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【雑感】2023/6/28 J1-第12節 浦和vs湘南

湘南はチームとしての大枠自体は決して悪くないものの、直近の試合で0-6で敗戦しているだけでなくなかなか勝ち点が取れていないという状況がなぜ起きてしまうのかというのが見えるような試合になりました。

湘南は5-3-2から非保持ではIH、WBを押し出して疑似的に4-4-2のような形に変化する前向きなアクションを標榜してきていてこの試合でもそれを目論んだアクションがありましたが、浦和の方はそのアクションを手前と奥の両方を使いながらいなす場面が多かったと思います。


浦和は明本、荻原が川崎戦で負傷したことで大畑が左SBに入りましたが、彼が入ったことでビルドアップの時に手前に残ってCBの横サポートになったり、内側からスルスルと前に出ていって奥を取ったり、上手にポジションを取りながら器用にプレーが出来る「らしさ」が良く出ていたと思います。

浦和はショルツ、ホイブラーテンという広範囲に守れるCBがいて、尚且つビルドアップ時に簡単にCHを落としたくないというのが今年の志向で、SBは早い段階から高い位置を取ることが特に明本がいると多くなるのですが、その裏返しとしてCBがボールを持った時にボールの逃がし先が少なくなってしまって苦しくなるというのがここ数試合では特に見受けられました。


それに対して、25'32~の場面では右サイドからバックパスで最終ラインにボールが戻ってきて、リサイクルでホイブラーテンへボールが渡った時に小野瀬が縦スライドしていきますが、大畑が手前に引いてホイブラーテンの横サポートに入ったことでボールを捨てることなくビルドアップをやり直すことが出来ています。

1点目の岩尾からのタッチダウンパスを受けた場面のように裏へのアクションも印象的ですが、こうして手前にも引いてビルドアップ隊をサポートするアクションがあったことも見逃せません。

序盤からロングボールを使って湘南のプレッシングを回避し、前線でこぼれ球を作る場面も多かったですが、こうして手前で逃げ道を作ることもやっていて、どちらかに偏るということが無かったのは良かったと思います。やり方が偏らないので湘南の選手たちが迂闊にアクションを起こしにくくなったのかなとも思います。


湘南はビルドアップでも非保持とあまり陣形を変化させずに3バック+アンカーの形でした。対する浦和は2トップが中央を閉めてアンカーを消したところからスタートして左右CBへボールが出たところで2トップの片方が横から追いつつ、SHが縦スライドしていく運用でした。ただ関根は高橋に対して直線的に出ていくのに対して、大久保は山本に対して外を切りながら出ていく違いがあったように見えました。

高橋も山本も右利きなので、右CBの高橋に対してであれば縦を切れば関根の斜め後ろを外は大畑、内は岩尾がポジションを取れるのでそこで待ち構えやすく、左CBの山本に対してであれば外を切れば内にしか入っていけないので自分たちが待ち構えているところにしか入って来ないという算段だったのかもしれません。


ただ、山本については43'00~に大久保が外切りで構えたのに対してドリブルでそのまま内側へ運んでいって、味方のアクションによる浦和の選手の動きも観察しながらブロックの中へ入り込んでサイドへ展開する場面を作っていました。元々器用な選手なのでこういうプレーは上手ですね。その後のクロスの精度がイマイチだったのでハイライトにも出てきませんでしたが、浦和の最終ラインを動かされて町野にファーで待たれていたので割と危ない場面でした。


前半から数えてあと2、3点は取れても良い場面がありながらチャンスを逃していたところで湘南に同点ゴールを許しましたが、そこからすぐに勝ち越し点を取れたのは良かったですね。

川崎戦後の監督会見や月曜のラファコーチの会見で「もっとミドル打たんかい!(意訳)」という言葉がありましたが、この試合は序盤から露骨にミドルシュートを打つ回数が増えましたね。指摘されたことをきちんと次の試合で反映する真面目さは良いですが、流石に変化幅が大きすぎて笑ってしまいました。

