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【雑感】2023/8/13 J1-第23節 広島vs浦和

五分五分なら前に出ていく方を選択するとか、落ち着けるよりはどんどん裏に出ていくとか、そうした好戦的な姿勢と、プレーテンポが上がる中で1つ1つの判断やプレーが雑になるということは紙一重だったりします。多少アバウトにやってもスピードがあるからなんとかなる場合もありますが、スピードを上げた中でも正確にボールを扱うとか、ボールを出す場所を見極めるとか、そうした丁寧さがないと簡単には相手を攻略できません。

この試合は開幕当初にあったような、前に出ていきたい気持ちは見えるけどそれによってプレーが雑になっていないか?ということを感じるものになりました。それは試合の中でパスがちょっとズレたとか、ボールのコントロールがズレたとか、パスを出す場所や選手がいる場所の判断がかみ合っていなかったとか、そういった事象があったからこその結果論ではあるのですが。


とは言え、まずはこの試合で明本が復帰しただけでなく、彼がSHとして起用されたこととチームが前節から好戦的な姿勢を継続していることがリンクした場面から振り返ってみます。

浦和がショルツ、ホイブラーテン、岩尾の3枚でビルドアップをする傾向があるのに対して、広島は1トップ2シャドーでその3枚に噛み合せてきたように見えました。2シャドーが2CB、ソティリウが岩尾を担当するというイメージだったのかなと。

こうして人をかみ合わせる、マンツーマンのような形にするときにはマーク対象を自分の正面に置くというのが基本だと思いますが、岩尾がソティリウの背中を取れている時にはそこへボールを入れてみるということもしていて、要はそこで岩尾がターンして前を向ければ相手3人を置き去りにして前進できるということなのですが、2'46~のビルドアップは正にそういった形でした。

岩尾からのボールは塩谷に渡ってしまいますが、塩谷のコントロールミスに乗じて明本がボールを奪うとカンテとのワンツーでハーフレーンの奥を取ってクロスを上げるところまで行くことが出来ました。

明本はドリブルで突破するというタイプではありませんが、こうして周りと繋がりながらこの場面でのワンツーのような形で裏を狙って行ける、それを連続してやれるという選手なので、彼を2列目に補強できたことで今のチームがやりたいことが表現しやすくなりそうだなというのを感じた場面でした。


そして、先制点のカンテのゴールの時にもそのすぐ近くにいた明本の動きは見逃せませんね。ホイブラーテンからのロングボールの出し先には明本とカンテがいて、明本はボールの受け手をカンテに譲って自分はカンテがボールを収めた時には荒木の近くを通って裏のスペースへ抜け出しに行っています。

結果的にこの明本のアクションによってボールに一番近い位置にいた荒木がカンテに対して対応することが出来なくなり、カンテが見事なミドルシュートを叩きこむためのスペース(=時間)を作り出しています。荒木としては明本の対応をしなければカンテからスルーパスが出て抜け出されてしまうので他の選択は難しかったのだろうと思います。


序盤からアバウトなボールもカンテが収めてくれて、それによって陣地回復出来る場面が何度もありました。そこに対して広島の方も時間が経てばそのやり方に慣れてきて、人を付けることで簡単には収めさせないように対応していますが、カンテへ人を付けてくることを見越してなのか、敦樹がそこを追い越したり、追い越せる位置でスタンバイすることもありました。

ただ、ボールの出し手はあくまでもカンテを目掛けて蹴っていることが多く、そこで荒木に触られてボールがこぼれた時に敦樹は前に出ていっていて、岩尾はビルドアップ隊になっているので中央がスカスカになってトランジションが機能しない場面が出てきました。38'40~は西川からのロングボール、43'25~はショルツからの縦パスで同じ現象が起きています。


プレーテンポを上げるということはその場で意識的に考えながらプレーするよりも無意識的な判断の方が増えやすくなると思います。無意識での判断というのはその人の性格であったり、やりやすさや成功体験に依存した選択をしがちです。

この試合では序盤からカンテがボールを収めてくれたという成功体験から、上で図にしたように、カンテが相手を引き連れて裏にスペースを作れていて、そこへ敦樹が入れ替わりで飛び出しているにも関わらず、カンテへボールを出す選択をしてしまったのかもしれません。

さらに、こじつけるように考えるとするならば、前節は最終ラインの手前(特にSHの背中/CHの脇)にスペースがあって、そこへボールを差し込むところを足掛かりに前進できていたので、下から繋ぐときにはそこにボールを付ける方から選択してしまったのかもしれません。

広島はスペースを埋めるよりは相手を基準にしたポジションを取って守備対応しているように見えるので、最終ライン手前にスペースは見つけやすかったと思います。ただ、そこへ下りていく選手をしっかり捕まえるというのもまた相手基準で対応するチームは背後にスペースを空けてでもやり切ることが求められていて、広島の選手たちもそうした対応をきっちり行ったということなのだろうと思います。対名古屋もそうですが、そうした相手に対する苦手具合はなかなか解消が難しいのかもしれません。


