦も地上戦もどちらも、というのが肝になるだろうと思います。

浦和の今年の強みはショルツ、ホイブラーテン、西川という一番自陣ゴールに近い選手のレベルが高いことなので、例えば左SBが簡単に外されてホイブラーテンがゴール前から離れないといけなくなるようなことがあると大きい選手が中央にいるので危険です。

なので、マジで明本頑張れだし、関根が明本の出ていった内側のスペースを埋めに戻ったり、岩尾が斜めに落ちたりしてなるべくCBが外に引き出されないように、出来るだけ人が入れ替わったとしても4-4-2(4-4-1-1)の陣形を崩さずに対応できると良いなと思います。


◆Al Hilalの非保持

中盤の選手がいかに前向きにアクションを起こすか、というのがAl Hilalのプレッシングの目安だろうと思います。特に4-1-4-1でスタートした時にはIHがどんどん前に出てきます。中継映像で試合前のフォーメーションも4-3-2-1みたいに表記していることもあったくらい、IHはCFの脇まで出てきます。

だからといってWGが前に出たIHの背中をケアするわけでは無く、WGも前に出ていきます。この辺はどこまで設定しているのか分かりませんが、2列目は前に出るノリが強めです。アンカー役の選手も前に出たIHの背中をケアするわけでは無く、ボールサイドに寄っていってボールを刈り取る意識が高めです。

それはAl Hilalの選手たちが体も大きくて、スピードもあるので、そういった選手にガンガン突っ込まれた時にそこをきっちり外して裏返せるというチームが多くない、それなら裏へさっさと蹴ることも厭わないというチームが多いので前に出ることによって得られるリターンが大きいからそういうノリが醸成されているのかもしれません。

中盤より前の選手が出ていった分、DFとMFの間は広めに空きやすいです。そこに対してDF陣が迎撃に出ていくこともありますが、どちらかというと最後にゴール前でやられなければ良いというテンションで下手に出ずに待ち構えるか、前に出るならガシャンとファウルでも良いので潰して時間を稼いでしまう、という割り切りがハッキリしている気がします。

J1で上位にいるチームの傾向としてはある程度チームとしてコンパクトな陣形を取って、前の選手の矢印の根元は後列の選手が縦スライドして埋めるというチームの方が多いですし、嫌な言い方をするとお行儀良く守るチームが多いので、普段の試合とは判断、思考の基準が違う相手に対して下手に感情を動かされないことは大切だろうと思います。喉輪、ダメ。ゼッタイ。


では、先ほどのようにAl Hilalの非保持vs浦和の保持でどうなるかを考えてみると下図のような感じでしょうか。

前向きにアクションを起こす相手に対して、そのプレッシングを越えていくことは今の浦和の選手は決して苦にしてはいないはずですし、そこをフットボール本部体制になってから強化してきたと思っています。

さらに、今季は外レーンで"パラレラ"を使いながら相手のプレッシングを越えようとするアクションを増やしているので、例えばSBが手前に引いて相手WGの矢印を引き受けることがあれば、その矢印を裏返すアクションとしてパラレラの動きで越えていくことはイメージしやすいです。

名古屋戦で酒井が負傷交代して左利きの明本が右SBになると右サイドではこれがやりにくくなりましたが、酒井が出場可能であれば、両サイドでSBが順足になるので縦方向にボールが出しやすくなります。この時にパラレラだけでなく、SB、SHで相手のWG、SBを引き出してトップ下が流れていくというマチェイさんが「前やったことあるよ!」と言っていたアクションの形も起こしやすくなるだろうと思います。

「レフ ポズナンにいたときにナーゲルスマンのバイエルン ミュンヘンからコピーしたものもあります。それは、サイドでトップ下がスペースを使うというものです。相手の左サイドバックを引き出して、そのスペースを突くというところです。リーグでその形から決勝点を挙げた試合もありましたので、私もかなり満足できたものでした」

川崎戦の雑感で作った「こうなったら良かったな」の図


また、IHも前に出てくるということは柏戦にも近い場面がありましたが、相手が出した矢印の根元で小泉がボールを受けるという展開も考えられます。川崎戦でシミッチに後ろから何度も潰されていたので不安もありますが、そこであらかじめ相手から距離を取ってボールを受けることが出来ればターンで外せると思いますし、そこはミクロの部分でついてくる相手との駆け引きで勝てるかどうかだと思います。

そして、そうした小泉、大久保、関根が相手の中盤ラインの背後でボールを受けるために岩尾が矢印を引き受ける、相手を引き付けておくという役割もあるのではないかと思います。彼がボールを受けられないから良くないのかというとそうではない構造もあって良いと思います。


勿論、ボールを持つことにリスクはあると思いますし、特に1st-legは5/6のホームゲームに向けた前半90分という考え方になるので、そこで試合を壊さないことはマストです。ただ、そのリスクを恐れてボールを捨ててベタ引きする方がリスクが大きいような気がします。

Al Hilalはこれだけ「チームとして」プレッシングを裏返せるチームと対戦することの方が少なかったわけですから、そこで上手く前進して相手を慌てさせることが出来るかもしれません。なので、そのリスクを取りに行く価値はあると思います。


◆最後に

2019年の惨敗を僕らは確かに覚えているし、忘れることなんて出来ません。でも、その2019年の末からスタートした現在のフットボール本部体制では「チームとして」保持、非保持の質を高める試みをしてきて、国内では確かな強みにすることが出来始めていると思っています。そして、ここまで書いてきたようにAl Hilalの試合を観ていく中で「今の浦和ならこうやったら上手くいきそう」というポジティブな想像が湧いてきます。

「三年計画」を経てどれだけ自分たちがやれるようになったのか、しかもそれを同じクラブ相手に試せるなんて、そんなチャンスはなかなかあることでは無いです。強い相手にも立ち向かうための道具として「チームとして」という戦術の部分を積み上げてきたはず。だから、そこで相手を過度にリスペクトしてビビってしまうなんて有り得ないです。

戦術を実行するためには自分たちがやれるということを信じないといけない。選手たちにはその自信を強く持って欲しいし、試合の流れの中でその自信が揺らいだ時にはアウェイに乗り込んだ有志達が選手たちを奮い立たせて欲しい。

ミスがゼロの試合なんてないし、1回ミスしたからと言って次のチャレンジもミスになるとは決まっていない。ビルドアップが引っかかっても、プレッシングを外されても、予期せぬ笛が吹かれても、変なタイミングで相手サポーターが盛り上がっても、たくさんのネガティブな要素は想定内にして、常に次のプレーを成功させるために、この決勝で勝つために闘って欲しい。

5/6に最高の結果を掴むために、まずは前半90分を勇敢に戦ってくれることを期待してキックオフを待ちたいと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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