とは言え、そうしてシュートを打つことでよりゴールに向かうという意識づけにはなったのかなと思います。相手に寄せられても1つ頑張ってボールをキープしながらターンするとか、相手の矢印を引き受けながらも少し運んで時間を作るとか、自分たちもちょっと崩れているけど相手もセットできていないなら好戦的なパスを出すとか、そういった場面を見るとシュートを打つというアクションがチーム全体のゴールへ向かう意欲を焚きつける効果もあるのかなと感じました。

勿論、湘南の今の状態やこの試合の出来がどう立ったのかというエクスキューズはあるかもしれませんが、例えば横浜FC戦のようにこの相手にはもっとやれないといけないでしょという試合で前に行き切れずに勝ち点を落としたことを考えれば、こうしてしっかり得点を決めて取るべき勝ち点を取れたという点は評価した方が良いと思います。


2点目の関根のゴールは、勿論関根自身のプレーが素晴らしかったのですが、そこへボールが渡るまでのところも酒井が相手の矢印を引き受けながらも前へボールを出したこと、そのボールを受けた敦樹が相手の間に割り入るようにボールを持ち出して時間を作ったことで湘南の守備がより浦和から見て右サイドへ寄ったこと、これらによって関根にスペースがある状態でボールが渡りました。


そして、3点目はまずボールの奪い方が良かったですね。ボールを奪うまでの段階で僕のお尻は浮いていました。図にするとこんな感じだったでしょうか。

初めてgifなんて使っちゃいましたが分かりやすくなってますかね??

山本に縦パスを刺されましたが、そこに対する敦樹のアクションの早さを見ると縦パス自体は誘っていたのかもしれません。平岡にボールが到達する前にカット出来れば最高でしたが、敦樹は平岡に対して外方向を向かせるような矢印の出し方をしています。

その矢印に沿うように杉岡にパスが出ると、今度は酒井が縦方向を切って寄せる、さらに酒井の斜め後ろに敦樹がズレていくことで杉岡の前向きな選択肢を消してしまいます。

そして、敦樹がいなくなった内側のスペースには逆CHの岩尾がスライドしているので、杉岡のサポートに寄っていった大橋も内側にターンすることは難しい状態になりました。ここで一気に岩尾、酒井、大久保で大橋を囲い込んでボールを奪うことに成功しています。

さらに、ボールを奪った後に安居が一気に3人の矢印を引き受けてから大久保へボールを渡したこと、ボールを奪いに行った勢いのまま大久保と酒井が前へ出ていったこと、そこに関根もきちんと追随したこと、守から攻が綺麗に繋がりましたね。正にゾーン守備が味方との距離、繋がりを保ちながらプレーすることで攻撃へスムーズに移りやすいという利点が詰まった場面だったと思います。


途中交代で入った選手たちもポジティブな印象でした。特に平野は前節もそうですが敦樹のように前列の選手を追い越してハーフレーンやニアサイドへ出ていく場面がありました。安居がトップ下からCHに移るという試合の流れが増えてきたことで、より一層平野の出場機会が減っていく気配がありますがそこに抗うように今までのプレースタイルにプラスアルファの要素を作ろうとしているように見えました。

意識を変えたのにそれでも結果が出ないとなるとガクっときてしまうので、チームとして「もっと前に出ていくぞ」ということが意思統一された中で、しっかり結果も出せたことが大きな自信になってくれると良いですね。


さて、次は中2日でアウェーの鳥栖戦です。鳥栖は相変わらず好戦的なチームなので、こちらも前に出ていく試合になった時にカオスな方向へ振れてしまうのか、それでも尚チームとしての構造は維持できるのかは興味深いところです。

鳥栖のアウェーゲームは良い思い出があまりないですが、今回はそれを払拭してくれることを期待したいですね。しかも、鳥栖はACL決勝後に久しぶりに負けを食らった相手なので、ここできっちりやり返しましょう。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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