後半は広島が押し込む、浦和がボールを奪ったらカウンターに出て行くという構図だった印象です。相手が前に出てきているのだから、ボールを奪ったらそのスペースを突きたいよねというのは当然ですが、そこでパスがズレたりトラップがズレたりしてボールを失って、再び自陣に引き戻されるという展開が増えたような気がします。

また、広島の方はビルドアップでCHが最終ラインに出入りしながらボールを捌くのが前半よりも増えたように見えました。浦和の方はSHを3バックの左右に当てるようなプレッシングをしていましたが、野津田、川村が必ずしも浦和の2トップ付近にいるのではなく、最終ラインからボールをピックアップしに行くことで5vs4(大迫も含めれば6vs4)の状態を作って前向きにボールを持てる選手が作れていた印象です。

浦和は2トップやSHが内側へのコースを切ることでボールを片側に寄せて、後列がそこに連動して相手を外へ閉じ込めていくような守備対応をすることが多いですが、こうして相手が最後尾に人数をかけて左右どちらからでも前進できるような状態になってしまうと、SHが前に出ればその背中(CHの脇)へボールが入ってしまったり、そもそもSHとCHのゲートを通るボールが出されてしまったりすることが増えていきました。

52'45~も右からのバックパスが入った時に川村が荒木と佐々木の間に入ってボールをピックアップし、敦樹と大久保のゲートを通してドウグラスヴィエイラにボールを差し込んでいます。

さらにボールを受けたドウグラスヴィエイラは敦樹が斜め後ろに下がりながら対応してきた矢印を逆手にとって内側へターンしていて、そこから再び逆サイドまでボールを流すことで浦和の選手たちを左右に揺さぶっています。

そうなると、4バックの外側でWBが待ち構えていて、そこへSBが出て行くとハーフスペースが空くというジレンマを突き付けることが出来るようになります。このメカニズムはミシャ式を長らく見てきた僕らからすれば「こうなっちゃうよね~。。」と思ってしまいます。


そして、加藤のゴールは浦和から見て右サイドでボールを閉じ込めることが出来ずに逆サイドへ流されたところから、SHとCHだけでなく、SBとCBのゲートまでも一気に通されてしまいました。

流れの中で左SHの位置には安居がいた訳ですが、この時にSHの安居もSBの荻原も大外にいる越道へ意識が向いてしまったのかもしれません。逆サイドに逃がされているのでボール保持者(塩谷)へアプローチすることは難しい状況でした。そうした時にするべき対応としては、まずは自分たちの使われたくない場所へボールを入れさせないこと、つまりゴールに近い中央方向のコースを埋めることだったのかなと思います。図にすると以下のようなイメージでしょうか。

自分たちの4-4のブロックの外側でボールを回させる、内側に入って来る時はそこで囲い込む準備が出来ているという状態が理想だと思います。なので、安居が先に岩尾との距離を空けて、尚且つ外を切るような体勢になってしまったのが良くなかったのかなと。

安居が塩谷に対して内側を消すように立つ、外は後列に任せるというのがベターで、荻原は越道までまだ距離はありますが、塩谷からパスが出てから越道に到達するまでの時間である程度寄せられるだけの範囲にいたように見えます。

また、安居が越道の方を切っていると判断できたのであれば荻原が安居ー岩尾のゲート奥で待つという判断があっても良かったかもしれませんが、それはちょっと難しいのかなと思います。アルヒラル戦で大久保が早めに酒井の外側に下りてしまってSBはSH-CHのゲート奥で待つというやり方もありましたが、それをやるにしては安居のポジショニングが中途半端だったと思います。

前線4枚(FW、トップ下、両SH)の攻撃時のポジションは流動的で、そこでボールを失った時には元のポジションに戻らずにそのままの場所でプレーすることが求められています。なので、こうして最初のポジションとは違う位置に入る場面があったとしても、こうして簡単に自分たちの使わせたくないエリアを使われてしまったのはいただけません。


攻守両面で自分たちからバランスを崩してしまった感のある試合になってしまいました。リスクをかけるとか、好戦的な姿勢を取るとか、そうした要素があるとしても、前提としては攻守どちらにおいても適切なポジションを取って味方と繋がった状態を作り続けるということが必要です。

残念ながら、浦和よりも上位の3チームはいずれも勝利して勝ち点差を離されてしまいました。ただ、ここでこのまま気落ちして中位に沈んでしまえば昨季までと変わらないですし、次はホームで1つ上の順位にいる名古屋との直接対決で、ここで勝てばまたチームの雰囲気を好転させられるかもしれません。

優勝が難しくても天皇杯を落としてしまっているのでリーグの順位でACLを狙うことが当面の目標になるはずです。そういう点で、次の試合が今シーズンの残りの試合に持たせる意味づけを大きく左右するものになると思います。ここでしっかり踏みとどまってもらいましょう。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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