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【雑感】2023/12/19 CWC-SF 浦和vsマンチェスターシティ

この言い方が適切なのかは分かりませんが、今季通して出来ていたことが出来て、出来ていなかったことが出来なかったという印象を持つ試合でした。

時間は短かったですが、浦和の保持の時間を見ていて思ったのはルヴァン杯準決勝の横浜FM戦2ndLegと近い現象が起こせそうだったなということでした。それは、シティの非保持が4-2-4のような配置でSHが早めに前を覗くようなイメージで横浜FMのそれと同じようなものだったからです。

浦和の保持の基本形で言うと、ビルドアップ隊はCBが大きく開いてその前にアンカーを1枚(基本的には岩尾)がいる状態でした。そして、右は関根が内、大久保が外でグリーリッシュの両脇を取る、左は明本、小泉、安居がローテーションするような感じでこちらもSH(序盤はフォーデン、途中からはベルナルドシルバ)の脇や背中を取る、というイメージだったのかなと思います。

9'15~の浦和のビルドアップは岩尾の代わりにへその位置に入った敦樹からグリーリッシュの背中を取った関根へパスが入り、カンテへの落としを経由して大外を取った大久保へ展開しています。カンテから大久保のボールが長くなってしまいましたが、試合序盤に国内の試合でもやっていたようなプレーを見せることが出来たのはメンタル面でポジティブに働いたのではないでしょうか。

出来れば関根にボールが入った時にアケが大外の大久保を気にしてポジションを下げていた分だけ関根がターンして前を向けそうだったので、カンテに落とさずに自分でそのままアケとアカンジの間に向かって少し引き付けてから大久保を使えると良かったのかもしれません。

また、42'20~は最後尾で左から右へボールを展開していくときに関根がヘソの位置にずれてきて、グリーリッシュがショルツへ向かっていった背中には敦樹が代わりに入ってきました。敦樹がワンタッチで大久保を使いたかったところをアケにブロックされましたが、こぼれたボールを敦樹が拾って中央を一気に運んで前進した場面も、相手が出した矢印の根元を取るというこれまでやってきたようなポジション取りが出来た結果だったのではないかと思います。敦樹が運んだ後のパスが小泉に出したのか上がってきた明本に合わせて出したのか微妙なボールになってしまったのは残念でしたが。

それでも、ショルツから敦樹にボールが入った時に関根がヘソの位置から移動してレイオフを受けられる状態を作っていて、本人は嫌がっているもののSBがビルドアップでこれだけ動的ながら的確にポジションを取れるのは強みに出来ると思うので、今後もトライしてもらう価値は十分にあるように思いました。


こうして場面としては今までやってきたことが表現できていたものの、その流れで決定機まで持っていくとか、その回数を増やすということは出来ませんでした。特にビルドアップで両CBが大きく開いたときに次の受け手になる売る選手は内外に2枚ずつ置けていたと思いますが、そこまでの距離が遠く角度が無かったので、なかなかボールを出すのは難しかったと思います。

これはもしかすると、相手SHの脇でボールを受けて運んでいこうとしても追いつかれてしまう怖さがあって、それなら最初からSHの背中に立って置き去りに出来る可能性が高い状況ばかりを選んでいたということかもしれません。裏へのロングボールでの追いかけっこもほぼシティの選手に上回れていましたし、個人のスピードの部分で自信を持ってプレーできなかったということでしょうか。

そういう点でチームとしてビルドアップでのポジショニングを構築してこなかった、「こういうやり方なら自信を持ってトライできる」という成功体験を積めなかったということが影響したのかなと思いました。大きい目で見ればチームとしてポジショニングを調整で来ていたのかもしれませんが、ある程度のエリアの中でもどれくらい距離で周りと繋がるかという点では不十分でした。そこは個人戦術でも解決出来ればベストだとは思いますが、なかなかそういうレベルには達していなかったのは今季、特に終盤に顕著に出ていた課題でもありました。


非保持については、これまで自信を持ってやってきた4-4-2の並びで対抗できていたと思います。シティの保持は最後尾がウォーカー、アカンジ、アケの3枚(ウォーカーは外に張り出すこともあるが)、その1列前にストーンズとロドリという並びがベースだったのかなと思います。

4-4-2で2トップが中を閉めようとしてもその背後に2枚立たれるとFW-SHのゲートに顔を出すために動く距離が短くなってボールが通されやすくなります。序盤から小泉がカンテの脇まで出て内寄りのポジションを取ることが多かったのは、このゲートを通させない、CHの前のスペースにはボールを入れさせずに出来るだけ外回りにさせたい、ということを目論んでのものだったかもしれません。

