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【雑談】僕は指定席から責任を果たす(ACL2022 Final 2ndLegに向けて)

初めにお断りをしておくと、いつもはピッチ内の事象について感じたことを書きますが、今回はそうしたことは一切書きません。


ACL決勝のホームゲームを迎えるにあたって思い返しておきたいことがあります。2022年にクラブから出されたリリースの中にこういった文章がありました。

「We are REDS!」

この言葉は、浦和レッズサポーターが第一声をあげ、クラブを含む、浦和レッズに関わる全ての人が受け入れた言葉。
そして、浦和レッズに関わる全ての人を「応援する側」と「応援される側」に分けることなく、良いことも悪いことも全て自分ごととして受け止め、向き合い、そして前に進んでいくことを意味する言葉。
そんな成り立ちと意味を持った言葉であると信じています。

歴史の上に生かされている私たちは、その歴史に胡座をかくのではなく、歴史に学び、そして新たな歴史を紡いでいかなければなりません。
そして私たちは、社会の一員として生かされていることも絶対に忘れてはいけません。

(中略)

チームは、戦績は勿論、最後まで走り、闘い、そして貫くという姿勢を体現することで、「We」としての責任を果たしていきます。

クラブは、チームを全力で支えることは勿論、ファン・サポーターのみなさまと、そして社会と本気で向き合うという姿勢を体現することで、「We」としての責任を果たしていきます。まずは浦和レッズ自身が、歴史とプライドに相応しいプロサッカークラブに求められる姿を体現してまいります。

ファン・サポーターの皆さまにおかれましては、さいたまの、そして浦和のサッカーの歴史とプライドを守り、次世代へと繋ぎ、浦和レッズサポーターとしての誇りある行動を体現することで、共に「We」としての責任をこれからも担っていただけないでしょうか。

この文中にある「共に「We」としての責任をこれからも担っていただけないでしょうか。」という言葉をどう受け止めるべきなのでしょうか。リリース自体はコロナ禍での観戦ルールについてトラブルがあった後なので節度を持った行動を求めるというニュアンスもあったと思いますが、それだけに留めて良いのかというとそうではないのではないかと感じます。

浦和に於ける「責任」という言葉については以前僕なりに考えをまとめています。

別に今これをすべて読んでくださいということでは無いです。ただ、その時にまとめた内容の中から一部を抜粋します。

つまり、誰かからの指示に対して受動的な状態においては責任を伴った言動は起こらず、その状況に対して自分自身で受け止め、考えることが出来た後に、自分が何をすべきかという思考が立ち上がり行動を起こせる、この時に責任を背負うことが出来るのではないかと。責任感というのは「能動」でも「受動」でもなく「中動」の状態、矢印を自分自身に向けることが出来ている状態の時に立ち上がるのだろうと。

(中略)

自分のプレーに対する責任というのは、先述した「Responsibility」(応答性)と絡めて言うと、自分のプレーに対して自分が応答するということであり、それは過去の自分が行ったプレーを現在の自分と切り離さなず、自分のものとして受け入れることになります。

自分に矢印を向けて、自分が一番望む結果を得るために各自が出来ることをやる、それが「責任を担う」ということなのだろうと解釈しています。

そして、僕がこの文章を通して言いたいのは、自分の思う最善のアクションが取れない周りの人をなじったり、排除したりすることではありません。

責任の担い方が人によって違うことは当然だと思います。じっとピッチを集中して観ることかもしれないし、良いなと思ったプレーに拍手や声を出したリアクションをすることかもしれないし、目いっぱい旗を振ることかもしれないです。

大事なのは、各自が自分に矢印を向けて、各自が自分の思う最善のアクションを取れるかどうかだと思います。周りの席の人の熱量が低いから自分も低くなってしまうといった他律的な態度は違うのではないか?とも思いますし、周りの人に振舞い方を押し付けるのはちょっと自分勝手かなとも思います。


ただ、今回の決勝2ndLegに向けて、クラブは普段着席での観戦を原則としている南側のゴール裏についてもスタンディング、尚且つ太鼓も用いた扇動も許可することを宣言しました。

さらに南側のゴール裏はアウェーサポーターを入れず全てホームチーム用に配席しています。こうした普段の試合とは異なる対応には優勝に向けたクラブの強い決意を感じます。

決勝第2戦を埼玉スタジアムで開催するにあたり、3度目のアジア制覇の実現に向けた圧倒的なホームの雰囲気を作り出すため、関係各所との調整を経まして、通常アウェイチームの応援エリアを一部設けている南ゴール裏エリアの全てをホーム自由席として配席しております。

また、南ゴール裏エリアは2014シーズンより、通常の試合では原則として着席でのご観戦をお願いしておりますが、この試合に限りましては、立ち上がっての応援を容認させていただくことといたしました。
併せて、この試合に限り、応援時の扇動や事前にクラブの承認を受けた太鼓を用いたサポートについても容認させていただきます。

(中略)

私ども浦和レッズは、スタジアムへご来場されるみなさまへのホスピタリティ向上や多様な観戦スタイルへの対応を目指し、2019シーズンに観戦席の席種・席割りに関するクラブ設立以来最大規模の設定変更改革を実施するなどしてまいりましたが、本試合の重要性を鑑み、弊クラブの信念をもって上記運用とさせていただきたく存じます。

(中略)