小泉が早めに出て空いてしまう背中のスペースには①岩尾が横スライドする、②明本が縦スライドして、岩尾が斜めに下りて明本の背中をケアする、という2パターンが準備されていたように見えました。また、岩尾が動いたところには安居が下りてくるのも準備されていたと思います。

それもあって、シティは序盤から左で大外を取ったグリーリッシュまでボールを飛ばすことで浦和のプレッシングラインを突破して、ラスト1/3で打開を図るという流れでしたが、35'00~はカンテと安居が完全に縦並びになってSHとのゲートがちょっと広がったタイミングを逃さずに一気に前進されました。

そして、44'50に安居ー小泉のゲート奥でヌニェスがパスを受けると、そのまま小泉ー岩尾のゲートをターンで外して一気に前進、運んで明本を引き付けてから大外のベルナルドシルバとワンツーでハーフレーンの奥を取ってGKとDFの間にクロスという4-4-2崩しのお手本のような展開で失点しました。

また、ハーフタイム直後の46'00~はウォーカーは最後尾に残してヌニェスが小泉に対して外側から背中を取ることで、岩尾の矢印は届かない位置にボールを置いて、小泉にプレスバックさせてからその矢印の逆を取るようなボールの動かし方を始めました。50'40~、そして2失点目の起点になった51'30~も小泉の背中を外側から回って前進しています。

もしかすると、シティベンチは前半のうちからここは使えそうと睨んでいたものの、前半のうちに使わせてしまうとハーフタイムで手当てされてしまうので、それが出来ない後半まで取っておいたのかもしれません。これはあくまでも僕の妄想ですが。

自分たちできちんとブロックを敷いた状態かつ、2列目に大久保、安居、小泉という非保持でタスクをこなせるメンバーを揃えていながら何度もブロックを突破されたというのは今季の国内でもACLでも見られなかった展開でした。守備側が埋めているから別の場所からということではなく、埋めているならそこを空けられるようにする、空いたら逃さない、という精度は流石です。

やはり、このレベルの相手に対してはチームとしての構造だけでなく、その上でより強い矢印を出せるような個人の強度、精度が必要なのだと感じました。ただ、この失点直後に小泉を中央に移して、明本を1列前に上げて素早く手当てしたスコルジャさんは流石だったと思います。


2点ビハインドになってしまったので、オープンになることを覚悟でシャルク、中島、リンセンを投入していったあとは個々は頑張っていたと思いますが、前線からのチームとしての規制はなくなっていて、2トップ間やFW-SHのゲートを簡単に通されていくようになりました。その結果、非保持は自陣深くまで押し込まれ、そこからカウンターに出て行くという流れになっていってしまいました。

前線できちんと守備タスクをこなしながら攻撃もしていくというバランスはACL決勝以降ずっと探してきましたがそれは見つかりませんでした。というよりは、構築する余裕を持てませんでした。非保持に於いての人員不足というのは、これまでの試合で観てきた課題でした。


今年のアルヒラルとのACL決勝、そしてこのCWCで感じた感想はどちらも「チームとしてやれることはある程度通用した」「個人の強度、精度を上げてチームの総和を高める必要がある」というものだったと思います。そして、これは今季の国内での試合や23/24シーズンのACLでも感じてきたものでした。

つまり、僕らの日常にある課題はこの舞台で感じた課題と同じであり、これらを克服した先には、再びマンチェスターシティのようなクラブと対戦した時に10回に1〜2回勝てるかもしれないという確率を10回に3回、4回と引き上げていけるかもしれないという期待が持てるということです。

RPGゲームの世界ではないので、浦和がその課題を克服しようとしている間に世界のトップレベルのクラブが同じレベルのままでいるということはありません。それでも、浦和が目指すべき未来が今浦和が辿っている道の先にありそうだということを知ることが出来たのは良かったと思います。そして、これを知ることが出来たのはきちんと賞金がかかった公式戦でトップレベルのクラブと試合をすることが出来たからだと思います。

通常、こうした大会は開催されるたびに出場権を勝ち獲らないといけないものですが、僕たちは既に2025年に開催される次回大会の出場権を持っています。僕たちには分かりやすい目標、指標が出来ましたね。

残念ながら次のCWCまで浦和は国外のクラブと公式戦をすることは出来ません。やれることは国内での試合、日常の中でこの試合から感じたことも含めて今やろうとしていることの強度、精度をさらに高めていくことしかないです。そして、きちんと国内で結果を出してアジアの舞台へ戻り、2025年以降のCWCにも継続して出られるようにしていきたいですね。

そのための1歩目として、最後の3位決定戦でしっかり勝ってポジティブな空気で今シーズンを終えられることを期待します。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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