老若男女問わず埼玉スタジアム全体から、浦和に関わる全ての人々のおもいを込めた大きな後押しを、何卒よろしくお願い申しあげます。

少なくともこの試合においては「老若男女問わず埼玉スタジアム全体」からの大きな後押しをクラブは求めています。席種は制限されていません。スタジアムにいるすべてのサポーターがそれぞれの場所で自分にできる後押しをすれば良いのです。


「自分にできる後押し」について、僕なりに辿り着いた方法の一つがピッチ内の事象を理解しようと試みることでした。お互いのチームがどういうことを狙っているのかを理解することで、自チームの狙いを表現しようとしている時にはポジティブな拍手や声かけが、相手チームが狙いを表現しようとしている時にはそれの邪魔になるような雰囲気づくりが出来るのではないかと思ったからです。

この言い回しがいつから始まったのか知りませんが、サポーターのことを「12番目の選手」と表現することがあります。サポーターも選手とともに闘う、プレーする存在なのだと謳っているわけですが、では闘う、プレーするとは具体的にどういうことなのでしょうか。

サッカーという対戦型かつ闘争型のゲームにおけるプレーは自らの能力を発揮することだけでなく、相手の能力を発揮させないことも求められます。前者はイメージしやすいと思うので後者を少しだけ掘り下げると、相手がゴール/ボールに向かおうとすることを邪魔すること(ボールに対してプレーする)、相手がゴール/ボールに向かおうとする気持ちを削ぐこと(選手に対してプレーする)、これらもサッカーのプレーの根源にあるということです。

ボールに対するプレーはピッチの中にいないと出来ませんが、選手に対するプレーはピッチの外にいても可能です。多くのサポーターが既にやっているような自チーム、相手チームの選手に対するリアクションもサッカーをプレーしていることに含まれる、試合に影響を与えることが出来ると言えます。

今まで浦和の選手たちはそれを何度も口にしていましたし、直近の大久保のインタビューからもそれが十分にうかがえます。

(4月23日の川崎フロンターレ戦を終えて、空港に向かう際のファン・サポーターの雰囲気、アウェイでのレッズのファン・サポーターの雰囲気をどう感じたか?そしてプレーでどのように応えていきたいと考えているのか?)
「川崎戦の後、バスの見送りは本当に感動しました。レッズのファン・サポーターの方々からはレッズに命を懸けているくらいの気持ちを感じましたし、第1戦は本当に勝ちたいと思いました。実際に試合が始まり、ファン・サポーターの数はアルヒラルの方が多かったですが、レッズのファン・サポーターの方々は全員が闘っていました。相手のファン・サポーターは失点したらおとなしくなったり、ボールを持たれているときはあまり盛り上がらなかったりしましたが、レッズのファン・サポーターの方々は失点した後もゴールした後も常に声を出して闘ってくれました。いつも力になっています。J1リーグでは第1節も第2節も失点が続いてうまくいかない状況でしたが、第3節のセレッソ大阪戦で岩尾(憲)選手がオウンゴールしてしまった後、ゴール裏の方々が『大丈夫、大丈夫』と声を掛けてくださったことも全員が感じました。本当に素晴らしいですし、僕らは本当に期待に応えないといけないと思いながらプレーしています」


選手たちは僕らの声、拍手、雰囲気をしっかり感じています。ポジティブなものもネガティブなものも。埼玉スタジアムは勝手に僕らにとってホームな雰囲気にはなりません。その場にいる一人一人の声と拍手がホームとしての雰囲気を作り上げます。

過去2回の優勝はいずれも初戦を1-1で折り返したというジンクスも、ホームの2ndLegを本気で勝ちに行ったからこそ優勝を掴んだわけで、このジンクスが今回の優勝を保障してくれるわけではありません。

準決勝の全北戦のように苦しい時間帯に失点してしまうかもしれません。2019年と同様にAFCが用意したイベントによって雰囲気が緩んでしまうかもしれません。

フットボールではそういうことがあるかもしれないことを僕らは経験として知っています。それが歴史を積み重ねて来たことによる強みです。この試合こそその経験を活かすべきですし、その瞬間のネガティブな雰囲気をポジティブな雰囲気に変えれば状況をひっくり返せるかもしれません。

そういう状況やイベントのせいにするのではなく、自分に矢印を向けて、その時その時で勝つために何をしたら良いのかを考え、アクションを起こせば良いはずです。


強い気持ちやアクションは良くも悪くも周りに伝播していくものです。強くポジティブな気持ちやアクションを一人一人の力でスタジアム全体に広げていきたいですね。

今回の文章の冒頭で、クラブ、チーム、サポーターは全員等しく「We」であることを確認しました。応援する側とされる側の区別が無いのであれば、サポーターがサポーター同士で後押しし合っても良いはずです。恥ずかしさや周りへ気遣いしすぎることであと少しの声が出ない、拍手が出来ないという人がいるなら、サポーター自身の強いアクションでその人を後押ししてスタジアム全体の力を上げられるかもしれません。

選手たちがいつもより1.5倍の勇気を出してプレーするなら、僕は2倍の勇気を出してサポートしたい。周りに勇気を出せない人がいるなら僕の勇気は有り余っているので分けてあげる。そういう気持ちを持った人が1人でも2人でもいると良いなと思います。

全ては勝利のために。愛するクラブのために。
僕は指定席から責任を果たします。

やってやるぜ。やってやろうぜ。


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